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世界線α・被験者「藤城廣之」の受難
第五話 置いてけぼり
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同日、夕食の時間。
変わってしまったお菓子屋の看板を見て、すっかり食欲が失せた僕の耳に、テレビのニュースを見ていた父と母の会話が入ってくる。
「へえ、県北の小学校で食中毒だってさ」
「夏だからねえ。お弁当も気を付けないと」
僕もつい気になってテレビの画面を見ると、そこから目が離せなくなった。
「え? あそこの学校、統合で空き校舎になったはずじゃ……」
「そうだっけ?」
「気のせいじゃないの?」
父は特に気にする様子もなく、ご飯を口に運ぶ。テレビに釘付けになっている僕に、今度は母がいつもの調子で声を掛けた。
何だ、これ。
「いや、僕は覚えるよ! 去年の春頃にテレビのニュースで流れていたんだ! 空き校舎を生ハム製造工場にするって、確かに……」
「ええ? すごい斬新な発想ね。でも、私は記憶にないわ」
「俺も記憶にないなあ。インパクトがある話題だったら覚えているはずだ。新聞にも載っていなかったと思うぞ」
両親から否定の言葉が返ってくると、続けて姉が無言で僕に「ほらね」という視線を突き刺した。
……僕がおかしくなったのだろうか。
「ごちそうさま」
「え? 廣之、これしか食べないの?」
「廣之、今日は変だぞ。何かあったのか?」
両親が僕を心配してそう言ってくれたが、僕はなぜだかちっとも話す気になれなかった。
「何でもないよ。たぶん、夏バテだと思う。今日は早めに休むよ」
「あらやだ。廣之、大丈夫なの? って、ちょっと!」
その場を適当に誤魔化した僕は、母の呼び掛けを無視して自室へと向かう。到着してすぐに、重怠くなった身体を乱暴にベッドに沈ませた。
……ああ、また知ってしまった。記憶違いなんて、もう懲り懲りだ。僕が普通に生活していても、周りとの微妙な記憶違いがどんどん増えていく。まるで自分だけが社会から仲間外れになったような気分だ。
テレビなんか見なければよかった。どうせ、これからもあんなニュースばかりだろう。やるせなさばかりが募っていく。僕は今日もまた、見てはいけない真実に息が詰まりそうだ。
愛着があった場所や見慣れた光景、変わらないはずの過去が勝手に変えられていく。今や過ぎ去ったその時間は、誰かと記憶や思いを共有していたはずなのに。そこでしか生まれない、自分の大切な感情や感覚があったはずなのに──。
何の前触れもなく静かに訪れた、微妙だけど確実な変化が、僕にはたまらなく不気味だった。自分の身体の一部が、何者かの見えざる手によって奪われていくような、この感覚は何なのだろうか。
──爺ちゃん……。爺ちゃんも、こんな気持ちだったの?
僕は白熱灯に照らされた色褪せた白い天井をじっと見つめながら、もうこの世にはいない祖父へ思いを馳せる。
マイペースな僕ですら、こうも周りと記憶がズレていれば頭がおかしくなりそうだ。これまで当たり前に過ごしていた世界が、ある日突然、自分だけを置いてけぼりにしていく。小さな変化も、積もりに積もれば、いつかは大きなうねりとなる。そうなる前に、僕が日常の違和感に気が付けるかどうかが、自分自身の記憶を守れるチャンスだったのだろう。
──そうか……。だから、爺ちゃんは声を上げ続けていたんだね。
祖父はひとり、おかしな世界に気が付いてしまったんだ。みんなにとって平和な日常は、祖父にとっては恐怖や苦痛の非日常だったのかもしれない。
僕だったら、同じ思いを抱えた人がいない孤独感に、とてもじゃないが耐えられそうにない。
「爺ちゃん……」
思い出を誰とも共有できなかった祖父は、僕や姉と会う時はいつも嬉しそうに笑っていた。だからこそ、桜の木をそっと撫でた祖父の弱々しい姿に、僕は違和感を覚えたんだ。
祖父は笑顔の下で、なんて想いを抱えていたのだろう。
祖父を思えば、喉が焼けるように熱くなる。押し込めた感情が膨張して破裂しそうになるのを、僕は唇を噛むことで耐えた。それでも、目から思いが形となって溢れてきて、僕はそこに腕を押し当てた。
記憶を──つまりは、自分を否定され続けた祖父は、僕らに何を思っていたのだろうか。
あんなにも優しい祖父が、どこの世界の誰に迷惑をかけたと言うんだ。なぜ、祖父だけに奇妙な現象が起きたのだろう。そして、なぜ今、それが僕にも起こっているのだろうか。
この絶望的な孤独感や疑問をどうしても解消したくて、僕はスマートフォンを手にした。
「この人に会おう」
僕は黒い文字で書かれた、中村屋の看板の写真を見て呟いた。
そうだ、僕にはまだ希望がある。独りじゃないかもしれない。
心臓がバクバクと早打ちし始める。
僕だけが祖父や僕自身を、ひょっとしたら僕たちのように困っている他の誰かをも、救えるかもしれない。それは、使命感にも似た思いだった。
上半身をベッドから起こし、立ち上がるため、まだ温かいシーツに手を置く。さっきまで頭を置いていたそこだけが、小さく少しだけ濡れていた。
*
人間は未知のものに恐怖を感じると、最初に提示された情報へ安易に飛びつく生き物だと思う。早く安心感を得たくて、自分で禄に情報の検証もせず、何かに縋りたくなるのだ。
僕はそれを、学校の授業で痛感した。
あれは、中学校の家庭科の調理実習でのこと──。普段から料理を全くしない僕は、教科書をきちんと読まず、強火で一気に輪切り唐辛子をごま油で炒めていた。
すると、事件が起きる。
僕のフライパンから、家庭科室全体に、焦げ臭くて目に染みる煙が発生したのだ。
慌てた僕の耳に入ってきたのは、僕と同じく、料理をしないラグビー部の男子生徒の「早く煙を消せ!」という声だった。パニックになった僕は、迷うことなく強火のフライパンへ水を入れようとしたが、すぐに先生から止められる。
先生に怒られて知ったのだが、高温になった油の中へ同量の水を投入すると、油が噴水のように跳ね上がって危険だそうだ。危うく大惨事になるところだった。
無知とは、何て恐ろしいのだろう。
僕は、初耳な情報に出会った時こそ、立ち止まって慎重になるべきだと、あの時に身をもって学習した。
それから僕は、情報に対して、人一倍警戒するようになった。いつも可能な限り、裏取りをするようにしている。自分の目で確かめたり、体験したりといった具合でだ。
だから、あの日、すぐに中村屋の看板を見に行った。そして、ありえないと思っていた出来事が自分の身に降り掛かってきて、僕は初めて思い知らされた。
何かが、僕たちの世界の過去を変えている──。祖父が体験したであろう恐怖は、ちゃんと現実に存在していたのだ。
「爺ちゃんは認知症じゃない。変わったのは、この世界の方だったんだよ」
僕は勇気を振り絞り、家族に全てを話した。けれど、何度説明しても笑われたり、呆れられたりするだけだった。
両親は言った。そんな話はありえない、と。姉ちゃんに至っては「あんた、頭がおかしくなったんじゃない?」と言って、その日から明らかに僕を避けるようになった。
心無い言葉に傷付いたって、それでも僕は諦めなかった。誰かが、この事実をみんなに伝えなければ、誰も救われないのだ。
「みんな、今までの常識に疑問を持つべきだよ」
家族に何度訴えても、僕の声はSFやオカルトに対する、みんなの先入観によって揉み消されてしまう。一度もそれについて考えた事がない、疑問を持たない家族には、この理論が通用しなかったのだ。
悔しい日々が続き、僕はますますもどかしい気持ちを抱える事になる。
待ちに待った連絡が、プライベートメッセージとして僕に届いたのは、そんな時だった。
変わってしまったお菓子屋の看板を見て、すっかり食欲が失せた僕の耳に、テレビのニュースを見ていた父と母の会話が入ってくる。
「へえ、県北の小学校で食中毒だってさ」
「夏だからねえ。お弁当も気を付けないと」
僕もつい気になってテレビの画面を見ると、そこから目が離せなくなった。
「え? あそこの学校、統合で空き校舎になったはずじゃ……」
「そうだっけ?」
「気のせいじゃないの?」
父は特に気にする様子もなく、ご飯を口に運ぶ。テレビに釘付けになっている僕に、今度は母がいつもの調子で声を掛けた。
何だ、これ。
「いや、僕は覚えるよ! 去年の春頃にテレビのニュースで流れていたんだ! 空き校舎を生ハム製造工場にするって、確かに……」
「ええ? すごい斬新な発想ね。でも、私は記憶にないわ」
「俺も記憶にないなあ。インパクトがある話題だったら覚えているはずだ。新聞にも載っていなかったと思うぞ」
両親から否定の言葉が返ってくると、続けて姉が無言で僕に「ほらね」という視線を突き刺した。
……僕がおかしくなったのだろうか。
「ごちそうさま」
「え? 廣之、これしか食べないの?」
「廣之、今日は変だぞ。何かあったのか?」
両親が僕を心配してそう言ってくれたが、僕はなぜだかちっとも話す気になれなかった。
「何でもないよ。たぶん、夏バテだと思う。今日は早めに休むよ」
「あらやだ。廣之、大丈夫なの? って、ちょっと!」
その場を適当に誤魔化した僕は、母の呼び掛けを無視して自室へと向かう。到着してすぐに、重怠くなった身体を乱暴にベッドに沈ませた。
……ああ、また知ってしまった。記憶違いなんて、もう懲り懲りだ。僕が普通に生活していても、周りとの微妙な記憶違いがどんどん増えていく。まるで自分だけが社会から仲間外れになったような気分だ。
テレビなんか見なければよかった。どうせ、これからもあんなニュースばかりだろう。やるせなさばかりが募っていく。僕は今日もまた、見てはいけない真実に息が詰まりそうだ。
愛着があった場所や見慣れた光景、変わらないはずの過去が勝手に変えられていく。今や過ぎ去ったその時間は、誰かと記憶や思いを共有していたはずなのに。そこでしか生まれない、自分の大切な感情や感覚があったはずなのに──。
何の前触れもなく静かに訪れた、微妙だけど確実な変化が、僕にはたまらなく不気味だった。自分の身体の一部が、何者かの見えざる手によって奪われていくような、この感覚は何なのだろうか。
──爺ちゃん……。爺ちゃんも、こんな気持ちだったの?
僕は白熱灯に照らされた色褪せた白い天井をじっと見つめながら、もうこの世にはいない祖父へ思いを馳せる。
マイペースな僕ですら、こうも周りと記憶がズレていれば頭がおかしくなりそうだ。これまで当たり前に過ごしていた世界が、ある日突然、自分だけを置いてけぼりにしていく。小さな変化も、積もりに積もれば、いつかは大きなうねりとなる。そうなる前に、僕が日常の違和感に気が付けるかどうかが、自分自身の記憶を守れるチャンスだったのだろう。
──そうか……。だから、爺ちゃんは声を上げ続けていたんだね。
祖父はひとり、おかしな世界に気が付いてしまったんだ。みんなにとって平和な日常は、祖父にとっては恐怖や苦痛の非日常だったのかもしれない。
僕だったら、同じ思いを抱えた人がいない孤独感に、とてもじゃないが耐えられそうにない。
「爺ちゃん……」
思い出を誰とも共有できなかった祖父は、僕や姉と会う時はいつも嬉しそうに笑っていた。だからこそ、桜の木をそっと撫でた祖父の弱々しい姿に、僕は違和感を覚えたんだ。
祖父は笑顔の下で、なんて想いを抱えていたのだろう。
祖父を思えば、喉が焼けるように熱くなる。押し込めた感情が膨張して破裂しそうになるのを、僕は唇を噛むことで耐えた。それでも、目から思いが形となって溢れてきて、僕はそこに腕を押し当てた。
記憶を──つまりは、自分を否定され続けた祖父は、僕らに何を思っていたのだろうか。
あんなにも優しい祖父が、どこの世界の誰に迷惑をかけたと言うんだ。なぜ、祖父だけに奇妙な現象が起きたのだろう。そして、なぜ今、それが僕にも起こっているのだろうか。
この絶望的な孤独感や疑問をどうしても解消したくて、僕はスマートフォンを手にした。
「この人に会おう」
僕は黒い文字で書かれた、中村屋の看板の写真を見て呟いた。
そうだ、僕にはまだ希望がある。独りじゃないかもしれない。
心臓がバクバクと早打ちし始める。
僕だけが祖父や僕自身を、ひょっとしたら僕たちのように困っている他の誰かをも、救えるかもしれない。それは、使命感にも似た思いだった。
上半身をベッドから起こし、立ち上がるため、まだ温かいシーツに手を置く。さっきまで頭を置いていたそこだけが、小さく少しだけ濡れていた。
*
人間は未知のものに恐怖を感じると、最初に提示された情報へ安易に飛びつく生き物だと思う。早く安心感を得たくて、自分で禄に情報の検証もせず、何かに縋りたくなるのだ。
僕はそれを、学校の授業で痛感した。
あれは、中学校の家庭科の調理実習でのこと──。普段から料理を全くしない僕は、教科書をきちんと読まず、強火で一気に輪切り唐辛子をごま油で炒めていた。
すると、事件が起きる。
僕のフライパンから、家庭科室全体に、焦げ臭くて目に染みる煙が発生したのだ。
慌てた僕の耳に入ってきたのは、僕と同じく、料理をしないラグビー部の男子生徒の「早く煙を消せ!」という声だった。パニックになった僕は、迷うことなく強火のフライパンへ水を入れようとしたが、すぐに先生から止められる。
先生に怒られて知ったのだが、高温になった油の中へ同量の水を投入すると、油が噴水のように跳ね上がって危険だそうだ。危うく大惨事になるところだった。
無知とは、何て恐ろしいのだろう。
僕は、初耳な情報に出会った時こそ、立ち止まって慎重になるべきだと、あの時に身をもって学習した。
それから僕は、情報に対して、人一倍警戒するようになった。いつも可能な限り、裏取りをするようにしている。自分の目で確かめたり、体験したりといった具合でだ。
だから、あの日、すぐに中村屋の看板を見に行った。そして、ありえないと思っていた出来事が自分の身に降り掛かってきて、僕は初めて思い知らされた。
何かが、僕たちの世界の過去を変えている──。祖父が体験したであろう恐怖は、ちゃんと現実に存在していたのだ。
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心無い言葉に傷付いたって、それでも僕は諦めなかった。誰かが、この事実をみんなに伝えなければ、誰も救われないのだ。
「みんな、今までの常識に疑問を持つべきだよ」
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