秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ

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愛してる①

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 その日のうちに、僕と月華は伊集院家の人への挨拶回りを済ませ、僕と住むためにお祖父様が用意してくれたという離れの屋敷に入った。

「毬也、これからはずっと一緒だ。その印に、俺が一人前に仕事ができるようになったらこれを着て、俺と祝言を挙げてほしい」
「これ……」

 奥の広い和室に掛けてあったのは、赤比翼の、鶴と花の総柄の白無垢。
 花嫁衣装だ。

「でも僕、男だよ? それにケダモノだ。月華と一緒に暮らせるだけでも幸せなのに、花嫁衣装に結婚だなんて……」
「嫌なのか?」
「うっ……」

 意地悪く笑って顔を覗いてくる月華。

 嫌なわけ、ないじゃないか。だけど誰だって、身に余る幸せを与えられると躊躇するでしょう?

「……僕、子どもを産めないよ?」
「知ってるよ」
「不器用だし鈍くさいよ?」
「でも一生懸命だ。東雲大輪もいつもそう言ってただろ? 日向や十六夜もよく知ってる。一番知ってるのは、俺だけどな」

 ふふん、と得意げに顎を上げる月華。でもすぐに真面目な顔で見つめてくる。

「毬也のことで俺が知らないことなんてあるか? 俺はずっと毬也を見てきた。毬也だけ、見てきた。だから自信がある。毬也をとことん愛せるのは俺だけだ」
「も、もう……月華ったら……」

 矢のようにまっすぐに刺さってくる月華の気持ちがこそばゆくて、それでいて切なく胸をきしませる。

「毬也、愛してるよ」

 胸を押さえてうつむく僕のつむじにキスを落とすと、月華は白無垢を衣桁きものかけから下ろし、僕の肩に掛けた。

「だから俺の嫁さんになりな」
「……うん、うんっ……」

 涙が溢れる。幾筋も幾筋も流れて、畳にぱたぱたとこぼれ落ちて染みを作った。

 でも、止めなくてもいい。これからもずっと、月華が涙を拭ってくれるから。

「ああ、綺麗だな」

 涙を流したぐしゃぐしゃの赤ら顔なんて綺麗じゃないと思うのに、月華は眩しそうに僕を見て、ペロペロと涙の粒を舐めていく。

そのうちに、舌は唇も舐め、歯列を割って口の中に入ってきた。

「ん……月華」

 温かいざらつきにすぐに蕩けてしまうと、あっという間に畳に押し倒された。
 さすがに我にかえる。

「月華、駄目。着物が皺になっちゃう」
「……このまま花嫁の純潔を奪うっていうの、やってみたかったんだけど」
「馬鹿。……純潔でも、ないし……」

 だってもう、月華に初めてを捧げたもの。

「ふ。そうだな。毬也はもう俺のものだもんな」

 月華はにしゃっと笑うと僕を立たせ、白無垢は衣桁に綺麗にかけ直してくれた。それから僕の手を引くと、一番奥の部屋に連れて行く。

「ここ、好きなだけ声を上げていい部屋な」
「へっ!?」

 そこには一組の豪華な綿打ち布団が敷いてあった。

 月華はまたにしゃっと笑うと、僕を横抱きにして布団の上に落とした。

「ぅ、わっ」

 ぽすん。
 まるでふかふかの雲の上に置かれたよう。僕の体は布団に沈められてしまう。

「毬也のことで知らないことなんてないって言ったけど、本当はまだ知らないこと、あるよな」
「……? なあに、それ」
「毬也の体がどこまで柔らかくて、どんな体勢でできるかとか、後ろだけ触ってイけるかとか。そのときどんな顔でどんな声を出すのか、とか」
「なっ……!」

 月華が僕を獣の姿勢でまたいだ。ペロリと舌を出し、自分の唇を舐める。瞳は熱を孕んで艶っぽい。

 僕は猛獣に捕らえられた小動物になった気がして、反射的に身をよじってしまう。

「だーめ。逃がさない。もう一生、かたときも離してやらないからな」
「あっ」

 肩を押されて、のしかかられる。
 熱い唇を押しつけられて、肉厚な舌で口内をまさぐられる。

 着物の帯はすぐにほどかれ、一糸纏わぬ姿になった。

「や、ぁぁん、月華ぁ……」

 肉球の部分だけで肌を這い回られ、念入りに胸の桃色の部分を撫で回される。

 甘い痺れがお腹で生まれて、全身へと広がっていく。

 唇が離され、唾液をいっぱい口元に零しながら高い声を出すと、ざらりとした感触が胸の先を舐め上げた。

「あぁっ……!」

 捏ねられて敏感になっていた先端を吸われ、舌で転がされると、勝手に腰が揺らぐ。
 いつの間にか昂っていた僕の芯が、月華の着物の帯でこすれた。

「ん、んっ」
「気持ちいい? 俺にここ、こすりつけてるのかわいいね」
「ん、やっ、月華の、月華のに触れたいのにっ」

 乾いた着物の帯じゃなく、月華の肌でぬくもりを感じたい。

「そっか、俺脱いでないもんな。いーよ。待ってて」

 僕の太ももを跨いだまま膝立ちをして、帯を解く月華。

 ひどい。わざとゆっくり脱いで、見せつけながら焦らしてる。  
 もう男娼じゃないんだから、そんな駆け引きみたいなこと、しないでよ。

「ぅ、うっ……」

 男娼時代の月華を思うと涙が出てくる。仕事だったとはいえ、僕のためだったとはいえ、男たちに貫かれ、貫いてきた月華。

 僕は月華だけの月華だけど、月華は僕が初めてじゃない。

「僕も月華の初めてがよかったよ~」

 馬鹿。こんなことを言うなんて、最低だ。

「ごめ、わかって、るのに」

 ひくっと喉が鳴ってうまく話せない。

 月華は着物を脱ぐ片手を途中で止めて、僕の髪の中に手を入れると、耳元に唇を付けた。

「……愛してる」
「愛してる」
「愛してる」

 気持ちを込めて繰り返してくれる月華。耳をかじりながら、耳にキスをしながら、耳を口に含みながら。

「うん……わかってる」

 月華の気持ちは僕だけのものなんだから、取り返せないことに嫉妬しちゃいけない。

「そういう意味じゃない……いや、愛してるのは間違いじゃないけど」
「なあに? どういう意味?」
「愛してる、は、客にも言ったことはないんだ。毬也のために取っておいたから。だから……毬也に言ったのが、生まれて初めてだってこと」
「……月華……!」

 言い表せない気持ちが胸をいっぱいにする。いろんな味のジャムを混ぜたみたい。喜びも切なさも甘さも、全部全部が僕の胸の瓶に詰め込まれて、蓋ができなくて溢れてしまう。

「続き、していいか?」

 首にしがみついたために上半身が起きている僕の背を、月華がとんとん、と撫でる。
 肉球がずいぶんしっとりとして熱くなっていた。

「……うん、ごめんね。あっ……」

 月華の首から腕を放して背を布団に戻して、驚きで目を見張った。
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