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第1節
幕間「土掘る神様と人助け」
しおりを挟むあれから数時間...なぜか未だに穴を掘っていた。
最初はある偉大なお方(目の前にいる)が7人ほど巨大な力を持つ人間が現れたようじゃと言っていた気がしたがもうこの暗闇のせいで覚えてない。
「いや楽なんですけどなんで地下なんですか」私はツクヨミ様と呼ばれる元老人の美少女に質問する。
理由としてはせっかくのインベントリを使わないでどうすると言われてしまったのと。
もし外が汚染されてたら地下からの方が安全だと諭されたこともある。
「んでもってな、外は多分今阿鼻叫喚の事態だと思うわけじゃよ」
「あれから半日はたってますものね」
さすがにお腹が減ってきた。
肉をつけたために人間と同じようにお腹は減るようになった。
とはいえ元神様なので3日は食べなくても生きては行けるのだが栄養がないと肉体は衰えていくと肉付けするときの注意事項に書いてあった。
ちょっと痩せる程度じゃろとツクヨミは呑気なこと言うが結構死活問題で乙女に無理なダイエットは天敵だとこのお方にもおしなければならない。
「実はですね。食べないと胸から減っていくんです」
「よし、食料を探そう。人間の食い物とはなんじゃ」
まずそこからかとリィンはため息つきながら上に出ましょうと進言する。
仕方ないのぉと上に穴が空くとそこは上からよく見ていたあの町であった。
「おっと、ちょうど良い。だがバットなタイミングでもあるのぉ」
「何呑気なことを」
「してこやつらが加えているのは人間か?」
言われて気づいた。
こいつらが加えているのは人型の何か。
人間だとは思うが1人だけ人間とは思えない力を放っているようだ。
「肉体を手に入れてしもうたからの。もしかすると法則が乱れよったか」
そう、この力を放っている死骸は元神様。
肉体を手に入れて下界...人間界に落ちたものの変化した生物殺されてしまったもの。
前回説明したと思うけど神様は神様にしか殺せない。それはつまるところ神様の力としてそう働いてるのだ。例外があるとしたら神器と呼ばれる神を殺す武器。悪神を倒すために作られた聖なる武器なのだがこれでも神を殺すこともできる。
肉体を手に入れるということの意味を嫌という程知った。
「ふむ、こやつは変わっておらぬの。ヴォイドかの。無名ゆえに見た目は変わらなかったもののついておらぬな」
それはわしらもじゃがのと笑うが笑い所じゃないクソジジイ。今は美少女だけど本当に中身クソジジイ。
「大丈夫じゃよ、こと守りにおいてわしの右に出るものはいない」
ツクヨミ自慢の一言だが由来からその言葉は絶対の意味を持つ。
作り出したるは真月刀。
細身の黄色い刃と黒い柄。
これがツクヨミの力のひとつ。月という力を具現化したものである。
この力を使っている時周囲15メートルの相手には超重力の負荷をもたらす。1日3度、1回30分までしか呼べはしないがそれでも強力で無慈悲な神の力である。
「お主ら、それがわしの友と知っての狼藉であろうな。一応言っとくが月のでてる晩にわしは9回殺せなければ死なんよ」
そして夜では無敵と言わんばかりの再生能力。
九重苦の夜。
月が出てる夜ならば9つの苦しみを得ない限り死なぬ不死の呪い。
毎回夜にリセットされるが新月の時だけは回数がリセットされずに能力も発動しない。
ここまでの解説で守りについて触れてないのはこれよりもさらに強力であるからだ。
ツクヨミの守りの主軸となる能力は神眼と瞬身。
さらに対象を決めておく防御スキル『かの誓い果たしたり』。
上の二つは何となくわかるだろうけど『かの誓い果たしたり』はなんの事やらさっぱりだろう。
かの誓い果たしたりは個人では使えない。
守るべきものがいないと使えないタイプの能力で守る対象につきゲームで言うステータスに補正がかかるスキル。オートバフとでも言えばいいのだろうか。その倍率が桁違いにおかしいのが防御。
1人だけでもほぼ鉄壁となる程の力である。
まぁあと2つ氷と水を操る力もあるのでほんと完璧な超人と化している。
私にもその程度の力があれば良かったのだがこれが神様としての知名度とスペックの差ということになるだろう。
「ふぅ、お主は何もしなかったな」
「私がなにかしたら余計手間かかるんじゃないの?」私は絶滅した化物たちを見てそう言った。
「かかっ、そうじゃのう」とか言われたので余計なお世話だと言いたかったがまぁ仕方ない本当のことだ。
確かに1人で戦う力は皆無に近いものの力的にはほかの神様にだって劣ってはいない。
なぜなら物質というものを設計図だけで復元できるような力だ。なんでも出来るしなんでもできない力。本当に神様は私にこの力をなんで与えたんだろ。
ここにいたらまた襲われると考えた私はツクヨミに宣言して隠れる場所を探す。これだけ危険溢れているなら食料確保はまず二の次。食料品は移動中に手に入れればいい。
なぜならばここは東京都新宿区に該当する場所。
食料品などそれらしい場所に行けばあるというものだ。
そうだっ、とそこらへんにあった紙をちぎりコンビニの廃墟から食料少しとボールペンをくすねる。
言い方が悪いがお金払っていないからには盗んでいるのと変わらない。お店の人がいたら今度何かしらの形で返そう。
たしかこんな形で...こうやって作られてたよね。
あとは分解した手順の複製。書き終えて創造をする。それは寸分たがわずスマホ。スマートフォンと呼ばれる人間の現代の利器であった。
「ほほう、お主の力は日常的には超便利そうじゃのう」
「それは普段使いしか使えないと言ってませんか」
「そうともいう」
この腐れジジイ。ほんといっぺん黙れ。
電波は来ている...が通話しようにも誰の番号も知らない。ネットワークは機能してるのだろうか。
「変なサイトは」
「見ない」
「少しくらい見てもバチは」
「見ません」
InternetExplorerはちゃんと機能している。
情報を取るならやはりネットの社会。文明バンザイ。変なのは見ませんよ。
「全世界ではまだこのような状況にはなっていないようです」
「どういうことじゃ?」
「まずインターネットが使えることがひとつ。そしてネットが使えるにも限らずここの状況がほぼ嘘だと伝わっていることです」
東京都では今は怪物たちに襲われている。
そう内部の人の投稿には書かれているが外からの投稿ではなぜか黒い霧がおおっているだけだと表記されている。
さらにはきりの内部は入ること能わず中からもでることはできない。
国防省はこの状況を『完全隔離都市東京都』と名称している。
どこのライトノベルだと凶弾されてるが現実に怪物がいるてん笑い事では済まない。
「とりあえず外は平気なようなのでこの国防省...いえ、国会議事堂にでも向かいましょうか」
今の状況なら市民の安全を守るために国民の偉い方のところに詰め寄ってる可能性はいなめない。
まぁその前に自衛隊などが怪物の相手になるかは不満後残るがそこは仕方ない。
「国会議事堂とな?」
「東京都千代田区にある建物ですよ。まさか日本の神様であって知らないと?」
「しっ知っておるともぉ」
本当かなぁ。なんかどもってるんだけど本当かな?
神様といえども知らないことなど沢山ある。忘れることだって多々ある。別に変な事じゃないし人間の体になった以上何かしらの影響もあるだろう。だから記憶力がいいからと忘れることもある。これは当然のことなのだから。
「それで向かうにしてもここからだとそれなりに遠いじゃろ」
「乗り物さえあれば移動は楽でしょうけど」
ここまで崩壊しといて交通機関は麻痺して当然しかり。もしかしたら取り残された人間はいるかもしれないがそれこそ望み薄。
この状況で1箇所にいて襲われない理由なんて存在しない。
最悪地図を手に入れないと国会議事堂へは向かえない。毎日見てた東京都だとしても細かいところまで覚えてないからだ。
しかもここまで様変わりしていれば何かしら目印になるものが欲しい。
探せど探せど方位がわからない。
「乗り物のぅ...作れるんじゃないかお主なら」
「作れはしますけど...地図が欲しいんです」
「作れるんじゃな、とりあえず千代田区は中央区に近いはずじゃろ。そこに向かっていけばなんとかなるのではないか?」
確かにドーム状に囲まれているなら真ん中に向かえば近づくことは出来る。
しかし危険にも近づくことになる。
それはどこにいても同じものだがより危険度が増す。
乗り物は無闇矢鱈に音を鳴り響かせるのだから無音なんて乗り物そうはない。
私が作れるのは乗用車、もしくは自動二輪程度なもの。それ以上は地図を各にも何もかもがなりない。そもそも絵が下手な私に設計図は本来難しい。スマホは絵を書くだけなら原理だけでいける。しかし中身がカスカスなのですぐ使えなくなるのは分かっていた。
それは今調べてたスマホの状況を確認した時にわかった。
壊れている。
やはり精密機械の設計図となるとかなりの技量が必要となりそうだ。
長時間は使えそうな乗り物は無理そう...。
「これでよいか」
だ?
えっ、なにこのひと設計図作ったの?
しかも事細かにパーツ一つ一つ丁寧に書いてたの?
一体いつの間に...でもこれならほぼ完癖なバイクができるだろうけど...。
「なぜこんなの書けるんです?」
「趣味じゃ」
はいそうですか。
明らかに趣味を超えた趣味に息を吐きながら私はトラップマスターを発動する。
この名前は間違いなく能力を誤解するものであることはわかり得るだろう。
私がそう付けたのだから仕方ない。
0~1を創造する。神ごとき力。トラップマスターなんて名前で収まるものでは無いのもわかってた。だから基本的には悪戯目的程度の用途しか使うことは無かったのだ。
「トラップマスターなんてほんと名前の方が負けてる不思議な力よのう」
「本当の名前はあなた以外の誰にも伝えてないのでそう言われますよね」
本当の名前は『データリアニメイト』
ツクヨミだけには特別に伝えたことがある私の能力の本名。
無から物体を作り出す力。
これにより知識と設計図さえ紙に書ければ発動した瞬間に現実に引き出せるというものだ。
使い所は難しいのが実のところネックだったりする。
で作られたものは...なんじゃこりゃ。
オートバイの中でアイコンとまで言われた有名なバイク。700CC以上のクルーザーバイク。
俗に言うハーレーダビッドソン。
少女が乗るものでは決してない。
なお二人乗りようにはなっているようであるが果たしてこれは乗りこなせるものなのか。
「おほぉ、すごいのぉ。わしの夢が完全再現じゃ」
喜ぶツクヨミ。いえいえ、喜んでいいのかわからないけど喜んでくれるのはありがとう。
何もわからず作るよりはるかにマシですし。
でも1度壁際に置いときますよっと。
「まだ発進させんのか」
「食料調達の件はすっぽ抜けてるんですか」
「おお、忘れとったわ」
本当中身おじいちゃんだわ。
幸い声出してても生き物は襲ってきていない。
この辺にはいないのかもしくはさっきので警戒されてるかどちらかでしょう。
久々の大地に足を踏みしめるもなんだが天界とは随分違うところに来たように感じた。
そもそも別の場所だからそう感じるのは無理もないこと。
「さて、別行動とやらが意味をなすかわからんがいいじゃろうて。慣らし運転でもしてくるぞい」と勝手にバイクに乗って街を走り抜けていく。
私もこの体の身体能力も確認したいし少し派手にやりますか。
「よっと」
軽く飛ぶ。
ジャンプするという行為なのだが3mほど上昇した。次に腕のしなり、足のしなり、体の柔らかさ。どれも平均以上のようだ。普通の人間からしたらかなりの身体能力でしょう。
ツクヨミのおじいさんは多分これ以上。
もしくは同じくらいのものを持ってるはずだ。
少しくらい無茶しても平気かもしれないけど先程みたいに囲まれたら生きていられる自信はない。
それほどまでに過酷なのだ今の世界は...。
証拠に人っ子が見られない。
いきなり現れていきなり襲われていきなり戦うことになる。そんなの誰が思ったか。
誰も思ってない。ファンタジーの世界に行きたいなど人間は思うだろうが主人公でもなければ蹂躙されるのが関の山。だいたい村人に戦力になれと言うのも無茶な話であろう。
「缶詰発見、肉と魚と野菜と...」
コンビニエンスストア廃墟にて缶詰を入手。
店員は...見るも無残。生きてると言われたらNOと呼べるほどに悲惨な姿だった。
これだけあれば大丈夫と缶詰を持ち運ぼうとするが布が欲しいところ。
手短なノートに手を伸ばし袋の絵を書く。
これには材質を少し書く程度のことしかない。
アラミド繊維くらいでいいだろうと能力を発動する。すっかり缶詰が入りそうな袋をGETした。
あとは...見つからないように移動するだけだけど。
この音とさらに追ってくる音。
間違いなくツクヨミ様だ。
「ツーリングにつきおうなら爪とか振りかざすでない。壊れるじゃろ」
「ちょっ」
コンビニの内側に隠れるように座ると風邪が吹き荒れてなおかつガラスの破片がやばいほど舞っていた。顔の横にビィーンと尖ったのが刺さったのはかなり恐怖でした。
しかしなんだあれは。大きすぎる。
普通に戦うことがどれほど無理か分かるほどのやつ。ふぅ...どうしよっかな。
缶詰をパカりとあけて流し込む。
これが人間の世界の味。お腹の中に食材が流れ力が湧いてくる。
なるほど、これが食べるということなのだろう。
お腹が脹れたからといってあれがどうにか出来ないとここから出られない。
音でわかるけど場所しか分からないし速度には追いつけない。
時間にして太陽が登ってきているか...。
ツクヨミ先生のチートはお休みの時間でもある。
だからバイクに乗って逃げている。
相手の格好は見えてない。見えてたら少しくらい何とかできる...ともう一度こちらに走ってきた。
今度はっきりと見えた。
先程相手にしていたやつとあまり変わらないが大きくなっただけだということ。
となると必要なものは足元を崩す何か。
もう一度ここに回ってきたのは偶然ではない。多分ツクヨミが私のこと見つけたからだ。
ならもう2度程はこっちに回ってくるはず。
そのあいだに解決策を出さないと...手に当たるものは...油と酒?
「バイクを犠牲にすればなんとか」
油と酒であれば相手の足の動きを止めることも可能。
こちらの移動も阻害されるが声をかければこっちにむかえるだろう。ならばやるべき事は...。
また書かせてもらいますね。
ニトログリセリンを元に作られたTNT。
爆弾を作り出し油の瓶をできるだけかきあつめる。
「そろそろ疲れてきたもんだね。まだかい」
私に間違いなく話しかけている。
化け物が通り過ぎ去ったあと油の入った瓶をぶちまける。アスファルト全体を覆うように液体は湖を作る。準備は整った。
数分後またこちらにきたツクヨミが意図を組んでバイクを動かしたままこちらにダイブ。
タイミングが少しズレたけど爆弾はしっかりと起動。大きな爆発音とともに燃え盛る化け物。
炎が苦手そうなタイプだと思ったけど大正解。
致命傷にはならなかったものの撃退には成功した。ただ火が収まるまでこちらも出れないし超暑い。
「なるほどの、火が苦手ときたか...わしのバイク」
「また作りますから...缶詰食べますか」
「もらおうかのう...開け方わからぬ」
自分の見てやろうと思わんのかこの幼女姿のジジイ。仕方なしにやり方を1回見せると「おお、今どきのはこうなっとるのか」とかもうジジイ丸出しです。爪楊枝を渡すと桃缶を頬張るジジイ。これが美少女だからまだ見れるけど本物のジジイならかなり苦しい絵面ですね。
さて、今ので撃退したとしてもまた大きな音を出せばまた来るだろうしどうしたものか...。
「夜まで待てばわしの力でどうにかなるがのう。さすがに潜伏し続けられるとは思っておらぬわ。一応戦えなくはないしの」
水や氷を操ってみせるが攻撃に回すほど使い慣れていない様子。まず戦いというものがなれてないから当然である。
ツクヨミがあの時瞬殺できたのは夜であったから。それ以上の理由はない。
「攻略するよりも逃げる方法を探さないと」
「あやつは火が苦手なんじゃろ?」
「だとしてもたいまつ程度じゃ怯まないと思いますよ」
あれほどの火だから逃げたのであって小さな火では歯牙にもかけないと思う。
一応とコンビニに置いてあった新しいキャンバスノートを渡す。来ましたとばかりに地道に書いている。...誰かほかに人はいないものか。
「生存者と能力しだいで簡単に抜けられそうな気がするんだけどなー」
「そんなすごいやつならもう移動しとるじゃろ」
ですよねー。
こんなところに来るはずもな「おっ、美少女発見。すげぇ音したから見に来たんだがお前達か」くもなかったようだ。
乱入してきた男は身長は高めでごついパーカーに穴あきジーパン。髪はブローしてあるのか後ろにバリバリに逆だっている。右手にはメリケンサック。左手にナイフと確実絶対な不良スタイルだった。
「よっと」不良はコンビニに割れた窓から飛び入った。普通に入らんのかい。
「俺の名前は知るはずもねぇだろうが一応言っておく『焔 鉄男(ほむら てつお)』正義を信条にするパンキングハイツの族長よ」
「ぱ、パンキングハイツ?」
なんですかその前時代的名前のやつは。
「パンキングハイツ知らねぇってことはここは初めてなのかよかぁっ、まぁそんなことはどうでもいい」彼はグイッと顔を近づけてこう言った「あいつを倒すのを手伝ってくれ」と。
正直渡りに船だがこの男は信用出来るのか。
「あいつっていうのはあのデカブツな」
「デカブツ...あの怪物ですか」
「そうだ。ていうかそこの嬢ちゃん生かしたバイク乗り回してたのを見てピンと来たのよ」
「はぐぅっ」
桃缶食べてたところにいきなり話題を振られたツクヨミが軽く喉をつまらせていた。
よく見れば2つほどまたあけられているがどんだけ好きなの甘いもの。
「なんじゃ、あのいかしたバイクがわかるのか」
「いいパンク具合だぜ嬢ちゃん。ところで嬢ちゃんたちの名前は聞いてないな」
聞かせてないからね。
「信頼するから名前くれぇ教えてくれ。俺っちだって仲間を殺された恨みをはらさなぁあかんからな」
真剣な顔になる焔。この人にもこの人なりの事情があるのだろう。
「リィンです。こっちはツクヨミ」
よろしくのぉとまだ頬張っているのが見えるので軽くスルー。もうこの人甘いもの食べてればいい疑惑すらある。
「んじゃ、アジトまで案内しちゃる。はよ食べい」
ツクヨミが食べ終わると移動を開始する。
まだ私たちが作った炎は健在であり少し遠回りする形になったが15分程でアジトとやらに着いた。
おしゃれなバーのような場所で人がなん10人もの人が入れそうな場所だった。
「よぉ、遅くなったな」
「おっ美女、遊んできたのか?」
「ちげぇよ、こいつらをパンキングハイツに入れようと思ってよ」なんですった。
「ええ、兄貴自ら勧誘するなんて聞いてないよ」
「私も聞いてませんよ」
「わしもじゃ」
「何この子達可愛すぎるんですけど」
出迎えてくれたのは焔の妹『焔 輝夜(ほむらかぐや)』とその舎弟。
なぜかその妹にハグされ頬を擦られている。
暑苦しい。
「でこの子達強いの?」と妹が聞くと「強いかわからんが機転が利く。遠目から見させてもらった」などと偉そうに答えた。
実際遠目出みていたのだろうけれどもそれなら助けてくれてもよかったのではないかと思っている。
「あのデカブツ...名称がないと面倒だな」
「なら『テスカトリポカ』とでも名付けておくか」
またなんつー仰々しい名前をつけるのかこの人はまったく。
しっくりくるのがまた腹立つ。
「余計ややこしくなったからデカブツでいいか。んでやつの根城だがここだと睨んでいる」
壊れる前の地形の地図を広げて指を指す。
地図があるのはこちらとして好都合なんで見させてもらうがあのでかいのが根城にしてるのは...新宿駅?
あの地下迷宮に住み着いてるって言うの。
「お前らあのバイクはまだあるか?」
「さぞ当然のように聞くけど持ち歩けるもんじゃないよ兄貴」
「そうだよな」と笑いこけてるところに「あるぞい」とツクヨミが1人ボソッと呟いて周りが驚く。
「あるってそりゃお前どこに」
「その画板じゃよ、ほれ見せてやれ」
キャンバスノートを見せる。
もちろんそこには設計図しか書かれてはいない。
「この絵が...まてよ、この絵のバイク先程見たような」
「こやつの力じゃよ。設計図を実体化できる」
「なにそれすごくない。兄貴のよか地味だけど」
「ちなみにわしは氷と水じゃ、信頼の証としてそちらの能力も教えて欲しいかのお」
焔はやはり自分で言った通りの正義を貫いたのかわかったと答えてまずは妹と舎弟の能力を伝えてきた。
妹の能力は、ホークアイ。遠いところを見れるだけとの事だがそれがこの状況でどれだけ大切わかっているのだろう。だからここから動いていない。
舎弟の能力は、『先を見ず、事をしれ』。
目を瞑っている間、無敵になりなにしても微動だにしないらしい。
試しにやってみてもらったのだけどツクヨミの氷を弾くあたり本当のことなのだろう。
少しでもあけると効果はなくなるそうで使い道がないらしい。
そして大詰めの焔の能力は...。
「見たとおりさ」
身体が燃ゆる。そう燃えている。
ただそれだけの力ではないことは明白。
さらに言えば普通の人間には発現するはずがない力だとするならば。
「精霊種に匹敵する力か。なら間違いなかろうな」
ツクヨミは間髪入れず焔を見る。
「お主、能力名や使い方が鮮明に浮かんだじゃろ」
「よくわかったな嬢ちゃん。他の奴らは朧気がいきなり能力がわかったやつばかりだ。てかやたら詳しいな」
怪しまれた。
当然こうなるのは予想済み。
なにせ普通はそうなってることを知る余地もないのは当然のこと。されど現実ではありえない能力を見せつけたこと。普段なら考えられないはずのことを連続して聞かされたこと。
まして能力なんておやふやなものを使えることを知ってること。
だから「私たちも鮮明に能力が頭に浮かんだ」としか言うすべはなかった。
しかし幸先いいのか悪いのか。
聖痕保持者かもしれない青年に出会うとはね。
それならば死なぬように手助けするのも一興というもの。逃げるより討伐を選んでも良い。
(ところでリィンよ)おっと念話ですか。
神様はこういうところ便利ですよね。
(なんでしょうツクヨミさん)
(炎の最上位能力はお主の方が詳しいじゃろ)
なるほどあれの正体を探れと...むちゃ言いますね。
まぁだいたい予想はついてます。
(多分ですが炎神呼応と呼ばれる能力です)
(マジで精霊種級の力かいの。下手すりゃ神さえ殺すぞ)
(基本、聖痕保持者であれば精霊種級の力を超えてる力を持つはずです。見つけやすいとは思いますが我の強い人間が選ばれてるはずです)
(なんとも先行き不安だがこのような若者も選ばれるなら希望くらいあるかもしれんの)
「よくわかった、お前らが不思議な奴らってこともだ。しかし敵ではねぇ。なら手を取り合ってもいいだろうよ」と握手を求める
「うむ、しかし一言いうておくぞ」ツクヨミは握手しながらもそう言ってこう告げる。
「わしらをおもちゃにするようなら全力で迎撃してやるからのぉ」
「怖ぇ嬢ちゃんだ。了解したぜ」
パンと手をはたくと共に神様と人間の一時的な同盟が結ばれた。
さてこれからことを構えるにあたって彼が聖痕保持者かはまだわからないが私たちが歪な力を感じてるということは間違いなくそうなのだ。
そうただ確証が得られないだけで本当なのだろう。
「まずやつの根城、新宿駅から呼び出す。その方法はお前らの作ったバイクになる」
「はい」「うい」
「陽動はお前ら2人と合わせて妹と舎弟が行う」
「ちょっぴ不安あるけどね」「頑張ろうぜ姉さん」
「そしてあいつは俺が叩き潰す」
作戦なんてとんでもない。
単純におびき出してそこを叩く。
シンプルにして明快な答えだった。
決行時刻はヒトフタマルマル。
12時ジャストとのこと。
ツクヨミの力は最大限に使うことは無いだろうけどいざとなれば私の奥の手を使うしかない。
ツクヨミが夜の支配者なら私は扉の守護者なのだから。
神としての権能は使えないけどそれに通ず力を1つくらい持ってる。
500年に一回コッキリの大技でもあるけどね。
これはラバルタスには教えていない本当の奥の手。そもそも1回使ったことがあるが正しく辺り一面が灰燼と化すほどの力がある。
この力だけは普段使い出来ないほどの難物。
だが相手も相手で普通の能力で倒しきれるかわからない相手。いざという時は躊躇うことはないとは思うが頭に入れておこう。
とりあえず私の能力を発動するための設計図をツクヨミに書いてもらう。
5枚ほど書いてもらいその中から2枚使う。
ストックある分だけいい。
私の力のデメリットはどれだけ鮮明な設計図であろうと40分程度で消えてしまう。
どんな力にもデメリットはあるものなのだ。
爆発系は特にデメリットなく使えるもののやはり持続時間がネックと言った所でしょうか。
ツクヨミが逃げてたあの時のは本当に時間ギリギリだったとも言えた。
そして刻限は来た。
場所は新宿駅。
私の能力使用2分後。
巨大なバイクが2台新宿駅前にエンジンを吹かす。
焔は例のコンビニ付近で待機していた。
通信手段はトランシーバー型の無線機。10キロ県内なら繋がるたいしたものだった。
『お前らポイントについたか』
『こちらパンキングハイツ組、OKだ』
「わしらの方も大丈夫じゃ」
『よし、んじゃ手はず通りにしてれば出てくるはずだ。陽動頼んだぜ』
『すなおに囮とおっしゃいなさい』
「役割的にはかなり危険な役なんだけどなぁ」
「もう作戦は始まっとるぞ。ノーヘル上等、さぁ来るぞい。絶望と希望のチョイスゲームじゃ」
バイクの駆動音が消えかけるほどの地響き。
新宿駅奥深くからものすごい勢いで駆け上がってくる。
「さぁ、2度目じゃ。吹かすぞ、わしの体に掴まれ」
『くれぐれも俺たちを抜かすなよ』
「それくらいわかっとるよい、来るぞ」
走り出す焔の妹たちのバイク。
その直後後ろに威圧感が生まれる。
正しくデカブツ。正しく神を殺そうという化け物の姿。テスカトリポカ。名前負けはどうやらしなさそうである。
高さは2mくらい、全長なら8mを思わせる。
顔はライオン、体は象、尻尾は豹。
出逢えば死を彷彿させるその体はこちらを見ている。続いてこちらのバイクが動き出す。
テスカトリポカは動きが遅いわけではない。しかし特別早い訳では無い。だがその全長の長さのおかげで少し走るだけで5mは踏みしめることが出来る。加えてこちらは大型バイクだがテスカトリポカに比べて速度は早いものの陽動のため速度自体は出せない。
当たれば即死、事故れば万事休す。
まさしくチェイスゲーム。
『ここは右だ』
「右じゃなっ!!!」
「いきなり横に降らないでくださぁい」
前方にいる妹たちからの指示によって生物のいないルートを選んで進んでいる。
だからこそ問題なく進むことも出来ているのだがさすがに追いつかれて来てしまった。
反撃は...無駄っぽいけどやるしかないか。
「なんぞ考えてるか分からんが反撃はするな、これ以上怒らせると面倒になりそうだ」
あっそう。
何もやるなとかそういうことですか。
ふぅ、なんかそこら辺すごい壊れてるのか流し目で見てればいいんですかね。
ってちょ。
「ツクヨミ様なんか相手と近すぎませんかっ!」
「煽らないとは言ってない」
「こんのアホ神様がぁっ」
頭上にテスカトリポカの足が...あー、なんでこんな人がパートナーなんでしょうか。
いやもうパートナー変えたいです割とマジで。
ほら走馬灯も...ドズン。
見えてきましたよ。
『コンビニまであと5分程度だけどそっちは平気』
「わしは平気じゃ」
私は平気じゃないですけどね。
「そんじゃ、そろそろ真面目にやるかの」
『真面目じゃなかったのかお嬢さん』
「本当にそうですよ。何度心臓止まるかと」
「いいぞ、わしの評価は下がっとるかの。できないことは出来ない。出来ることは出来るのは人間も神様も変わらんからな」
...この神様は全くもう自由気ままなんですから。
この世界での私の力は確かにできないことだらけ。ならばやれる時にやるしかない。
煽っていたのは前に気遣っての事だったのだろう。多分本音が真っ直ぐに言えない人なだけなのだ。そう信じることしか出来ないけど私が今やるべき事は...多分まもなくやってくる。
『コンビニまであと30秒、一緒にあいつを抜くぞ』
「おっけい、あとは任せたぜ...ボス様」
『おうよ、一撃で決めてやらぁ』
バイクが2台、仁王立ちする男の傍を通過する。
仁王立ちしている男は焔鉄男。その姿はまさに炎。全てをやき尽くさんとばかりに燃え上がっている。テスカトリポカはその炎の人間に向けて足を振り下ろす。
「この足が部下を殺したのか」
そして男にしっかりとテスカトリポカの足は踏み砕いた...ということは無かった。
焔はその足をまるでボールを投げるように反らす。テスカトリポカは自分の方が優位のはずなのに何故こんなことになっているのか理解ができていない。
「ほほう、あの小僧。やりおるの」
遠くまで来た私達は荒ぶる焔を見て炎神呼応と呼ぶにふさわしい能力を見せつけられた気がした。
圧倒的な火力、熱量により熱気で逸らしたのだ。
「お前にふさわしい一撃を御見舞してやる。これが仲間への弔いの一撃だ」
さらに膨らむ熱量。もう近づくのさえ熱い。
だがそれでテスカトリポカを倒せるかと言われれば不安しかない。
大ダメージを与えることは出来るだろうが予想だけどなにか隠している。
これで終われば万事問題なし。
もし終わらなければアレをやるしかない。
「どっせぇい」
かの一撃がテスカトリポカの顔に直撃する。
その威力は、当たり前のごとく非常識。
熱風はこちらまで届きテスカトリポカの顔は火事でも起きたかのように燃え盛っている。
...だがそれだけにすぎない。
正直に言ってまずい。
怒りを買うだけの結果になったのだから。
「ぐうっ、この体でも相当くらうか」
炎神呼応と呼ぶ能力はどうやら体すら炎に変える力のようで物理的な攻撃は通っていない。
しかしそれでもダメージというものは存在しているのだろうか苦虫を噛み潰したような顔をしている。やはり神様の能力と違いデメリットが大きく出ているということなのだろう。
私の知っている炎神呼応はその程度で苦痛は感じないのだから。
「兄貴、兄貴、兄貴」
何度も何度も足で踏み潰される焔に妹が声をかけ続ける。涙目だ。こんなことになっていれば当然だがもう見てはいられない。
「私の奥の手を使います。ツクヨミ様はここにいてください」
「そんなものがお主にもあったのか。他の奴らもオドオドしとるし仕方なしかの。だがひとつ言うておくぞ」
ビシッと私にツクヨミ様がこう断言する。
「強き力ならそれなりのことは覚悟しとるのよな」
「ええ、長い間使えなくなろうとも今ここで使うべきだと判断しました」後悔なんてしない。
いえ、このままでいる方が後悔するから。
「ならばゆくがよい。お主の力しかと見ようぞ」
私はバイクから降りて焔に向かって走り出す。
焔も体力の限界が近いだろう。
巻き込んだらやばいけどすぐ逃げてくれることを祈るばかりである。
焔から場所において数10m。
私の安全圏からはここからしか発動できない。
「焔さんっ!」
「なんだぁっ!」
「急いで後ろに退避してください」
私は私由来の力を呼び起こす。
体は熱く、心は冷気に充ちる。
ここより起こるは殺戮なり。
「『粛清する戦乙女(ジャッジメントヴァルキュリア)』」
声とともに大きな扉が現れる。
装飾は優美で可憐、美しさに溢れている。
だがその実残酷なものの表現でもある。
その扉はテスカトリポカの攻撃をものともしない。それほどまでの頑丈さだ。
ガゴン。
扉は、開かれる。
その際真横から「なんとかしろよおめぇ」と駆け抜けていく焔。
さて、ここからは蹂躙しかありえませんよ。
扉から出は可憐な戦乙女。純白のドレスに似た鎧、宝石が煌びやかに彩られた純白の剣。優しそうな顔。だが決して地上のものでは放つことの無い圧を周辺に浴びせる。
これは私ですら例外ではない。
人間の体になったことで嫌になってくるほどの存在感。私が操る力の大きさが身に染みて理解出来る。ツクヨミ様もこのように感じていたのだろうか。いやあれとは異質。完璧に異質。こっちが飲み込まれそうだ。
「ぐぎぎぎ、長くは持ちませんか」
自分でもわかる。活動限界は1分と無いことを。
だからこそ秒で決める。
力を込めて私は叫ぶ。
「きり、きざめっ!」
戦乙女はものすごい勢いで剣を振るいテスカトリポカを切り刻む。圧倒的、圧倒的すぎる力。
期間限定かつ大量の体力を持っていかれるのだからこれくらいしてくれないと困る。
再生能力もあるのかすごい勢いで回復していく。
そんなもの無視して砕いてしまえ。
そのように考えた時テスカトリポカの動きが止まった。再生限界を超えたのだ。
テスカトリポカは倒れふしさらさらと灰になっていく。
やった...やったぞ。
大の字で仰向けに倒れた。勝った。勝ちましたよ。
「おい、動けるかお前」
「動けそうにないですね...たはは」
「しかたのうやつじゃの。今回のMVPお主じゃ捕まれ。...少し重いの」
余計なお世話。
ツクヨミ様におんぶされ焔たちと共にアジトに戻ることになった。
その間に大分反動がなくなり体を自由に動かせるようにはなったがまだ全快という訳にはいかなそうである。久しぶりではなくこの体で使ったからこその反動であろうがここまで来るとは思いもしなかった。
「とりあえず助かったわ。お前さんらには仮1だな」と焔はダレながらソファーに座る。
あの力も相当消費するようでまともに動いている様子はない。
むしろ私と同レベルで疲れてるようだ。
やはり人間の体で強い力を使うと無理があるようだ。勉強になった。
「あれだけのデカブツ仕留めるのに怪我人1人いないっつーのが奇跡っすね」
「そうよね、私も死ぬかと思ったもの」
2人も愚痴る。
実際私があの場であの力を使わなければ彼らは全滅してたに違いない。
少なくとも無傷であるはずは絶対になかった。
.........そう彼らの命を紛れもなく救ったのだ。
「ところで汗だくなんじゃが...シャワー?とかは借りれんかの」ツクヨミ様がパタパタと衣服をはためかせる。妙に艶があるが実際の中身はおっさんである。断じて中身はおっさんである。
まぁこの発言もあってシャワーとお風呂を借りることが出来たのは僥倖である。グッジョブ。
「これがお風呂というものか...極楽じゃの」
「ツクヨミ様シャワーで洗って入りましたか?」
「一応は水で洗い流してから入ったわい。人間というのはこういう発明するからにくいの」
天界ではお風呂なんてなかった。
あったのはリフレッシュルームとかいう謎の綺麗にする部屋のみだった。
だからこそこのようにゆったりすることは無かった。にしてもツクヨミ様がシャワーの存在知っていたとは知らなかった。
「ところでリィン。お主、体の方は平気か?」
「平気ですよ。とりあえずは...が付きますが」
天界で1度使った時にはあまり反動はなかった。
だからこそ油断していたのもあるがあれほど吸われるとは思いもしなかった。
さらに言えば人間と能力の関係性も見えてきた。
人間の能力は強ければ強いほどデメリットが高く設定されているのと一人一つしか持てないというものがあるようだった。
これを個性と言えばとある漫画のようだがそんなに幅広く使えるものでもない。
確実にデメリットが存在しなおかつそれを理解した上での有効活用が求められるのだ。
粛清する戦乙女...ジャッジメントヴァルキュリアですら本来の力を発揮するのに私の力を激しく吸ったのだから。
何かしらの制約が私たちにも課せられたのだろうと考えられた。
この世界は間違いなく塗り替えられた。
この私とその弟の手によって。
弟は世界を、私は人間という種族を変えた。
これの意味することは世界の変動。
終わりと始まりの神々の創造。
もう全ては回り始めてしまった。
「考えても仕方あるまい...ところでわしと風呂に入っておるが恥ずかしくはないのか」
「今は女性同士です。中身がおっさんとはいえ別々に入ったら怪しまれるですし」
「なるほどのぉ...えいや」
「ひゃん」
お風呂からいきなり飛び出してきたツクヨミ様は私の胸に一直線に手を伸ばしこねくり回してきた。「ほほう中々のさわり心地よのう」とオヤジ臭いが見た目女子なので違和感が仕事をしない。
いや、ほんとちょっと感じてなんていませんからぁっ!
「や、こら、本当におこりま...あぁ」
「感度も素晴らしい。どれこっちは...」
「させるわけないでしょうが」
「うわっと危ない。女子のスキンシップとはこういうものでは無いのかえ」
「物事には順序と限度がありますのでっ」
「仕方ないの。ではわしはもう出るぞい」
「待った」ツクヨミ様の腕をガシッと掴む。
この人は頭も洗わないでお風呂から出ようというのかこの不精娘。
「あのぉ、目が怖いのじゃが...じゃがぁっ!」
体全体を私自らの手で綺麗にした。
女の子になってまでそんなことは許しません。
こうして綺麗になった私たちはお風呂から出ました。結構ツクヨミ様が暴れ回ってくれたので疲れもしました。
髪の毛なんぞ洗わなくてもいいじゃろとかいうのは本当にキレかけましたけどね。
「服のサイズはあっているようだな...元の服来てるのかよ。無駄に綺麗だが」
「洗濯のようなことはわしが出来るのでご心配泣くじゃ」
これはお風呂入る前にツクヨミ様がしたことである。水の力で速攻で濯いだ後で水を服から弾き飛ばすという洗濯機顔負けのお仕事をしていたからなのだがなぜ自分の体にたいしては不精なのか不思議でならない。
「さてと...お前達はどうするつもりじゃ」
ツクヨミ様は焔たちに問いかける。
焔たちはここでもう少し過ごすようだ。
慣れてる場所の方がいいのもあるのだろうが結構な胆力がある。
話はまとまり旅支度。と言ってもあまり荷物はない。あるとしたら缶詰くらいだ。
「お世話になりました」
「俺たちの方が世話になりっぱなしさ。今度あの力について詳しく教えてくれよ」
「またお互いに生きていればの。そのような話もよかろうて」
ちげぇねぇと焔が苦笑する。
私はベージを切り取り大型バイクを作り出す。
2人して乗り込みエンジンを吹かした。
さぁ目指そう。人が集まりし場所へ。
「そういえば7人いる聖痕保持者か聞きそびれたの」
「今更かいっ!」
そしてこの後、英雄候補と出会う。
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