44 / 52
XII 窮屈なアフタヌーンティー
III
「……ルイ、凄く怖い顔してる。そんなにピアノの件嫌だった?」
「別に、そうじゃないわ」
レイの手にあるのは、ピンク色のギモーヴ。
ギモーヴは、確かフランスで親しまれているお菓子だと本で読んだ事がある。それがどこからか英国に伝わり、この国のアフタヌーンティーでも出されるようになったのだとか。
特別興味があった訳では無かったが、レイの小さな口に吸い込まれていくギモーヴを見ていると、何故だか無性に食べてみたくなった。
ケーキスタンドに積まれた白とピンクのギモーヴから、彼女と同じピンクを選んで摘まみ上げる。
指で触るとしっとりとしていて、直ぐに崩れてしまいそうな程に柔らかい。不思議な感触に少々躊躇いながらも口に運ぶと、とろける様にふわりと崩れ、ベリーの酸味と甘みが口内に広がった。
独特な食感である為、非常に好き嫌いが分かれそうなお菓子だ。私は比較的好みの部類ではあったが、レイはそうでは無かったらしい。食べた直後に僅かに顔を歪め、砂糖もミルクも淹れていない紅茶を呷っている姿を見るに、口に合わなかったのだろう。
「――ピアノ、習うの?」
「習わないわよ。そんな分かりきった事を訊いて何になるの?」
「うわぁ辛辣。さっき私と話し合って決めるって言ってたじゃん」
「あんなの出任せに決まっているじゃない」
「じゃあ、アイリーンに家庭教師は付けなくていいって言わないとだ」
「余計な事しないで頂戴。こういうのは自然に任せて忘れてくれる方が、都合がいいのよ」
ふうん、とレイが曖昧な返事をして、再びティーカップに口を付けた。それを見て、自身も紅茶を口に含む。
このアフタヌーンティーは、毎日行われるものなのだろうか。紅茶も決して不味くは無く、出される軽食も気軽につまめる為良い習慣ではあると思うのだが、アイリーンがこうして常に扉の前に控えているのは頂けない。
もし明日も同じようにアフタヌーンティーを行うとしたら、席を外して欲しいと頼んでみるとしよう。せめて、部屋の中では無く外に居てはくれないかと。
そう思いながら、ティーカップの底に残った紅茶を飲み干した。
「別に、そうじゃないわ」
レイの手にあるのは、ピンク色のギモーヴ。
ギモーヴは、確かフランスで親しまれているお菓子だと本で読んだ事がある。それがどこからか英国に伝わり、この国のアフタヌーンティーでも出されるようになったのだとか。
特別興味があった訳では無かったが、レイの小さな口に吸い込まれていくギモーヴを見ていると、何故だか無性に食べてみたくなった。
ケーキスタンドに積まれた白とピンクのギモーヴから、彼女と同じピンクを選んで摘まみ上げる。
指で触るとしっとりとしていて、直ぐに崩れてしまいそうな程に柔らかい。不思議な感触に少々躊躇いながらも口に運ぶと、とろける様にふわりと崩れ、ベリーの酸味と甘みが口内に広がった。
独特な食感である為、非常に好き嫌いが分かれそうなお菓子だ。私は比較的好みの部類ではあったが、レイはそうでは無かったらしい。食べた直後に僅かに顔を歪め、砂糖もミルクも淹れていない紅茶を呷っている姿を見るに、口に合わなかったのだろう。
「――ピアノ、習うの?」
「習わないわよ。そんな分かりきった事を訊いて何になるの?」
「うわぁ辛辣。さっき私と話し合って決めるって言ってたじゃん」
「あんなの出任せに決まっているじゃない」
「じゃあ、アイリーンに家庭教師は付けなくていいって言わないとだ」
「余計な事しないで頂戴。こういうのは自然に任せて忘れてくれる方が、都合がいいのよ」
ふうん、とレイが曖昧な返事をして、再びティーカップに口を付けた。それを見て、自身も紅茶を口に含む。
このアフタヌーンティーは、毎日行われるものなのだろうか。紅茶も決して不味くは無く、出される軽食も気軽につまめる為良い習慣ではあると思うのだが、アイリーンがこうして常に扉の前に控えているのは頂けない。
もし明日も同じようにアフタヌーンティーを行うとしたら、席を外して欲しいと頼んでみるとしよう。せめて、部屋の中では無く外に居てはくれないかと。
そう思いながら、ティーカップの底に残った紅茶を飲み干した。
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。