森人の焔

魚犬

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十一話

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 明後日になったら私は消える。
 私の名前は、ミカルス・アン。ミルタナとダルドの子。
 獣を数多く殺し、何十もの人を困らせた悪い子。
 酷い子。最低だ。
 そんな私に明るい太陽が起こしに来た。
 こんな私に暖かく心地いいそよ風が私を撫でて来た。
 そして、そんなでこんなな私の目の前に、知らない頭蓋骨が二つ置かれていた。
 泣きじゃくる。
 涙腺が切れるくらいに。
 怒りと悲しみを表すくらいに。
 落涙が私を締め付ける大木を腐らすくらいに。
 涙が、…………………止まらない。

「やぁ! 一つ質問をしていいかな?」
「…………」

 陽気な笑顔で声をかける白いローブを着こなす人。フードを深く被って口元しか見えないが、声からして男性だとわかる。身長は私とほぼ同じくらいだろう。
 質問? こんな惨めな私から何を聞くつもりだ?

「君は如何して泣いているんだい?」
「…………明後日、には。記憶を、消される……」
「ふむふむ。では、消されたくない記憶を消されるのが嫌で泣いているんだね?」

 私はこくりと頷くと、彼はなるほどと言って芝生に座る。

「では、何故こんな大木で巻き付けられているんだい?」
「わ、私が、村の人達に迷惑を、かけたから」
「悪さをして、こんな大袈裟な事までして君を捕まえたんだね。村の人達は………」

 此れも頷くと、まるで“さいゆうき”だなと言い、彼は二つの頭蓋骨を拾う。

「では此れはなんだい?」
「私の、親」
「ほう。して名前は?」
「母はミルタナ。父はダルド………」
「良い名前だ。それで君の名前は?」
「ミカルス・アン」

 彼笑顔のまま、黙って私に近づき囁きかける。

「君は素直な子だから、教えてあげる。今日は最高の日だよ!」

 そう言うと、彼は二人の頭を持ったまま煙の様に消えて行った。

 …………その夜。空腹で飢えた私の前に、二人目の来客が来た。
 彼は燃えて居て、私の方に近寄り、手を伸ばす。
 何故燃えているのかはわからないが、其奴は確かに、人間ではない何かだった。
 痩せすぎた細い人間の身体から、蝙蝠の様な翼を背中から生やし。手には鋭い爪、口には牙、尻尾まである。此れは童話でよく見かけるあいつだ。

「悪魔………」

 赤く炎に染め上がる悪魔は私の所まで来ると、にっこりと微笑む其奴は、風船の様に膨らみ上がると。

 パァン!!

 風船の破裂音がすると、燃える肉片が彼方此方に飛び散ると。

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!」

 肉や骨や血などが私の体に付着して、酷く火傷を負う。身体が焼けて痛い。苦しい。
 思考は早く火を消したいで一杯だった。然し手は、足は、動か………。
 ドサっと倒れて感じる。あの芝生の心地よさが。背後を見ると、締め付けて居た大木が、先程の炎が燃え移ったお陰で解放されたのだ。
 そうと決まれば、やることは一つ。
 何か食べたい、早く火を消したいと思っていた事が嘘の様に頭から消える。

「一秒でも早く。奴らの殺す………」

 炭付いた焦げた服。多少の穴があるが気にしてられない。武器はないが関係ない。体が火傷で痛むが関係ない。
 私の目には彼等は森人ではなく、唯の人殺しでしか映らない。
 そう、私だけが森人なんだ。
 だから、此の怒りを、悲しみを、幸せを奪った罪人共に復讐してやる!!

「父さん、母さん、私は戦います」

 何故なら私は森人だから。森人同士を傷つける彼等は、もう森人ではないから。
 だから、

「見守って下さい」
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