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LVIII 不穏な予感-I
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黒い雲が空を覆い尽くし、激しく降り注ぐ雨が窓を打ち付ける正午。
書類整理をすべく書類室へと向かったセドリックは、この気候の所為か酷く気怠げだった。やる気が起きない、帰りたい、等と嘆いていたセドリックは、きっと今頃書類室のソファに座って書類の山を眺めている事だろう。
反対の私は、数日前に新しい本を買った為普段以上に機嫌が良かった。今日は1日面談の予定が入っておらず、更には口煩いセドリックも居ない故にゆっくりと読書を楽しむ事が出来そうだ。途中、突発の依頼者が来ればその読書も妨害されてしまうかもしれないが、外は土砂降りである。この中依頼に来る人物はまず居ないだろう。
砂糖とミルクをほんの少し入れた紅茶を用意し、アームソファに腰掛け心躍らせながら本を開いた。
――あれから、更に5年の月日が経った。
マクファーデンとの仲に大きな問題は無く、相変わらずと言うべきか彼には“飼い慣らされて”いる。強いて変わった事を上げるのであれば、ついこの前首輪が千切れてしまい新しい物に買い替えた事位だろうか。
それにお互い歳を重ね、更には共に居る時間が長くなった為、会話の数が大幅に減った。しかしそれは不仲になった訳では決して無く、ただ傍に居るだけで会話が無くともお互いが何を思っているか分かる仲になっただけだ。隣に居るだけで、心が安らぐ。そんな関係。
セドリックとエルの娘達は、丁度一週間後に14歳の誕生日を迎える。毎年彼女達の誕生日には少し高価なケーキを買って持って行っていたが、今年はどの店のケーキを選ぼうか。14歳ともなれば、もう人格はしっかりと形成され自我を持つ頃合いだ。そろそろケーキでは無く、アクセサリーの1つや2つ送るべきだろうか。
ルイは表情が豊かで無い所が玉に瑕だが、凛とした女の子である。その所為か、大人っぽく見える事が多い。その為、贈るならば小さな宝石が付いた金属のネックレスが良いだろう。反対のレイは、まだまだ両親にべったりで、親離れが出来ていない所がある。それに言動も少々幼い為、贈るのであれば造花を使った可憐な髪飾りがいいだろうか。
きっと、ライリーの店に行けば2人に似合うアクセサリーがある筈だ。明日にでも、ライリーと話をしがてらプレゼントを見に行くとしよう。
ふふ、と笑みを零し、テーブルに置いたティーカップを手に取った。
ふと、突如耳に付いた金属が擦れる音。紛れもなく、馬車が急停止した音だ。玄関扉の外から聞こえ、思わず手に取ったティーカップをソーサーに戻す。
ガタガタと扉が乱暴に開かれる音と共に、焦った人の声が聞こえた。突発の依頼者だろうか。しかし、なんだか不穏な予感がする。
本をぱたりと閉じ、ソファから腰を上げた。玄関扉の方へと足を向け、小窓から外を覗く。
その瞬間、ドンドンと強く玄関扉が叩かれる音がホールに響き渡った。ドアノッカーを使っていない、素手で扉を叩く音だ。
小窓から見えたのは、貴族の家紋が描かれた四輪馬車。此処に来たのは間違いない、貴族の人間だ。その家紋に見覚えを抱きながらも、玄関扉に駆け寄り慌てて解除した。
書類整理をすべく書類室へと向かったセドリックは、この気候の所為か酷く気怠げだった。やる気が起きない、帰りたい、等と嘆いていたセドリックは、きっと今頃書類室のソファに座って書類の山を眺めている事だろう。
反対の私は、数日前に新しい本を買った為普段以上に機嫌が良かった。今日は1日面談の予定が入っておらず、更には口煩いセドリックも居ない故にゆっくりと読書を楽しむ事が出来そうだ。途中、突発の依頼者が来ればその読書も妨害されてしまうかもしれないが、外は土砂降りである。この中依頼に来る人物はまず居ないだろう。
砂糖とミルクをほんの少し入れた紅茶を用意し、アームソファに腰掛け心躍らせながら本を開いた。
――あれから、更に5年の月日が経った。
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それにお互い歳を重ね、更には共に居る時間が長くなった為、会話の数が大幅に減った。しかしそれは不仲になった訳では決して無く、ただ傍に居るだけで会話が無くともお互いが何を思っているか分かる仲になっただけだ。隣に居るだけで、心が安らぐ。そんな関係。
セドリックとエルの娘達は、丁度一週間後に14歳の誕生日を迎える。毎年彼女達の誕生日には少し高価なケーキを買って持って行っていたが、今年はどの店のケーキを選ぼうか。14歳ともなれば、もう人格はしっかりと形成され自我を持つ頃合いだ。そろそろケーキでは無く、アクセサリーの1つや2つ送るべきだろうか。
ルイは表情が豊かで無い所が玉に瑕だが、凛とした女の子である。その所為か、大人っぽく見える事が多い。その為、贈るならば小さな宝石が付いた金属のネックレスが良いだろう。反対のレイは、まだまだ両親にべったりで、親離れが出来ていない所がある。それに言動も少々幼い為、贈るのであれば造花を使った可憐な髪飾りがいいだろうか。
きっと、ライリーの店に行けば2人に似合うアクセサリーがある筈だ。明日にでも、ライリーと話をしがてらプレゼントを見に行くとしよう。
ふふ、と笑みを零し、テーブルに置いたティーカップを手に取った。
ふと、突如耳に付いた金属が擦れる音。紛れもなく、馬車が急停止した音だ。玄関扉の外から聞こえ、思わず手に取ったティーカップをソーサーに戻す。
ガタガタと扉が乱暴に開かれる音と共に、焦った人の声が聞こえた。突発の依頼者だろうか。しかし、なんだか不穏な予感がする。
本をぱたりと閉じ、ソファから腰を上げた。玄関扉の方へと足を向け、小窓から外を覗く。
その瞬間、ドンドンと強く玄関扉が叩かれる音がホールに響き渡った。ドアノッカーを使っていない、素手で扉を叩く音だ。
小窓から見えたのは、貴族の家紋が描かれた四輪馬車。此処に来たのは間違いない、貴族の人間だ。その家紋に見覚えを抱きながらも、玄関扉に駆け寄り慌てて解除した。
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