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茜は泣き続けた。
俺は震える小さな肩に手を添え、黙ってその姿をみていた。
どんな慰めの言葉も、今の彼女には響かないだろう。
思う存分泣くことで、少しは心が軽くなってくれればと願ってやまない。
ノアも黙って茜を見つめていた。
彼女の悲しみに寄り添うような、深い憐みの瞳で。
※
泣き疲れたのか、茜はそのまま眠ってしまった。
少女の細い身体をソファに横たわらせ、メイドの用意してくれたひざ掛けをかける。
そうしてしばらく待っていると、お茶会を早々に切り上げたらしいロエナと妻が戻ってきた。
ソファで眠る少女の頭を撫でようと、ロエナが優しく手を伸ばす。
しかし茜は、ロエナの手が触れるか触れないという瞬間にパチッと目を開け、とっさにロエナの手を振り払った。
ロエナの侍女が、茜の無礼を咎めるよう口を開いたが、ロエナが手を上げてとめる。
茜の顔は真っ青だった。
そして自分に触れようとしたのがロエナだったことを知り、安堵した顔をした。
日頃いわれのない暴力にさらされ続けている彼女の、とっさの防衛反応だったのだろう。
茜はすぐにロエナに謝罪したが、ロエナは首を横に振った。
「私こそ、急に触れようとしてごめんなさい。驚かせてしまいましたね」
優しく微笑むロエナに、茜が頬を染める。
天使のような微笑みに魅了されたのか、ロエナの優しさに胸を打たれたのか、またはその両方か。
「それに、さっきはお茶をかけてしまいました」
「あ……でも、全然熱くなかったです」
「よかった。あなたをあの場から連れ出したかったのだけれど……少し乱暴なやり方でしたね」
茜が首を横に振った。
ロエナは少し悲しそうに微笑んだまま、茜に語り掛ける。
「あなたの家族には、先に帰ってもらいました。あなたを連れ帰ると言い張っていましたが、私が断りました」
「えっ……」
「あなたがひどい扱いを受けていることは知っています。あなたが望んだとしても、家に帰ることは許可できません」
「でも……帰らないと、私……」
「ひどいことをされる?」
驚いた顔をしながらも、小さく頷いた茜の手に、ロエナがそっと自分の手を重ねた。
そして茜の目をじっと見つめる。
「私があなたを守ります。あなたはもう、あの家には戻らなくても構わない。それでも……あの家に戻りたい?
?」
「ど、どうして……」
「私はこの国を治める王族の一人として、理由なき暴力にさらされるあなたを放っておくわけにはいきません」
「私より……苦しんでいる人は大勢います……」
「そうかもしれません。それでも、あなたは今こんなに傷つき、やせ細っている」
「……」
茜は目に涙を浮かべながら、ロエナの言葉に耳を傾けていた。
ロエナが茜の小さな身体を抱き寄せる。
「それにね」
ロエナが眉を下げ、今にも泣きだしそうな顔で笑っていった。
「私、あなたのお兄さんといっしょに旅をして魔王を倒したの。ユージは努力家で、思いやりにあふれた人だった。私たちが恋に落ちるのに、時間はかからなかったわ。……本当は、結婚してずっとそばにいたかったくらい。だから私はね、あなたのことを妹のように思っているのよ」
「お兄ちゃんが……」
「ユージは、ニホンに戻る前、あなたのことを話してくれた。ずっと病気で苦しい思いをしているのに、人を思いやれる優しい子だって」
「……お兄ちゃん……っ!」
茜は、ロエナにしがみついて肩を震わせていた。
ロエナの瞳も涙で滲んでいる。
茜が小さな声で「お兄ちゃんに会いたい……」と呟いた。
その言葉に、ロエナも頷いたのを見て、俺は何とも切ない気持ちでいっぱいになった。
俺は震える小さな肩に手を添え、黙ってその姿をみていた。
どんな慰めの言葉も、今の彼女には響かないだろう。
思う存分泣くことで、少しは心が軽くなってくれればと願ってやまない。
ノアも黙って茜を見つめていた。
彼女の悲しみに寄り添うような、深い憐みの瞳で。
※
泣き疲れたのか、茜はそのまま眠ってしまった。
少女の細い身体をソファに横たわらせ、メイドの用意してくれたひざ掛けをかける。
そうしてしばらく待っていると、お茶会を早々に切り上げたらしいロエナと妻が戻ってきた。
ソファで眠る少女の頭を撫でようと、ロエナが優しく手を伸ばす。
しかし茜は、ロエナの手が触れるか触れないという瞬間にパチッと目を開け、とっさにロエナの手を振り払った。
ロエナの侍女が、茜の無礼を咎めるよう口を開いたが、ロエナが手を上げてとめる。
茜の顔は真っ青だった。
そして自分に触れようとしたのがロエナだったことを知り、安堵した顔をした。
日頃いわれのない暴力にさらされ続けている彼女の、とっさの防衛反応だったのだろう。
茜はすぐにロエナに謝罪したが、ロエナは首を横に振った。
「私こそ、急に触れようとしてごめんなさい。驚かせてしまいましたね」
優しく微笑むロエナに、茜が頬を染める。
天使のような微笑みに魅了されたのか、ロエナの優しさに胸を打たれたのか、またはその両方か。
「それに、さっきはお茶をかけてしまいました」
「あ……でも、全然熱くなかったです」
「よかった。あなたをあの場から連れ出したかったのだけれど……少し乱暴なやり方でしたね」
茜が首を横に振った。
ロエナは少し悲しそうに微笑んだまま、茜に語り掛ける。
「あなたの家族には、先に帰ってもらいました。あなたを連れ帰ると言い張っていましたが、私が断りました」
「えっ……」
「あなたがひどい扱いを受けていることは知っています。あなたが望んだとしても、家に帰ることは許可できません」
「でも……帰らないと、私……」
「ひどいことをされる?」
驚いた顔をしながらも、小さく頷いた茜の手に、ロエナがそっと自分の手を重ねた。
そして茜の目をじっと見つめる。
「私があなたを守ります。あなたはもう、あの家には戻らなくても構わない。それでも……あの家に戻りたい?
?」
「ど、どうして……」
「私はこの国を治める王族の一人として、理由なき暴力にさらされるあなたを放っておくわけにはいきません」
「私より……苦しんでいる人は大勢います……」
「そうかもしれません。それでも、あなたは今こんなに傷つき、やせ細っている」
「……」
茜は目に涙を浮かべながら、ロエナの言葉に耳を傾けていた。
ロエナが茜の小さな身体を抱き寄せる。
「それにね」
ロエナが眉を下げ、今にも泣きだしそうな顔で笑っていった。
「私、あなたのお兄さんといっしょに旅をして魔王を倒したの。ユージは努力家で、思いやりにあふれた人だった。私たちが恋に落ちるのに、時間はかからなかったわ。……本当は、結婚してずっとそばにいたかったくらい。だから私はね、あなたのことを妹のように思っているのよ」
「お兄ちゃんが……」
「ユージは、ニホンに戻る前、あなたのことを話してくれた。ずっと病気で苦しい思いをしているのに、人を思いやれる優しい子だって」
「……お兄ちゃん……っ!」
茜は、ロエナにしがみついて肩を震わせていた。
ロエナの瞳も涙で滲んでいる。
茜が小さな声で「お兄ちゃんに会いたい……」と呟いた。
その言葉に、ロエナも頷いたのを見て、俺は何とも切ない気持ちでいっぱいになった。
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