スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー

文字の大きさ
50 / 74

50話。軽く突っ込みを入れただけなのに、ジャロンさんが吹っ飛ぶ

しおりを挟む
「アーサー。詳しく教えてくれ。ステータスウインドウと言っていたが……」

「えっとな、こういうことだ」

 俺は手の上に小さなステールスフィアを出す。

「見てくれ」

 俺は背の低いサフィにも見えやすいように、少し手の位置を低くする。

「みゃ! ミャーサーの手に穴が開いてるみゃ!」

「おい、アーサー、痛くないのか?」

「ああ。穴は開いていないんだ。これは、ステータスウインドウにある点だけ出したものだ。実はあれ、球体だったんだよ。驚きだよな」

「他の驚きに比べれば、そんなことはどうでもいいだろ……」

「まあ、とにかくご覧のとおり球体の中身が見えなくなるんだ」

「もはや、ステータスウインドウではないな……。いったい何故、透明になるんだ」

「こっちから入る光を、反対側から通すことによって、球の向こう側が見えるんだよ」

「何を言っているんだ? 光? 夜型モンスターに有効な光属性のことか? 影の中に隠れる闇属性魔法なら聞いたことがあるが……」

 あー。
 光の反射で物が見えているという概念が分からないと、このステルスも分からないか?

「とにかく、この球体の内側にある物は、外から見えなくなるんだ。実際には消えてない」

 シャルロットが手を伸ばし、指先で俺の手に開いた穴に触れる。

「……あっ! 私の指が消えた! それにアーサーの手に穴が開いてない! たしかに触った感触がある!」

「みゃあ! 本当みゃ!」

 サフィも指を伸ばしてきた。ふたりが俺の手を触りまくる。
 く、くすぐったくて、き、気持ちいい。

 昨日までの俺だったら意識を失っていたぜ……。

 ジャロンさんも触りたそうにしていたが、遠慮してくれた。

 しかし……。

「ブヒブヒ!」

 空気を読めない馬は頭を下げて突っこんできた。

「おいおい、メルディ。お前が顔を突っこんでも、目が横についているお前には、見えないだろ。ほら、こういうことだ」

 俺はステールスフィアで俺自身の頭部を消した。

「ブヒヒヒッ?!」

 メルディは驚きの声を上げると、鼻先を近づけ、顔をベロベロと舐めてきた。俺の頭が存在することを確認しているのだろう。

 ジャロンさんを消したときはこれほど慌てなかったけど、俺が消えたら大きく反応してくれた。心配してくれているんだ。愛を感じるぜ。

 他の馬たち(ブランシュ・ネージュを除く)も舐めてきた。ネットネトだぜ。

 俺はステールスフィアを解除した。

「へへっ。みんな可愛いよ。俺の翼なきペガサス。角なきユニコーン。赤くない赤兎馬せきとば

 俺が愛をささやいたのに、馬たちは、途端に顔を離してスン……となった。

「お、お前ら、表情が消えたぞ。おい、どういうことだ。おい……」

「……」 × 3

 まあいい。
 俺は馬の対応をやめて、シャルたちに体を向ける。

「まあ、とにかく、これが、新技ステールスフィアだ」

「ステミュス?」

「ブヒルス?」

「びっくりしたあ!」

 俺は全力で振り返り、赤くない赤兎馬せきとばことメルディの馬面を見つめる。

「メルディ、お前、ほとんど喋ってるじゃねえか! サフィより喋れてないか?」

「ブヒヒッ!」

「みゃあ……」

「あ! サフィごめん! な、とにかく、そういうことだから! 俺は透明にする能力を覚えた。分かっていても驚くときは驚くと思うけど、ステータスウインドウにはこういう使い方があることを覚えていてくれ」

「アーサー……。お前の発想力と、それを実現する柔軟さには驚かされてばかりだ……。本当に、なんでそんなことができるんだ」

「俺も旅芸人として、そこそこあちこちを巡ってきたけど、いやあ、こんなの見たことも聞いたこともないですよ。アーサーさん、略して、アーさん、いや、アーん、あんた本当に凄い人だ……」

「ブヒヒヒ」

「お前が照れるんかい! アーんって呼ぶな!」

 ペちっ。

 俺はメルディの馬面を軽く叩いた。いや、まあ、俺が褒められたことを嬉しく思ってくれたんだよな。いいこだな。

 ペちっ。

 もちろん、ジャロンさんの肩にも突っこみを入れた。

「ぐわああああああああああああああああああああっ!」

 ドシャッ!

 は?
 ジャロンさんは勢いよく回転しながら地面に倒れた。
 倒れたというか、盛大に叩きつけられた。

「え?」

 放心する俺。
 耳をぴくんっと立てるサフィ。
 慌てるシャルロット。

「お、おい、アーサー! お前、いったい! ジャロンさんは体を鍛えていない、普通の芸人だぞ!」

「う、うあっ。ご、ごご、ごめん! 力のコントロールができていると思っていたのに、こんな!」

 俺はジャロンさんに駆けよる。

 すると、にやり……。
 倒れたままジャロンさんが笑う。

「くくっ。ははっ。冗談ですよ。わざと倒れたんです」

「は? 冗談? くっそ驚かせやがって!」

「あっ……!」

 笑っていたはずのジャロンさんは、0点の答案用紙を教育ママに見つかってしまったガキんちょのように、突如として顔を引きつらせた。

 人物の陰に入って暗くなった顔が、小さくブルブル震えだす。

「ん?」

 ジャロンさんは仰向けに倒れて、怯えた目で見上げている。

 心配したシャルロットやサフィもジャロンさんに近寄っていた。

 つまり、スカートの中が――。

「ステータスウインドウオープン!」

「ぎゃあああああああああっ! 目がっ! 目がああああああああああああああっっ!」

「お前のことは歳が近いから、親戚の兄さんくらい、親しみを感じていた。だが、その友誼ゆうぎもこれまでだ。ステータスウインドウオープン! オープン! オープン!」

「ぐああああああああああっ! 目を閉じていてもまぶしい! 両手で押さえていてもまぶしい! ぎゃあああああああああああああああっ! 許して! 許して!」

「こら。やめるんだ」

 ぺちっ。

 シャルロットにケツを叩かれた。

「下着じゃないから、見られても大丈夫なやつだと何度も言っているだろ」

「でも……! 何度言われても、駄目なものは駄目だ!」

「もう……。今度、お前にだけ、特別なのを見せてあげる……から」

「え? 特別なの……?」

 えへっ。えへへっ。
 ど、どういうことだよ。やはり王族だから最新技術で作られた近代的なスケスケのエロいやつを持っているのかな。

 ま、まあ、そういうことなら、ジャロンさんは許してやるか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

処理中です...