ちょっぴり奇妙なお話集 

夏実朋可

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空き家

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 家の近所にあるその家が空き家になってもう3年目になるだろうか。
 その家の住人達一家6人、不運な不慮の事故で全員が亡くなっていた。
今は空き家に住み着いた野良猫達が、主人になったように我が物顔で塀の隙間から出入りしている。
 敷地も母屋も大きなものだ。大きいからこそ誰が相続するか、亡くなった家族の親類達が争っているようだった。
 親類達は、その家を売り飛ばして金銭を親類みんなで分けようとか、いやいや先祖代々の家土地だ、一人の持ち物にして建て直ししても良いからあの場に住むべきだとか意見がまとまらず、あちらこちらの不平不満が噴出することおびただしいと聞いている。
 やっとのことで持ち主が決まったと聞いたのが空き家となって一年後のことだった。ところが、持ち主が決まったのもつかの間、その持ち主になった人物がまたまた不慮の事故で亡くなってしまった。そして再び相続権の争いが始まったようだった。
 そんなことは露とも知らず、その屋の主人となった猫達はのんびりと暮らしている。猫達は庭先だけに居るわけではなく家の中から出てくるようにも見える。どこかに隙間があるのか穴があるのか。
 残業で遅く帰った時の事だった。
 その空き家の前を通ると、家の中からミャーミャーとかすかに鳴く声がした。ああ、あの猫たちかと思い、ふと、どうしているのかと気になった。
 ちょっと覗いてみよう。
 見ると気のせいか誰もいないはずの空き家からうっすらと光が漏れている気がした。
 空き家に暮らす猫達はたぶん6匹。毎日通るせいかなんとなく出入りしている猫を覚えていた。
 …その時までは気が付かなかったが。
 不思議だ。まさかと思った。
 その屋の元の持ち主だった家族も同じ6人。ご夫婦とおばあちゃん、それに息子さんが2人に娘さんが一人だったと思う。住み着いた猫達の構成も年老いた猫が一匹に夫婦のような猫が2匹。そして子猫が3匹。
 そう言えば猫達はいつからこの空き家に住み着いたのか。
 子猫はいつも子猫で成長している様子も感じられない。成長した猫達は入れ替わっているのかもしれないが、見た限りでは同じように見える。
 相続した人物が亡くなってさらに一年後、再再度の持ち主となった御仁も病死となり、今また誰が相続するかと親戚中が雁首を並べて協議している最中と言う事を聞いた。どうやら今度はその家土地を売り飛ばし親戚中で分け合うということに落ち着きそうな気配だ。
 あの空き家の親類達が家を見に来ていた時、ちょうど休日の散歩であの家の前を通ったのだが、そんなことは知らないとばかりに猫は日向ぼっこをし、時折、親類たちに向かってミャーと鳴いていたのが印象的だった。
 今日も一家6匹の猫達は優雅にあの空き家の一戸建てに暮らしている。
 あの家土地が売られたら猫達はどうなるのだろう。
 猫達はミャーミャーと何かを言いたそうに鳴いている。
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