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0話 期待と不安
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本作品をお読みいただきありがとうございます。
一部表現に修正を加えましたが、内容は変わっておりません。
初めて各作品のため、表現が幼稚であったり間違いがある部分があるかと思いますが、随時修正して参りますので、今後とも宜しくお願い致します。
アオイ
************
雲は重く、今にも大嵐が来そうな天気。
雲からは、雷が降り注ぎ所々で轟音が轟く。
大地は、地割れを起こし土は乾き切っている。
そんな景色が、ただ目の前に広がっていた。
「あぁ、いつもの夢か。」
俺は、その場に立っている筈だが、どこか俯瞰していてただ呆然と景色を見ている。
もう何度目だろうか、この夢を見るのは。
俺は初めてこの夢を見たニ年前の事を思い出す--
◆◇
俺は少し特殊で、生まれた瞬間から自我があった。
親の話も聞こえてたし理解できた。それに目も見えていた。
まぁ、首も据わってないし喋れないから、普通の赤ちゃんと基本変わらないんだけどね。
どうやら俺は、ノブル上流国という国の、公爵家であるアレクシス家の長男として生まれたらしい。
なんか、みんなが騒いで喜んでたのが印象的だった。
でも母は、ゴテゴテの化粧に下品なドレスを着て娼婦みたいな姿だったし、父については、油を被ったかと思うほどベタベタな肌とでっぷり太ったお腹、そしてカッパのような禿頭。
そんな両親を目にし、今後の自分の姿をすごく不安に思ったのは強烈に覚えている。
産まれて1週間後、俺は椅子に座らせられて、先生と名乗る人が剣と魔法を教えてくれた。
いや、俺喋れないし首も座ってないんだけど?っていうツッコミを入れることもできず……
暇だから、とりあえずうぎゃーうぎゃーと合いの手、もとい奇声を入れてみた。
「この子は、産まれてすぐなのに理解してますっ!流石公爵家の坊ちゃんですなー」
って先生が適当な事を両親に言ってたけど、両親は心底喜んでいた。
この家は、国は、バカしかいないのかな?
でも、何故か魔法があると初めて知った時は、すごく興奮した。
さっそく自分でやってみようと見様見真似でやってみたけど手応えがなく、悔しかった。
それから1歳になるまで寝る時間を除く全ての時間で、毎日先生が来て、剣、魔法、貴族として教養、作法等の座学が続いた。
正直、自我のある俺にとってかなりきつい時間だったが、これも将来のためと、なんとなく受け入れていた俺は一生懸命授業を聞いた。
そんなことが約1年も続き、俺の歳は1歳になった。
少しずつカタコトで喋れるようになったり、質問もできるようになって、剣や魔法については、実践形式で勉強が行われたため、退屈な時間も少なくなっていった。
一方で、俺の能力が徐々についていけなくなっている事が露見していった。
先生は、根気よく俺に教えてくれてるが、頭では理解していても体がついていかないのだ。
徐々にその事について俺も先生も悩んでいった。
そんなある日、昼寝の時間が終わり、俺が起きようとしていた時に先生が部屋に入ってきた。
誰かと喋っているようだったので、もう少し寝れると思い、軽い気持ちで目を開けずに俺はふて寝を決め込んでいた。
「……不甲斐ないです。申し訳ございません。例え能力が平均的だったとしても、もっとできる筈なんですが……」
「わざわざ、貴族院の名誉教授を呼んでもこのザマ。悪いのは貴方ではなく、私の愚孫です。公爵家の長男としての自覚がなさすぎる……」
ん?この声は、先生と俺の祖父、今は爺やと呼ばれてる隠居爺さんだ……俺の出来の悪さの話題…だよな……?
俺は、まさか裏でこんな事を言われているとは思わず、俺はふて寝を続けて、さらに耳を澄ます。
「痛み入ります。ところで、私にも立場というものがありまして……公爵家のご長男様が出来損ないというご事情は秘密裏のこと。しかし、このままでは私に不名誉なレッテルが貼られてしまうのも事実。どうかご配慮を頂けないでしょうか。」
「それはそれは、要らぬご心配をおかけしましたな。実はここだけの話ですが、第二夫人の出産がもうじきでな。男児が産まれるとの事。先生には、使えぬ長男ではなく、使えるであろう次男をお育てになられた方がよろしいかと思いまして……ごほんっ……今のは言いすぎましたかな。」
「はははっ。ではそのようにお願いします……ところで話題は変わりますが、私は急遽貴族院の名誉教授として出張が決まってしまいましたので、将来有望なご長男様については、私よりも優秀な代わりの先生を付けることにします。そうですね、次男様がお生まれになる頃には戻ってくる予定ですので、もしその時に機会があれば是非またお願いします。」
「承知した。当主にはその様に伝えおく。先生には多額のお金を払ってもらっている。今後ともどうぞよろしくお願いします。」
俺は、そんな会話を聞きながら、悔し涙を流した。
先生ならまだしも、隠居した自分の祖父にもそんな事を言われているなんて……
ショックのあまり俺の心は耐えきれず、気絶した。
◆◇
そして冒頭に戻る。
俺はあの話を聞いた日から、寝るたびにこの夢を見る。
ここは俺の心を表しているのだろうか、それとも未来?
そんな不安に駆られ、いつもこの土地で大声で問う。
いつも返答など返ってこないのだが、不安で聞いてしまう。
「ここはどこなんだ?不安が渦巻く俺の心の中か?それとも俺の未来を表しているのか?俺はどうすればこの夢から解放される?俺は……俺は……俺は何故、自我を持って生まれてきたんだ……俺はなぜあの話を聞いてしまったんだ。」
口から言葉が紡ぎ出されるたびに大粒の涙が頬を伝う。
この二年、俺の鑑定結果が出て失望され、弟が生まれ、先生が戻り、弟の鑑定の末、弟は出来が良く将来有望と判定されるなど、俺の生活は一変した。
弟の鑑定の日から、俺の扱いは日に日に悪くなり、今では専属メイドを除いてみんなが俺の存在がなかったかの様に扱う。
部屋も移され、別館の倉庫みたいな部屋で軟禁生活を送っている。
代わりに来た先生は、部屋で時間を潰して出て行くだけだったし、今となってはもう来なくなった。
俺は、悪いことなんてしていない、ただ普通に生まれただけ。
でも、生まれてすぐ自我があった事で、自分が何故この状況に陥ったのかを知っている。
知っていたとしても、この状況は酷すぎるし納得はできなかった。
そんな俺は、どうすればいい?
俺は泣くしか出来なかった。
でも今日の夢はいつもと違った。
気がつけば辺りは、雷の轟音が聞こえなくなり、曇天の天気と荒れた大地だけの静寂の空間と変わっていた。
そして--
「よし、やっと力が少し……。あーあー聞こえてますか?」
そんな素っ頓狂な声が語りかけてきた。
俺と女神が初めて出会った瞬間だった--
一部表現に修正を加えましたが、内容は変わっておりません。
初めて各作品のため、表現が幼稚であったり間違いがある部分があるかと思いますが、随時修正して参りますので、今後とも宜しくお願い致します。
アオイ
************
雲は重く、今にも大嵐が来そうな天気。
雲からは、雷が降り注ぎ所々で轟音が轟く。
大地は、地割れを起こし土は乾き切っている。
そんな景色が、ただ目の前に広がっていた。
「あぁ、いつもの夢か。」
俺は、その場に立っている筈だが、どこか俯瞰していてただ呆然と景色を見ている。
もう何度目だろうか、この夢を見るのは。
俺は初めてこの夢を見たニ年前の事を思い出す--
◆◇
俺は少し特殊で、生まれた瞬間から自我があった。
親の話も聞こえてたし理解できた。それに目も見えていた。
まぁ、首も据わってないし喋れないから、普通の赤ちゃんと基本変わらないんだけどね。
どうやら俺は、ノブル上流国という国の、公爵家であるアレクシス家の長男として生まれたらしい。
なんか、みんなが騒いで喜んでたのが印象的だった。
でも母は、ゴテゴテの化粧に下品なドレスを着て娼婦みたいな姿だったし、父については、油を被ったかと思うほどベタベタな肌とでっぷり太ったお腹、そしてカッパのような禿頭。
そんな両親を目にし、今後の自分の姿をすごく不安に思ったのは強烈に覚えている。
産まれて1週間後、俺は椅子に座らせられて、先生と名乗る人が剣と魔法を教えてくれた。
いや、俺喋れないし首も座ってないんだけど?っていうツッコミを入れることもできず……
暇だから、とりあえずうぎゃーうぎゃーと合いの手、もとい奇声を入れてみた。
「この子は、産まれてすぐなのに理解してますっ!流石公爵家の坊ちゃんですなー」
って先生が適当な事を両親に言ってたけど、両親は心底喜んでいた。
この家は、国は、バカしかいないのかな?
でも、何故か魔法があると初めて知った時は、すごく興奮した。
さっそく自分でやってみようと見様見真似でやってみたけど手応えがなく、悔しかった。
それから1歳になるまで寝る時間を除く全ての時間で、毎日先生が来て、剣、魔法、貴族として教養、作法等の座学が続いた。
正直、自我のある俺にとってかなりきつい時間だったが、これも将来のためと、なんとなく受け入れていた俺は一生懸命授業を聞いた。
そんなことが約1年も続き、俺の歳は1歳になった。
少しずつカタコトで喋れるようになったり、質問もできるようになって、剣や魔法については、実践形式で勉強が行われたため、退屈な時間も少なくなっていった。
一方で、俺の能力が徐々についていけなくなっている事が露見していった。
先生は、根気よく俺に教えてくれてるが、頭では理解していても体がついていかないのだ。
徐々にその事について俺も先生も悩んでいった。
そんなある日、昼寝の時間が終わり、俺が起きようとしていた時に先生が部屋に入ってきた。
誰かと喋っているようだったので、もう少し寝れると思い、軽い気持ちで目を開けずに俺はふて寝を決め込んでいた。
「……不甲斐ないです。申し訳ございません。例え能力が平均的だったとしても、もっとできる筈なんですが……」
「わざわざ、貴族院の名誉教授を呼んでもこのザマ。悪いのは貴方ではなく、私の愚孫です。公爵家の長男としての自覚がなさすぎる……」
ん?この声は、先生と俺の祖父、今は爺やと呼ばれてる隠居爺さんだ……俺の出来の悪さの話題…だよな……?
俺は、まさか裏でこんな事を言われているとは思わず、俺はふて寝を続けて、さらに耳を澄ます。
「痛み入ります。ところで、私にも立場というものがありまして……公爵家のご長男様が出来損ないというご事情は秘密裏のこと。しかし、このままでは私に不名誉なレッテルが貼られてしまうのも事実。どうかご配慮を頂けないでしょうか。」
「それはそれは、要らぬご心配をおかけしましたな。実はここだけの話ですが、第二夫人の出産がもうじきでな。男児が産まれるとの事。先生には、使えぬ長男ではなく、使えるであろう次男をお育てになられた方がよろしいかと思いまして……ごほんっ……今のは言いすぎましたかな。」
「はははっ。ではそのようにお願いします……ところで話題は変わりますが、私は急遽貴族院の名誉教授として出張が決まってしまいましたので、将来有望なご長男様については、私よりも優秀な代わりの先生を付けることにします。そうですね、次男様がお生まれになる頃には戻ってくる予定ですので、もしその時に機会があれば是非またお願いします。」
「承知した。当主にはその様に伝えおく。先生には多額のお金を払ってもらっている。今後ともどうぞよろしくお願いします。」
俺は、そんな会話を聞きながら、悔し涙を流した。
先生ならまだしも、隠居した自分の祖父にもそんな事を言われているなんて……
ショックのあまり俺の心は耐えきれず、気絶した。
◆◇
そして冒頭に戻る。
俺はあの話を聞いた日から、寝るたびにこの夢を見る。
ここは俺の心を表しているのだろうか、それとも未来?
そんな不安に駆られ、いつもこの土地で大声で問う。
いつも返答など返ってこないのだが、不安で聞いてしまう。
「ここはどこなんだ?不安が渦巻く俺の心の中か?それとも俺の未来を表しているのか?俺はどうすればこの夢から解放される?俺は……俺は……俺は何故、自我を持って生まれてきたんだ……俺はなぜあの話を聞いてしまったんだ。」
口から言葉が紡ぎ出されるたびに大粒の涙が頬を伝う。
この二年、俺の鑑定結果が出て失望され、弟が生まれ、先生が戻り、弟の鑑定の末、弟は出来が良く将来有望と判定されるなど、俺の生活は一変した。
弟の鑑定の日から、俺の扱いは日に日に悪くなり、今では専属メイドを除いてみんなが俺の存在がなかったかの様に扱う。
部屋も移され、別館の倉庫みたいな部屋で軟禁生活を送っている。
代わりに来た先生は、部屋で時間を潰して出て行くだけだったし、今となってはもう来なくなった。
俺は、悪いことなんてしていない、ただ普通に生まれただけ。
でも、生まれてすぐ自我があった事で、自分が何故この状況に陥ったのかを知っている。
知っていたとしても、この状況は酷すぎるし納得はできなかった。
そんな俺は、どうすればいい?
俺は泣くしか出来なかった。
でも今日の夢はいつもと違った。
気がつけば辺りは、雷の轟音が聞こえなくなり、曇天の天気と荒れた大地だけの静寂の空間と変わっていた。
そして--
「よし、やっと力が少し……。あーあー聞こえてますか?」
そんな素っ頓狂な声が語りかけてきた。
俺と女神が初めて出会った瞬間だった--
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