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XXI ライリー -II
しおりを挟む「――エルちゃん、良い所のお嬢様なんだろう」
彼女がぽつりと、呟く様に投げ掛けた問い。返事に困り、曖昧に言い淀む。
此処で肯定を、してしまっても良いのだろうか。それとも、エルの為にも隠し通すべきなのか。
判断が出来ず言い倦ねていると、ライリーはそんな私を見てやや苛立った様に言葉を続けた。
「別に、エルちゃん本人に問い詰めたりなんかしないよ。この街から追い出すつもりもない。あの子は、私の数少ない話し相手なんだからね」
「話し相手?」
「ああ、毎日此処へ来て、私の下らん話に付き合ってくれるんだ。あの子は凄く、いい子だよ」
ライリーは、決して意地悪な人間でも、薄情な人間でも無い。寧ろ、情は厚い方だ。
悪い人間が居たとしても、決してその人間を排除しようとはせずに、どちらかと言えば世話を焼いて更生させるような人だ。そんな彼女が、エルの真実を知ったところでエルを攻撃、もしくは今迄と態度を変える、なんて事をしない事は分かり切っていた。直ぐ様返事を出せなかった事に、罪悪感を抱く。
「……エルちゃんは、名家の令嬢だよ。元の家は、彼女のプライバシーの事もあるから伏せるけど、元の家で酷い目に合ってて、逃げ出しちゃったみたい」
「伏せたところで大体察しは付く。この辺りで令嬢の居る家なんて言ったら、アークライト家、エインズワース家、ファーナム家位だろう。それに、逃げ出したんじゃなくて、“セドリックが連れ出した”んだろう?」
彼女の言葉に首肯し、「そこまで知ってたんだ、流石姐さんだね」と重くも軽くも捉えられる口調で告げた。
アークライト家もファーナム家も、エルがこの街に来た時に念の為、と探りを入れた家だ。アークライト家には、若い令嬢が2人居る。長女は活発で喜怒哀楽の激しい娘だったが、次女は物静かな娘だったと記憶している。
ファーナム家にも、令嬢が1人。どの様な性格をしているか迄は分かっていないが、両親からとても愛されている娘らしい。
それ等の事を知れば、ライリーも自然とエルはエインズワース家の人間だという事に気付くだろう。
彼女に、真実を告げた方が良いだろうか。ライリーなら、もしエルの身に何かが起こった時、きっとエルを守ってくれるに違いない。エインズワース家に探りを入れに行った日、庭師の青年から聞いた“あの言葉”を静かに反芻する。
「あの子、ここ数年で変わったね。昔はもっと、人を寄せ付けない雰囲気を纏ってたのに」
ライリーがぽつりと、何処か遠くを見ながら呟いた。
彼女が言う“あの子”とは、エルでは無くセドリックを指している事は直ぐに分かった。
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