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XXXV 傷痕-V
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「まぐれだと、思った。最悪の再会をしてしまったんだって。でも違った。あの男は私を、わざわざこの街まで探しに来てたの……! それも、もう一度ヤりたくなった、なんて理由で!」
彼女の、怒りに震える手にそっと自身の手を重ねる。
「あいつ、自分より立場の低い男2人を従わせてるみたいだった。どうせ、あの男の事だから弱みでも握ったんじゃないかな。その2人は私が暴れない様に押さえつけているだけで、回されたりはしなかったけど、多分あの2人はこんな事したくなかったんだと思う。私を押さえる手が、震えてた。凄く苦しそうな顔してた」
アリアがまるで自分の事の様に、その顔を苦しそうに、悲しそうに歪めた。彼女から伝わってくるのは、怒りや恐怖などでは無く同情。アルフレッドに従っていた2人は、被害者であるアリアに同情を寄せられる程に怯えていたのだろう。
「その時、全部、全部分かった。ロンドンを脅かしてる婦女暴行は、フレッドが企てた事なんだって。私は、フレッドの素性を知ってる。住んでる場所だって分かる。だから、全部警察に話してやるって、そしたらお前の人生も終わりだって脅してやった。でも、フレッドは簡単に脅せる相手じゃなかった。私の言葉なんてあの男に取っては微塵も痛くなくて、寧ろ『お前の今の生活も、家族同然の酒場の嬢達も主人も、全部潰してやる』って言って笑って脅し返してきた。それで酷い暴力を受けて、それからの記憶は無い。目が覚めたら周りに警察が居て、ママも、此処の店の子達も居た」
「……酷い男」
「本当に、酷い男だよ。私ね、暴行された事なんてどうだって良かったの。確かにフレッドには会いたくなかったけど、身体を売って生きてきた私にとっては些細な事だった。でも、それを知ってる筈なのに、ママも店の子も、自分の事の様に泣いて怒ってくれた。だから私、皆の涙を見て、この場所を守らなきゃって思った。警察にも言わなかった。全部忘れようと思った」
「……」
「――でも」
アリアが息を吐き、私の瞳を見つめた。
「貴女、あの男を止めるつもりなんでしょ? それも、非合法な手を使って」
「分かってたんだ」
「当たり前でしょ。事件について聞きたいって言われた時点で、ある程度の想像はついてたよ。私さっき、あの男を殺してでもとめてって言ったけど、貴女は最初からそうするつもりだった」
「……鋭いなぁ」
「私馬鹿だけど、そういうの分からない程鈍くないから」
力強い彼女の言葉に、くすりと笑みを零す。
正直、アリアから情報を得られる事は期待していなかった。しかし、アリアはとても有力な情報をくれた。
だが、心の中に僅かに残る違和感。小さな疑問。彼女は、何かを誤魔化している。――いや、隠していると言った方が正しいだろうか。
彼女から流れる感情と音を聞く限り、アリアはアルフレッドが従わせている男の片方を知っている筈だ。
「――あのさ」
事件に関係の無い事であれば、聞く必要は無い。しかし、取り巻きの男の事だ。何かを知っているのなら、その情報を得る必要がある。
「アルフレッドが従わせていた男について、何か話してない事があるんじゃない?」
「――……」
ゆらりと揺れる様に変わる空気。予想は、的中したらしい。
彼女の、怒りに震える手にそっと自身の手を重ねる。
「あいつ、自分より立場の低い男2人を従わせてるみたいだった。どうせ、あの男の事だから弱みでも握ったんじゃないかな。その2人は私が暴れない様に押さえつけているだけで、回されたりはしなかったけど、多分あの2人はこんな事したくなかったんだと思う。私を押さえる手が、震えてた。凄く苦しそうな顔してた」
アリアがまるで自分の事の様に、その顔を苦しそうに、悲しそうに歪めた。彼女から伝わってくるのは、怒りや恐怖などでは無く同情。アルフレッドに従っていた2人は、被害者であるアリアに同情を寄せられる程に怯えていたのだろう。
「その時、全部、全部分かった。ロンドンを脅かしてる婦女暴行は、フレッドが企てた事なんだって。私は、フレッドの素性を知ってる。住んでる場所だって分かる。だから、全部警察に話してやるって、そしたらお前の人生も終わりだって脅してやった。でも、フレッドは簡単に脅せる相手じゃなかった。私の言葉なんてあの男に取っては微塵も痛くなくて、寧ろ『お前の今の生活も、家族同然の酒場の嬢達も主人も、全部潰してやる』って言って笑って脅し返してきた。それで酷い暴力を受けて、それからの記憶は無い。目が覚めたら周りに警察が居て、ママも、此処の店の子達も居た」
「……酷い男」
「本当に、酷い男だよ。私ね、暴行された事なんてどうだって良かったの。確かにフレッドには会いたくなかったけど、身体を売って生きてきた私にとっては些細な事だった。でも、それを知ってる筈なのに、ママも店の子も、自分の事の様に泣いて怒ってくれた。だから私、皆の涙を見て、この場所を守らなきゃって思った。警察にも言わなかった。全部忘れようと思った」
「……」
「――でも」
アリアが息を吐き、私の瞳を見つめた。
「貴女、あの男を止めるつもりなんでしょ? それも、非合法な手を使って」
「分かってたんだ」
「当たり前でしょ。事件について聞きたいって言われた時点で、ある程度の想像はついてたよ。私さっき、あの男を殺してでもとめてって言ったけど、貴女は最初からそうするつもりだった」
「……鋭いなぁ」
「私馬鹿だけど、そういうの分からない程鈍くないから」
力強い彼女の言葉に、くすりと笑みを零す。
正直、アリアから情報を得られる事は期待していなかった。しかし、アリアはとても有力な情報をくれた。
だが、心の中に僅かに残る違和感。小さな疑問。彼女は、何かを誤魔化している。――いや、隠していると言った方が正しいだろうか。
彼女から流れる感情と音を聞く限り、アリアはアルフレッドが従わせている男の片方を知っている筈だ。
「――あのさ」
事件に関係の無い事であれば、聞く必要は無い。しかし、取り巻きの男の事だ。何かを知っているのなら、その情報を得る必要がある。
「アルフレッドが従わせていた男について、何か話してない事があるんじゃない?」
「――……」
ゆらりと揺れる様に変わる空気。予想は、的中したらしい。
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