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らああぁ!!
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ああああぁ!!
クソ、クソ!イライラする。
無事グルガナの霧の森に転移されましたよ!
呆気なく帰れて感激、涙もひとしお。
どれだけこの静閑とか閑雅と言える霧の森が恋しかったか。お家に無事着きました!召喚された時のように気がついたらココにいるわけだ。ちょっと森の端だったからプーくわえて走ったけどな。
されど住処のこの森は魔物の巣窟で、俺は獣で魔獣だ。獣には縄張り争いがある。俺のいない間に予想通り角熊獣が界隈のトップになって人ん家の洞窟に住み着いてた。
犬の姿でいる必要も無い。人の世界で人のルールに振り回されることも無い。黒鉄魔狼として雄々しく帰宅した知らせとばかりに遠吠えをした。
オオオーーン!!
森に反響する遠吠えに慌てて飛び出て来たから、らああぁ!!と、けちょんけちょんにして追い出した。体格良くて強いけど知能が微妙なただの頭角がある属性土の五メートル級の熊だ。しかも今は魔力っぽいのが見える。雑魚だカスだ。力だけの魔物に俺が負けるはずもない。プーは初めて見たからあまりの大きさに驚いたのかぷるぷる震えてた。決して俺の暴虐さにビビったのではない、はずだ。
「臭い。臭すぎる。プーは臭くないのか」
ぽんっ
なぜか人に擬態したプー。首を傾げて鼻をつまんで手を振った。ナイナイってか?
「なんだ嗅覚が無いのか、…弱いのか」
弱いの所でぶんぶん頭を振った。羨ましい。俺にはここまで臭いが染み付いてはもうダメだった。忌々しいとはこの事だ。イライラもするわけだ。住処を新しく作るしかない。
毛がむんずと引っ張られた。なんだ…。
見るとプーがまたよじよじ俺に登っていた。
頭から首のあたりに跨っては、べたーっと引っ付くと満足したらしい。本来の魔狼の大きさは毛を掴んだだけで安定感あるみたいだった。
「プーはそこ好きだな。よく分からん奴だ。まあいい、しっかり掴まってろよ」
魔狼は黒鉄を割く爪で嫌な臭いの住処の岩を崩して洞窟を埋め、少し離れた岩場に新しい住処を作り始めた。
「なんで人なんだ。森はあぶないぞ?」
まあ、子犬でチョロチョロしても危ないか。
プーは霧の森の薄暗さが丁度いいらしく霧の水分も身体が勝手に吸収して食事になってるらしい。人の姿で俺の側にいてゴロゴロしたりよじ登ったり、兎に角狩り以外は常に一緒にいる事になった。
俺ほんと子持ちになった様だ。まあ話さないし鳴かないし獣で話が通じるから鬱陶しくも無い。食べて寝て、プーで癒され和んで獣でいれる穏やかな毎日が戻ってきた。
ん?癒されて?和んで?…何か引っかかったが気にもしなかった。
これまでは獣で美味い肉なら何でもその日狩れるものを食事としていた。大きな熊や獣が近くに居なければ生息の多い野うさぎを食べる。しかしだ。
「おい、プー。それは俺のご飯だ。わかるか、生きる糧だ。食物連鎖なんだから離せ、返せ」
野うさぎを数羽バリボリ食べて満腹になり、まだ息のある瀕死の野うさぎは鮮度がいから後で食べようと持ち帰った。プーは焦った顔になり俺をベシベシ叩き出した。なんだなんだ?終いには「めっ」という顔か明らかに怒っている顔をして野うさぎを抱え込んだ。
プーはふわふわとあの光球虫の淡い光を指先に出し、抱え込んだ野うさぎに撫でつけた。その途端瀕死だったのが嘘のようにピョンピョン飛び跳ね始め、俺を見ては猛ダッシュで住処から飛び出していった。
「あ?」
まさか治癒術?
「おい、俺の飯なんだが。何してくれんだ」
プーを睨むと、にぱっ、と笑顔で返された。
「どーいう意味なんだ、そこで笑うとこ違うだろ。怒ったんだぞ俺は。いいか、いくらかわいそうと思っても食べるためには何かが常に犠牲になってんだ。プーは水しか食べないのか。そりゃわからないよな」
はっと息を吐き小馬鹿にした様に嫌味っぽく言ってみたが、それもにぱっと笑われた。
???
何回か同じ事を繰り返し怒ってもにこにこするプー。俺は脳内でカウンター越しに「お持ち帰りですか?」と毎度問われたが結局持ち帰りを諦めた。
そして、きゃっきゃっ!と言わんばかりの声が聞こえて来そうな笑顔で追いかけっこして走り回ってるプーに友達が出来た。
・・・野うさぎどもだ。
っらああぁ!何なんだ!何なんだよ。住処の前がキッズコーナーになってんだ。俺の食料がぴょんぴょん跳ね回ってるんだ。クソ、クソ、目の毒だ。何かしたらプーが怒るし手出し出来ない事を、うさぎも判るのか伏せって半目でイラッとしてる俺の目の前まで跳ねてくる。
・・・イラッと来るけど何だ。癒される。
何なんだ。
クソ、クソ!イライラする。
無事グルガナの霧の森に転移されましたよ!
呆気なく帰れて感激、涙もひとしお。
どれだけこの静閑とか閑雅と言える霧の森が恋しかったか。お家に無事着きました!召喚された時のように気がついたらココにいるわけだ。ちょっと森の端だったからプーくわえて走ったけどな。
されど住処のこの森は魔物の巣窟で、俺は獣で魔獣だ。獣には縄張り争いがある。俺のいない間に予想通り角熊獣が界隈のトップになって人ん家の洞窟に住み着いてた。
犬の姿でいる必要も無い。人の世界で人のルールに振り回されることも無い。黒鉄魔狼として雄々しく帰宅した知らせとばかりに遠吠えをした。
オオオーーン!!
森に反響する遠吠えに慌てて飛び出て来たから、らああぁ!!と、けちょんけちょんにして追い出した。体格良くて強いけど知能が微妙なただの頭角がある属性土の五メートル級の熊だ。しかも今は魔力っぽいのが見える。雑魚だカスだ。力だけの魔物に俺が負けるはずもない。プーは初めて見たからあまりの大きさに驚いたのかぷるぷる震えてた。決して俺の暴虐さにビビったのではない、はずだ。
「臭い。臭すぎる。プーは臭くないのか」
ぽんっ
なぜか人に擬態したプー。首を傾げて鼻をつまんで手を振った。ナイナイってか?
「なんだ嗅覚が無いのか、…弱いのか」
弱いの所でぶんぶん頭を振った。羨ましい。俺にはここまで臭いが染み付いてはもうダメだった。忌々しいとはこの事だ。イライラもするわけだ。住処を新しく作るしかない。
毛がむんずと引っ張られた。なんだ…。
見るとプーがまたよじよじ俺に登っていた。
頭から首のあたりに跨っては、べたーっと引っ付くと満足したらしい。本来の魔狼の大きさは毛を掴んだだけで安定感あるみたいだった。
「プーはそこ好きだな。よく分からん奴だ。まあいい、しっかり掴まってろよ」
魔狼は黒鉄を割く爪で嫌な臭いの住処の岩を崩して洞窟を埋め、少し離れた岩場に新しい住処を作り始めた。
「なんで人なんだ。森はあぶないぞ?」
まあ、子犬でチョロチョロしても危ないか。
プーは霧の森の薄暗さが丁度いいらしく霧の水分も身体が勝手に吸収して食事になってるらしい。人の姿で俺の側にいてゴロゴロしたりよじ登ったり、兎に角狩り以外は常に一緒にいる事になった。
俺ほんと子持ちになった様だ。まあ話さないし鳴かないし獣で話が通じるから鬱陶しくも無い。食べて寝て、プーで癒され和んで獣でいれる穏やかな毎日が戻ってきた。
ん?癒されて?和んで?…何か引っかかったが気にもしなかった。
これまでは獣で美味い肉なら何でもその日狩れるものを食事としていた。大きな熊や獣が近くに居なければ生息の多い野うさぎを食べる。しかしだ。
「おい、プー。それは俺のご飯だ。わかるか、生きる糧だ。食物連鎖なんだから離せ、返せ」
野うさぎを数羽バリボリ食べて満腹になり、まだ息のある瀕死の野うさぎは鮮度がいから後で食べようと持ち帰った。プーは焦った顔になり俺をベシベシ叩き出した。なんだなんだ?終いには「めっ」という顔か明らかに怒っている顔をして野うさぎを抱え込んだ。
プーはふわふわとあの光球虫の淡い光を指先に出し、抱え込んだ野うさぎに撫でつけた。その途端瀕死だったのが嘘のようにピョンピョン飛び跳ね始め、俺を見ては猛ダッシュで住処から飛び出していった。
「あ?」
まさか治癒術?
「おい、俺の飯なんだが。何してくれんだ」
プーを睨むと、にぱっ、と笑顔で返された。
「どーいう意味なんだ、そこで笑うとこ違うだろ。怒ったんだぞ俺は。いいか、いくらかわいそうと思っても食べるためには何かが常に犠牲になってんだ。プーは水しか食べないのか。そりゃわからないよな」
はっと息を吐き小馬鹿にした様に嫌味っぽく言ってみたが、それもにぱっと笑われた。
???
何回か同じ事を繰り返し怒ってもにこにこするプー。俺は脳内でカウンター越しに「お持ち帰りですか?」と毎度問われたが結局持ち帰りを諦めた。
そして、きゃっきゃっ!と言わんばかりの声が聞こえて来そうな笑顔で追いかけっこして走り回ってるプーに友達が出来た。
・・・野うさぎどもだ。
っらああぁ!何なんだ!何なんだよ。住処の前がキッズコーナーになってんだ。俺の食料がぴょんぴょん跳ね回ってるんだ。クソ、クソ、目の毒だ。何かしたらプーが怒るし手出し出来ない事を、うさぎも判るのか伏せって半目でイラッとしてる俺の目の前まで跳ねてくる。
・・・イラッと来るけど何だ。癒される。
何なんだ。
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