全てを無くした転生者は、スキルの力で成り上がる

蒼田 遼

文字の大きさ
1 / 18

0話 期待と不安

しおりを挟む
 本作品をお読みいただきありがとうございます。
 一部表現に修正を加えましたが、内容は変わっておりません。
 初めて各作品のため、表現が幼稚であったり間違いがある部分があるかと思いますが、随時修正して参りますので、今後とも宜しくお願い致します。

                アオイ
************

 雲は重く、今にも大嵐が来そうな天気。
 雲からは、雷が降り注ぎ所々で轟音が轟く。
 大地は、地割れを起こし土は乾き切っている。

 そんな景色が、ただ目の前に広がっていた。

 「あぁ、いつもの夢か。」

 俺は、その場に立っている筈だが、どこか俯瞰していてただ呆然と景色を見ている。

 もう何度目だろうか、この夢を見るのは。
 俺は初めてこの夢を見たニ年前の事を思い出す--

◆◇
 
 俺は少し特殊で、生まれた瞬間から自我があった。
 親の話も聞こえてたし理解できた。それに目も見えていた。
 まぁ、首も据わってないし喋れないから、普通の赤ちゃんと基本変わらないんだけどね。

 どうやら俺は、ノブル上流国という国の、公爵家であるアレクシス家の長男として生まれたらしい。

 なんか、みんなが騒いで喜んでたのが印象的だった。

 でも母は、ゴテゴテの化粧に下品なドレスを着て娼婦みたいな姿だったし、父については、油を被ったかと思うほどベタベタな肌とでっぷり太ったお腹、そしてカッパのような禿頭。

 そんな両親を目にし、今後の自分の姿をすごく不安に思ったのは強烈に覚えている。


 産まれて1週間後、俺は椅子に座らせられて、先生と名乗る人が剣と魔法を教えてくれた。

 いや、俺喋れないし首も座ってないんだけど?っていうツッコミを入れることもできず……

 暇だから、とりあえずうぎゃーうぎゃーと合いの手、もとい奇声を入れてみた。


 「この子は、産まれてすぐなのに理解してますっ!流石公爵家の坊ちゃんですなー」


 って先生が適当な事を両親に言ってたけど、両親は心底喜んでいた。

 この家は、国は、バカしかいないのかな?

 でも、何故か魔法があると初めて知った時は、すごく興奮した。
 さっそく自分でやってみようと見様見真似でやってみたけど手応えがなく、悔しかった。


 それから1歳になるまで寝る時間を除く全ての時間で、毎日先生が来て、剣、魔法、貴族として教養、作法等の座学が続いた。

 正直、自我のある俺にとってかなりきつい時間だったが、これも将来のためと、なんとなく受け入れていた俺は一生懸命授業を聞いた。

 そんなことが約1年も続き、俺の歳は1歳になった。

 少しずつカタコトで喋れるようになったり、質問もできるようになって、剣や魔法については、実践形式で勉強が行われたため、退屈な時間も少なくなっていった。

 一方で、俺の能力が徐々についていけなくなっている事が露見していった。

 先生は、根気よく俺に教えてくれてるが、頭では理解していても体がついていかないのだ。

 徐々にその事について俺も先生も悩んでいった。


 そんなある日、昼寝の時間が終わり、俺が起きようとしていた時に先生が部屋に入ってきた。

 誰かと喋っているようだったので、もう少し寝れると思い、軽い気持ちで目を開けずに俺はふて寝を決め込んでいた。


 「……不甲斐ないです。申し訳ございません。例え能力が平均的だったとしても、もっとできる筈なんですが……」

 「わざわざ、貴族院の名誉教授を呼んでもこのザマ。悪いのは貴方ではなく、私の愚孫です。公爵家の長男としての自覚がなさすぎる……」


 ん?この声は、先生と俺の祖父、今は爺やと呼ばれてる隠居爺さんだ……俺の出来の悪さの話題…だよな……?
 俺は、まさか裏でこんな事を言われているとは思わず、俺はふて寝を続けて、さらに耳を澄ます。


 「痛み入ります。ところで、私にも立場というものがありまして……公爵家のご長男様が出来損ないというご事情は秘密裏のこと。しかし、このままでは私に不名誉なレッテルが貼られてしまうのも事実。どうかご配慮を頂けないでしょうか。」

 「それはそれは、要らぬご心配をおかけしましたな。実はここだけの話ですが、第二夫人の出産がもうじきでな。男児が産まれるとの事。先生には、使え長男ではなく、使えであろう次男をお育てになられた方がよろしいかと思いまして……ごほんっ……今のは言いすぎましたかな。」

 「はははっ。ではそのようにお願いします……ところで話題は変わりますが、私は急遽貴族院の出張が決まってしまいましたので、ご長男様については、私よりも優秀な代わりの先生を付けることにします。そうですね、次男様がお生まれになる頃には戻ってくる予定ですので、もしその時に機会があれば是非またお願いします。」

 「承知した。当主にはその様に伝えおく。先生には多額のお金を払ってもらっている。今後ともどうぞよろしくお願いします。」

 俺は、そんな会話を聞きながら、悔し涙を流した。
 先生ならまだしも、隠居した自分の祖父にもそんな事を言われているなんて……

 ショックのあまり俺の心は耐えきれず、気絶した。

◆◇

 そして冒頭に戻る。

 俺はあの話を聞いた日から、寝るたびにこの夢を見る。
 ここは俺の心を表しているのだろうか、それとも未来?

 そんな不安に駆られ、いつもこの土地で大声で問う。
 いつも返答など返ってこないのだが、不安で聞いてしまう。

 「ここはどこなんだ?不安が渦巻く俺の心の中か?それとも俺の未来を表しているのか?俺はどうすればこの夢から解放される?俺は……俺は……俺は何故、自我を持って生まれてきたんだ……俺はなぜあの話を聞いてしまったんだ。」

 口から言葉が紡ぎ出されるたびに大粒の涙が頬を伝う。

 この二年、俺の鑑定結果が出て失望され、弟が生まれ、先生が戻り、弟の鑑定の末、弟は出来が良く将来有望と判定されるなど、俺の生活は一変した。

 弟の鑑定の日から、俺の扱いは日に日に悪くなり、今では専属メイドを除いてみんなが俺の存在がなかったかの様に扱う。

 部屋も移され、別館の倉庫みたいな部屋で軟禁生活を送っている。
 代わりに来た先生は、部屋で時間を潰して出て行くだけだったし、今となってはもう来なくなった。


 俺は、悪いことなんてしていない、ただ普通に生まれただけ。

 でも、生まれてすぐ自我があった事で、自分が何故この状況に陥ったのかを知っている。

 知っていたとしても、この状況は酷すぎるし納得はできなかった。

 そんな俺は、どうすればいい?

 俺は泣くしか出来なかった。


 でも今日の夢はと違った。

 気がつけば辺りは、雷の轟音が聞こえなくなり、曇天の天気と荒れた大地だけの静寂の空間と変わっていた。

 そして--

 「よし、やっと力が少し……。あーあー聞こえてますか?」

 そんな素っ頓狂な声が語りかけてきた。

 俺と女神が初めて出会った瞬間だった--
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...