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13 きょうだい
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「モルちゃん、沢山いいお洋服預かってるのに着ないの勿体無いわ。アルノが魔獣も気に入ってるけど人の姿で過ごせないかしら」
(……服のために?)
黒い魔獣の姿で半目でぼーっとしていると、ミルシェは腹黒い笑みを浮かべた。
「モルちゃん。庭に置物に、ベッド下の板にアルノと仲良く悪戯して落書きや破損行為は困るのよ?歳は百歳以上って本当なの?精神年齢がお子様ならそれなりの姿で大人しく子供らしく過ごして欲しいのよねぇ」
ふふっと微笑まれ、感覚が無いのに冷気を感じた気がしたモルはゾワゾワして震えた。
瞬時に人化して用意されてた服を触手でバッと掴み走って隣部屋に逃げた。
「あら?」
(ま、魔法使いママン、こわっ!)
服を見ると懐かしいポンチョだった。紺色に裾近くに金糸の刺繍が入ったそれを、もそもそと被り着る。大きめで膝近くまであるからガナーチとも言えた。
「モルちゃん、ズボンはー?」
ひょこっと覗き見るとひらひらと半ズボンを振るミルシェが不思議そうな顔をしていた。
(……やっぱり俺、服きらい)
魔狼と大人の姿で過ごす時は街に居て外出もしたからきちっと着込んでたけど、ここは家の中で姿も子供だ。着衣の必要性を感じなかった。
高級志向の魔狼は人でいる時は貴族様のような贅沢な暮らしをする事に驚き、服も調度品にもおたおたして暮らす俺をニヤニヤして楽しんでた事を思い出す。
魔狼がいない寂しさに胸が空く感じがした。プイッとしてアルノのいる部屋に向かう。
(どうせ俺はいつまでもお子様だよ)
アルノは午前中のこの時間は習い事で家庭教師と勉強中だった。騎士や軍関係の学校はあるのに子供の本格的な学舎は大都市にしか無いらしい。
「よく出来ました。ちゃんと覚えたわね。エライわね、アルノ君」
部屋の前から覗き見ると遊ぶ時とは違う真剣な顔したアルノが書取りをしていた。
(……なんだ。真面目な子じゃないか)
魔狼から預かってるということは、俺が何かしたらブロニーにも迷惑が掛かる。
迎えに来るのを待つしかなかった。
ひとりの時間はミルシェの家事の手伝いを気紛れにしてみたり、居心地のいい影の場所を家の中で探す事にした。
居間のソファの後ろは壁との距離が絶妙で陽当たりもなく最高の場所だった。
ギルドから持ってきた地図本を広げてごろごろするとソファの下から見える向こうのチェスト下に何かがあるのがわかる。暗闇の中も能力でよく見えた。
少し遠いけどモルは触手を伸ばして掴み取ってみる。埃を被ってたそれは花の形の装飾品だった。
(……ピアス?)
ミルシェのかと思い早速届けに向かう。手を拳にしてずいっと前に出す。
「モルちゃん?なあに?」
何かしらと手を出すと、モルは手を広げてピアスをポトリと落とした。それを見たミルシェは破顔した。
「これ、どこにあったの?」
(……どこって、あっち?)
居間の方を指差すモル。話せないから連れて行ってココと言うのも面倒臭く感じ、適当な返事だった。
(むあっ!?)
「モルちゃん、有難う!思い出の品なの!もう出でこないと諦めてたのよ。嬉しい!」
ミルシェはモルをぎゅうぎゅう抱き締めた。
(思い出の品。わかる。わかるよ。俺もキングスから貰ったタグ持ってる。今は魔狼の家に仕舞ってるけど。無いと悲しいよね)
「あーっ!モーだめっママはおれのだぞ!」
背後から走る音とアルノの声が聞こえたと思ったらミルシェから剥がそうと、ポンチョをぐいぐい引っ張り始めた様だった。
「モーおしりみえた!ぱんつはいてない!」
(……ぱんつなんか魔物にいらないよ)
「ふふっ、二人とも可愛い。兄弟みたいよ」
ミルシェは二人まとめて抱き締めた。
モルは珍しく眉間にシワを寄せた。
四歳児と同列扱いなのかと複雑な気分に陥った。
(……服のために?)
黒い魔獣の姿で半目でぼーっとしていると、ミルシェは腹黒い笑みを浮かべた。
「モルちゃん。庭に置物に、ベッド下の板にアルノと仲良く悪戯して落書きや破損行為は困るのよ?歳は百歳以上って本当なの?精神年齢がお子様ならそれなりの姿で大人しく子供らしく過ごして欲しいのよねぇ」
ふふっと微笑まれ、感覚が無いのに冷気を感じた気がしたモルはゾワゾワして震えた。
瞬時に人化して用意されてた服を触手でバッと掴み走って隣部屋に逃げた。
「あら?」
(ま、魔法使いママン、こわっ!)
服を見ると懐かしいポンチョだった。紺色に裾近くに金糸の刺繍が入ったそれを、もそもそと被り着る。大きめで膝近くまであるからガナーチとも言えた。
「モルちゃん、ズボンはー?」
ひょこっと覗き見るとひらひらと半ズボンを振るミルシェが不思議そうな顔をしていた。
(……やっぱり俺、服きらい)
魔狼と大人の姿で過ごす時は街に居て外出もしたからきちっと着込んでたけど、ここは家の中で姿も子供だ。着衣の必要性を感じなかった。
高級志向の魔狼は人でいる時は貴族様のような贅沢な暮らしをする事に驚き、服も調度品にもおたおたして暮らす俺をニヤニヤして楽しんでた事を思い出す。
魔狼がいない寂しさに胸が空く感じがした。プイッとしてアルノのいる部屋に向かう。
(どうせ俺はいつまでもお子様だよ)
アルノは午前中のこの時間は習い事で家庭教師と勉強中だった。騎士や軍関係の学校はあるのに子供の本格的な学舎は大都市にしか無いらしい。
「よく出来ました。ちゃんと覚えたわね。エライわね、アルノ君」
部屋の前から覗き見ると遊ぶ時とは違う真剣な顔したアルノが書取りをしていた。
(……なんだ。真面目な子じゃないか)
魔狼から預かってるということは、俺が何かしたらブロニーにも迷惑が掛かる。
迎えに来るのを待つしかなかった。
ひとりの時間はミルシェの家事の手伝いを気紛れにしてみたり、居心地のいい影の場所を家の中で探す事にした。
居間のソファの後ろは壁との距離が絶妙で陽当たりもなく最高の場所だった。
ギルドから持ってきた地図本を広げてごろごろするとソファの下から見える向こうのチェスト下に何かがあるのがわかる。暗闇の中も能力でよく見えた。
少し遠いけどモルは触手を伸ばして掴み取ってみる。埃を被ってたそれは花の形の装飾品だった。
(……ピアス?)
ミルシェのかと思い早速届けに向かう。手を拳にしてずいっと前に出す。
「モルちゃん?なあに?」
何かしらと手を出すと、モルは手を広げてピアスをポトリと落とした。それを見たミルシェは破顔した。
「これ、どこにあったの?」
(……どこって、あっち?)
居間の方を指差すモル。話せないから連れて行ってココと言うのも面倒臭く感じ、適当な返事だった。
(むあっ!?)
「モルちゃん、有難う!思い出の品なの!もう出でこないと諦めてたのよ。嬉しい!」
ミルシェはモルをぎゅうぎゅう抱き締めた。
(思い出の品。わかる。わかるよ。俺もキングスから貰ったタグ持ってる。今は魔狼の家に仕舞ってるけど。無いと悲しいよね)
「あーっ!モーだめっママはおれのだぞ!」
背後から走る音とアルノの声が聞こえたと思ったらミルシェから剥がそうと、ポンチョをぐいぐい引っ張り始めた様だった。
「モーおしりみえた!ぱんつはいてない!」
(……ぱんつなんか魔物にいらないよ)
「ふふっ、二人とも可愛い。兄弟みたいよ」
ミルシェは二人まとめて抱き締めた。
モルは珍しく眉間にシワを寄せた。
四歳児と同列扱いなのかと複雑な気分に陥った。
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