death after

kzeroen

文字の大きさ
1 / 68

extra

しおりを挟む
 昼正午、交番。
 
「あー、ねみー」
 
 昼食を食べ終えた俺は眠い目を擦り、椅子にもたれかかっていた。空を見ると雲一つ無い快晴、お巡りが休憩の時に、昼寝をするわけにはいかないか。俺は、スマホを片手に利音に送ったメッセージを確認した。利音はまだ気づいていないようだ。
 
「ったく、何やってやがる。まぁ使わねぇほうがいい物だからなぁ」

 頭をかきイラつきながらも圭助は、スマホ机の上に投げた。利音に送ったメッセージは、朝九時に送ったものだった。銃の入ってない空のホルスターを触ると、いてもたってもいられない。
 
「昨日酔いつぶれて、玄関で寝ちまったからな~くっそ頭痛ぇ」

 圭助は昨日全快祝いに、同僚と夜飲んでいた。泥酔しながらも部屋まで帰り、玄関で寝てしまった。そして今朝、圭助に気付いた利音に叩き起こされ、シャワーと身支度を済まし慌てて出勤したのだ。
 
 先輩が街から戻ってきたら、予備を警視庁に取りに行こうか…親父にバレたら大目玉食らうな…
 
 俯きながらも、先輩を待つ圭助。するといきなり電話が鳴った。今時公衆電話からの着信。圭助は、驚き慌てスマホを落としそうになったが何とか耳に当てた。
 
『圭助かっ!早く銀行前にこいっ!!大変な事になっている!!』
 
 ボリュームが外にも聞こえそうな声で聞こえる。圭助はうるさそうにみみを塞いだ。
 
「先輩っ!どうしたんすっか!?そんなに慌てて!?」
 
『とにかく至急だっ!後私服で、自転車でこい!』
 
 先輩はそう言うと、電話はすぐに切れてしまった。先輩は私服で街の警備に言ってた。
 
「銀行かぁ。ん・・・銀行って!?」
 
まさかじゃなく、銀行に至急とはあれしか考えられない。俺はすぐに準備し銀行へ向かった。
 
 
 俺は自転車を飛ばし、銀行に着いた。すると先輩は電信柱の傍にいた。
 
「巡査部長、ただいま到着しましたっ!」
 
 俺は先輩に軽く敬礼すると銀行に視線を向ける。すると銀行の入り口が、昼間なのに明らかにシャッターが閉まっている。無言のまま先輩は、自分のハンズフリーを外しスマホの画面を俺に見せた。画面の相手は利音だった!俺は確か歩きスマホは危ないから、利音にハンズフリーを渡した覚えがある。
 
「なんで先輩にかかっているんッスか!?」
 
 驚愕した俺は先輩を睨みつけると、先輩は俺の肩を叩いた。
 
「今は落ちつけ…早くこれを耳に当てろ!」
 
 俺は渋々ハンズフリーを耳に当てると中の声が聞こえる。
 
『いいか早く金を袋に詰めろ、そして車を裏に用意しろっ!さもなくは人質がどうなるかわかるだろう』
 
 男の声少し年老いた声。この声は聞き覚えがどこかである。圭助は内容を先輩に伝えると、先輩は頷いた。
 
「わかった。応援の車は銀行の死角に止めた。他の警官は全員私服で、外で待機させてある」
 
「用意周到っすね…先輩。でもなんで私服なんすか?」
 
「犯人から、警察を呼ぶと仕掛けた爆弾を作動させるようだ…」
 
 圭助は、複雑な顔しながら矛盾してると思った。犯人が出て捕まえたとしても、起動ボタンを押されては中の人達が犠牲になる。
 
「じゃあ……俺が行っていいっすか?」

「何がだ?」

「考えがあるっすから……拳銃を貸して下さい」

「……わかった。お前に賭けるが、失敗したら……わかるな……圭助……」

「その時は……あいつの事を……お願いします……後射撃班にも連絡を」

 頷く先輩。そして拳銃を受け取り先輩に耳打ちする。俺は店の入口に行く。そして、ポケットからサングラスをかけた。

「オラァー、シャッター開けろーっ!天下の真田組がわからねぇーのかっ!!」

 バシバシとシャッターを叩き、俺は声を荒上げ叫んだ。真田組と言えば、世間で泣く子も黙る暴力団。俺達警察も手を焼くほど、厄介な相手だ。

「俺が、大金を振り込むのそんなに拒むのかー!このオンボロ銀行がーー!!」

 するとシャッターが開き、覆面の男が拳銃を構えてやってくる。あろうことか利音を盾にして……

「黙れっ……この状況がわからねぇーのか?!こいつらの命を飛ばすぞ、ガキっ!!」

 不味い、利音に拳銃が向けられている。俺だと利音にバレたら、二人とも終わりだ……

 利音は、俺の顔をマジマジと見つめる。そしてわかったように目を見開いた。
 
「けい……」

 不味いバレたっ!こうなったら……
 
「おいっ、ブ……ブスっ!!てめぇのせいでっ……俺は……親分に殺されてしまうんだよっ……!!」
 
 頼む利音……俺の行動を理解してくれ……!!

「なっ……!!何よっ、初対面の人にブスって!あなたの短気な頭は、人間としておかしいわっ!」

 短気な頭……あぁ、なるほどな……

「んだとっ、ブスがっ!この人質をさっさと殺せっ、ジジイ!」

「おい……ガキ、バカなのか?この状況……」

 わかってるよ、わかってる。けどなこれしか無いんだよっ!
 
「真田組かライオン組か知らないけど、幼稚園みたいにごっこ遊びは大人げないわよ」

「んだとこのアマ……!真田組を知らないだとっ!!ジジイ、あんたも後でどうなるかわかるな……?」

 今度は俺が犯人に拳銃を向けた。顔は見えないが、確実に目が怯んでいる。
 
「くっ……お嬢ちゃん……真田組ってえのは……」

 犯人は、今も拳銃を利音に向けている。が、真田組の名前を出した事により同様していた。

「じゃあ、その親分とやら呼びなさいよっ!あっ……下っ端だから出来ないの?」

「下っ端……」
 
「あらあら図星ね……ヒヨッコかしら」

 利音は堂々を俺を馬鹿にする。犯人は、俺達のやり取りを呆然と眺めていた。そして何やら笑いを堪えている。後一押しだっ!

「仕方ねぇ……てめぇを俺の後に親分に突き出して、たっぷりと遊んでもらうからなっ」

 俺は利音の胸の辺りに、拳銃を突き刺す。彼女は臆すること無く、顔を赤くし前に出る。

「何よ変態っスケベ!おじさん、もうこの人殺していいわ」

「くくっ……ハハッ……いかんツボに入った……」

 犯人は俺達のやり取りで、お腹を抱え込んだ。そして俺はその隙に、犯人の拳銃を奪い取り片腕を押さえながら首を絞める。

「きっ……貴様何を……?!」

「騙されたな……実は俺警察なんだっ!」

「くっ……ガキが……似合わん……!」
 
 犯人は抵抗をしたが、俺は逆に首をさらに締め付け床に倒した。そして老体は動かなくなる。俺は手錠をかけ、起爆装置を奪った。

『一五丸丸、犯人を逮捕。これより人質の救助と、爆弾の解除をお願いします』

『了解!』

 俺はトランシーバーを取り出し、配置していた他の警察に連絡を取った。そして利音の元へ。
 
「圭助っ……バカっ!怖かった……よ……」

 よほど怖かったのか、涙目の利音が俺に抱きつく。俺は、彼女の頭を優しく撫でた。
  
「ご協力あんがと、ブスっ」

「何よっ……バカ圭助……さっさと助けに来なさい」
 
「悪いな……警察は、人質の安全が第一だからな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...