俺はいつも拾われている

つちやながる

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未来へと歩む道

2、俺、酔っぱらう

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町外れの山間部に入る手前の道には興奮した馬に倒れた箱馬車、部品が散乱していた。
顔に擦過傷を負った馭者が座り込んでいた。

館のある帝国領フストを発ち、次の街へ向かう丘越えの道中の出来事だった。

「あぁ、あなた方も無事でしたか」
「何があった。怪我は」
「道に穴があって避けきれなかったんです。私は打ち身くらいで済みましたかねえ」

馬車箱から出たフィルが馭者の怪我を確認しようと近付いた時だった。

「あんたら動くなよ!おい、荷をバラせ!」「む?!」
「レオ!」

レオは背後から口を塞がれた。
見ればフィル達をどこからか現れた二人の男が短剣を手に囲んでいた。そして馭者ともう一人同乗していた夫婦の夫が恫喝していた。

えーと。目の前に刃物?

「あんたも動くんじゃないよ。貰うもの貰ったら命は取りはしないわ。あー、ほんっと馬車が倒れるなんて予定外だわ!」

この声は奥さんだよね。
これって盗賊ですか?皆グルなんだ。
予定外ってこっちの台詞なんだけど。
馬車はこの人達の仕業という事デスカ。

馬車を見ると箱が倒れた近くに穴が見えた。
人為的な落とし穴の様だった。馬車輪が入らず掠めただけでもバランスを崩し横倒しになったとわかる。

てゆか、わざわざ同乗して荷を狙うって効率悪くないデスカ。この盗賊達これで儲けれるんデスカ。同乗は客を品定めしてるって事?まあどうでもいい事かな。

旅に出た初日からこれ。先が思いやられる。
フィルの血で体は多少スッキリしてきたけど頭はぼーっと霞ががってる。怠い。怠いな。

フィル。

フィル、これどうする?
大人しくしてたらいい?

フィルの方を見ると視線を合わせてくれた。
優しく微笑して頷いたのが見えた。あれは余裕の表情だとわかる。

任せろって事か、じっとしてろって事かな。目で合図されてもテレパシストじゃないから予想しかできないよ。
そういえば。さっき俺、フィル舐めちゃったな。血は甘かったなあ。

体調不良で気も漫ろなのか、レオは全く現状を気にしていなかった。ぼんやりした頭では現実味が余り感じられなかった。

「早くしなよ!」
「何だよ!服しか入ってないのか!?」
「金は何処だ!有り金全部出せ!」

男達はアンフィルの荷を出しても日用品しか出てこない事に怒り心頭になった様だ。走り寄りアンフィルの胸ぐらを掴みあげた。

「出せ。かなりいいナリだからな。貴族さんだろ、たんまり持ってんだろ!」
「汚い手で触るな」
「ああ?」
「汚い手で俺に触らないでくれるか」

フィルはニヤリと笑む。手をスッと振り翳せばその男は無言でその場に崩れ落ちた。

「な、なんだ?!どうした!」
「てめえ魔力持ちか!」

あ。なんか術使った?

帝国人が皆魔法を使えるわけじゃないんだ。よくて生活魔法、よくてルースの様な医術師になれる魔力持ちがいる。フィルはその魔力を使わないけど力は絶大らしい。転生して魔法も色々見たけど無詠唱なんて初めてだよ。魔人族の祖の血脈で、何の力も無い俺から見れば血も吸うし、異名は大魔王フィルかな。

俺って大魔王の執事で恋人。

レオは怠さとぼんやりした頭で考えた事が可笑しくて、無意識に声に出して笑っていた。

「ふふっ」
「な、なに笑ってんのよ!こっちは人質がいるのよ!さっさと出しなさい!」
「そうだ!寄こせ!」
「金は持ち歩かないな。そのレオがオヤツ代くらいは持っているだろう」

アンフィルの言う事は盗賊達を逆上させた。一斉に男達は襲いかかる。

「クソッ!やっちまえ!」
「ああっもう!あんたも出しなさい!」

女も持ち金を出せと、レオにナイフを突き付けた。

「……えー、俺の?」

ズボンのポケットから財布を出すと、素早く奪った女は一目散に走り出したと思えばその場に崩れ落ちた。

振り返ると男達も既に同様だった。
その場で立っているのはレオとアンフィルだけ。お互いが歩み寄り、そっと寄り添う。

「……フィル」
「レオ、大丈夫だな。盗賊は気絶させた」
「有難う、魔王さま」
「……何だって?」
「あはは」
「レオ?」

そう言えばナイフを突き付けられていても、レオはにこにこしていたが、どうしたんだ?血抜きで体調不良でも全身怠くなるだけだ。俺の場合は眠気もあるがレオはどうなんだ?
さっき俺の血を舐めた。少しはマシになったと言っていた。この状態はどう説明できる。
まるで酒を飲んだ時の機嫌のいいレオだ。

……酒を?俺の血で?

「……まさかな。レオ、酔っ払ってるか」
「えー、お酒飲んで無い」

それでも、ふふっと楽しそうに笑いフィルにぎゅうっと抱きついた。

汗も涙も精液も尿も、すべて血液からできているが、これはどういう事だ?俺の血を口にしたのはレオは初めてだし、俺も人に初めて与えた。眷属か主従になるのか?それさえも不明だ。長寿になれるかもとレオは言ったがそれも不確かだ。

「レオ」

アンフィルは、ぎゅうと抱きつくレオの可愛さに満足しながらも旅の目的を考えていた。
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