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81 軟禁と恐怖
王都に到着後、少女はタウンハウスの一室に軟禁されていた。
タウンハウスとは、上流貴族が王都に構えている屋敷のことだ。
侯爵家も、立派な屋敷を所有していた。
その屋敷の一番日当たりの悪い奥まった部屋に、少女は隠されるように閉じ込められている。
部屋には1日に2度、粗末な食事が運ばれてくる。
パンと少しの具材が入ったスープ。
しかしそれだけでも少女にはごちそうのようで、ゆっくり味わって食べている。
少女はその薄暗い部屋で、本を読んで過ごしていた。
貴族の教養について記された本は、これを見て勉強していろと侯爵夫妻に渡されたものだ。
登城前の晩に、簡単なテストをするから、手を抜かないようにと。
出来が悪ければ、きつい罰が待っている。
必死に教本を読み込む少女が、哀れでならなかった。
俺にできることと言えば、さりげなく魔法で少女をサポートすることだけだった。
少女が寒そうにしていたら、弱い熱魔法で暖をとらせる。
少女に与えられている水は薄汚れていたので、浄化の魔法を使った。
そんな誰にも気づかれないようなささやかなことしかしてやれないのが、何よりもつらい。
少女は短時間で、教本に書いてある内容を頭に詰め込んだ。
しかしテストは案の定、不合格だった。
きっと少女が何をしても、彼らは不合格の烙印を押しただろう。
領都に戻ったら覚えていなさい、と宣告された少女は、表情こそ変えなかったのの青ざめていた。
※
お茶会当日。
少女は風呂で身体を磨かれ、貴族の令嬢らしく着飾られた。
領地を出たときとは異なり、それなりの見た目に整えられている。
しかし、妹と並ぶとどうしても見劣りする。
ドレスも宝飾品も、なに一つとっても、妹の方が数段質のよいものを身に着けていた。
少女をよく見ると、やはりドレスも靴も、サイズが合っていないのがわかる。
侯爵夫妻は、少女に粗相をしないよう厳しく言いつけていた。
もしも失敗すれば、今までで一番の罰を与えると。
少女は恐怖に震えながらも、小さく頷いた。
少女より一足先に、俺とノアは王城に向かった。
妻は楽しく過ごしていたようで、きれいなドレスを着せてもらってうれしそうにしている。
「それで……様子はどうでした?」
妻とお茶を飲んでいたロエナが、俺たちに問いかける。
俺は言葉を濁さず、ありのまま見たものを伝えた。
ロエナは最後まで話を聞いて、深く深呼吸をする。
「私、感情のコントロールは得意な方ですが、今回ばかりは自信がありませんわ」
ロエナの護衛騎士も、怒りでわなわな震えていた。
「侯爵夫妻のお相手は、おじさまにお願いしました」
「おじさま?」
「ええ。お父様の弟の大公閣下。おじさまも勇司とは親しかったから、今回の作戦に快く協力してくださいましたわ」
知らぬところで、味方を増やしていてくれたらしい。
ありがたい話だ。
「姫様、そろそろ……」
ロエナの侍女が声をかける。
そろそろお茶会が始まる時間らしい。
「ええ。今行くわ。さ、みなさんもごいっしょに」
ロエナがそう微笑んだ。
てっきり妻だけが参加するものだと思っていた俺は、思わず戸惑う。
ロエナは「最初に紹介だけさせてくださいな」といたずらっぽく笑った。
「紹介……ですか?」
「ええ。みなさん、ドラゴン討伐の英雄に興味がおありのようで。最初の顔みせだけでもご一緒いただければ、シオリ様も安心でしょうし」
「わ、わかりました」
俺の言葉に、妻がぱっと笑顔になる。
ドレスでテンションが上がっていたものの、知らない人ばかりが集まるお茶会に参加するのは気が引けていたらしい。
何はともあれ、ようやく少女を救い出すことができる。
そう思うと、はやる心を押さえられなかった。
タウンハウスとは、上流貴族が王都に構えている屋敷のことだ。
侯爵家も、立派な屋敷を所有していた。
その屋敷の一番日当たりの悪い奥まった部屋に、少女は隠されるように閉じ込められている。
部屋には1日に2度、粗末な食事が運ばれてくる。
パンと少しの具材が入ったスープ。
しかしそれだけでも少女にはごちそうのようで、ゆっくり味わって食べている。
少女はその薄暗い部屋で、本を読んで過ごしていた。
貴族の教養について記された本は、これを見て勉強していろと侯爵夫妻に渡されたものだ。
登城前の晩に、簡単なテストをするから、手を抜かないようにと。
出来が悪ければ、きつい罰が待っている。
必死に教本を読み込む少女が、哀れでならなかった。
俺にできることと言えば、さりげなく魔法で少女をサポートすることだけだった。
少女が寒そうにしていたら、弱い熱魔法で暖をとらせる。
少女に与えられている水は薄汚れていたので、浄化の魔法を使った。
そんな誰にも気づかれないようなささやかなことしかしてやれないのが、何よりもつらい。
少女は短時間で、教本に書いてある内容を頭に詰め込んだ。
しかしテストは案の定、不合格だった。
きっと少女が何をしても、彼らは不合格の烙印を押しただろう。
領都に戻ったら覚えていなさい、と宣告された少女は、表情こそ変えなかったのの青ざめていた。
※
お茶会当日。
少女は風呂で身体を磨かれ、貴族の令嬢らしく着飾られた。
領地を出たときとは異なり、それなりの見た目に整えられている。
しかし、妹と並ぶとどうしても見劣りする。
ドレスも宝飾品も、なに一つとっても、妹の方が数段質のよいものを身に着けていた。
少女をよく見ると、やはりドレスも靴も、サイズが合っていないのがわかる。
侯爵夫妻は、少女に粗相をしないよう厳しく言いつけていた。
もしも失敗すれば、今までで一番の罰を与えると。
少女は恐怖に震えながらも、小さく頷いた。
少女より一足先に、俺とノアは王城に向かった。
妻は楽しく過ごしていたようで、きれいなドレスを着せてもらってうれしそうにしている。
「それで……様子はどうでした?」
妻とお茶を飲んでいたロエナが、俺たちに問いかける。
俺は言葉を濁さず、ありのまま見たものを伝えた。
ロエナは最後まで話を聞いて、深く深呼吸をする。
「私、感情のコントロールは得意な方ですが、今回ばかりは自信がありませんわ」
ロエナの護衛騎士も、怒りでわなわな震えていた。
「侯爵夫妻のお相手は、おじさまにお願いしました」
「おじさま?」
「ええ。お父様の弟の大公閣下。おじさまも勇司とは親しかったから、今回の作戦に快く協力してくださいましたわ」
知らぬところで、味方を増やしていてくれたらしい。
ありがたい話だ。
「姫様、そろそろ……」
ロエナの侍女が声をかける。
そろそろお茶会が始まる時間らしい。
「ええ。今行くわ。さ、みなさんもごいっしょに」
ロエナがそう微笑んだ。
てっきり妻だけが参加するものだと思っていた俺は、思わず戸惑う。
ロエナは「最初に紹介だけさせてくださいな」といたずらっぽく笑った。
「紹介……ですか?」
「ええ。みなさん、ドラゴン討伐の英雄に興味がおありのようで。最初の顔みせだけでもご一緒いただければ、シオリ様も安心でしょうし」
「わ、わかりました」
俺の言葉に、妻がぱっと笑顔になる。
ドレスでテンションが上がっていたものの、知らない人ばかりが集まるお茶会に参加するのは気が引けていたらしい。
何はともあれ、ようやく少女を救い出すことができる。
そう思うと、はやる心を押さえられなかった。
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