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97 来客
城に帰ると、来客の知らせを受けた。
相手を待たせているという応接室へ向かうと、そこには美女が待っていた。
緑色の髪を無造作に束ねたエルフの女性は、王宮には似つかわしくないラフな服装をしている。
「イルさん!」
俺が驚いて名前を呼ぶと、美女はにっと笑みを浮かべた。
彼女はイルミュール。
ああ見えて、この国のギルドのトップに君臨する存在だ。
「すみません、お待たせしてしまって……」
「いや、構わん。先触れもなく訪れたのはこちらの方だ」
「それで、ご用件は……?」
「ああ。ドラゴンの査定が済んだぞ」
イルミュールはそういうと、大きなカバンを取り出し、机の上にドサリと置いた。
中から、金属のこすれるような音がする。
「これは……?」
「ドラゴンの買い取り額だ。確認してくれ!」
「……え?」
恐る恐るカバンを開くと、なかには白金貨が大量に詰め込まれていた。
ノアに教わった知識によると、白金貨はこの国で一番高価な通貨だったはず。
日本円に換算すると、1枚で100万円ほどの価値になるとか。
それがカバンいっぱいに……。
あまりの金額に、俺は思わず気が遠くなった。
妻は初めて見る本物の白金貨に「きれーい!」と目を輝かせている。
混乱する俺を尻目に、イルミュールはさらに話を続ける。
「ドラゴンのコアと肉の一部は別に保管してある。こちらへ持ってこようか?それとも君らが取りにくるか?」
「コア……?」
「そう。さすがにコアには値段がつけられなくてな。本当は研究用に譲ってもらいたかったんだが、買い取ってしまうとギルドの財政が破綻してしまうから、泣く泣く諦めたんだ」
「そ、そうなんですか……」
「肉は大目により分けて、しっかりと保管している。ドラゴンステーキは冒険者の夢だからな」
「……あ、ありがとうございます……」
話のスケールの大きさに、頭がついていかない。
ノアがドラゴンの肉は絶品だと話していたことを思い出しつつ、現実逃避する。
そして目の前の大金をそのままにしておくのは怖いので、ひとまず魔法のカバンの中に収納する。
小さなカバンに大きなカバンがすっぽりと入っていく様子を、イルミュールが興味深そうに眺めていた。
「それはマジックバッグか?ずいぶん希少なものを持っているんだな」
「ああ、これは代々受け継がれている家宝でして。マジックバッグといっても、容量はあまり大きくないんですよ」
「いや、それでも十分珍しい品だ。大事にすることだな」
ちなみにこれは、魔法のカバンについて人に問われたときのために用意していた作り話だ。
この世界ではマジックバッグは珍しいが、容量が少ないものなら所有者はそれなりにいるらしい。
誰かに目を付けられないよう、容量無制限だということは内緒にすることになっている。
イルミュールも納得したのか、それ以上突っ込んでくることはなかった。
「ところで、ノア少年はどうした?外出中か?」
「ええ。ちょっと別件で外せない用事がありまして」
「そうか……」
「何かありましたか?」
「いや、君たちの中で一番知識に長けているのはノア少年だろう?ちょっと意見を聞きたかったのだが、いつごろ戻ってくる予定かわかるか?」
「いえ……」
ノアからは、いまだ連絡がないままだ。
ノアの分身という伝書鳩は今も元気に俺の周りを飛び回っているが、こちらから連絡することもなかった。
「急を要する案件ですか?」
「いや、それほどではない。戻ったらギルドに顔を出してくれるよう伝えてくれるか?」
「わかりました」
「恩に着る。……状況次第では、君たちにも協力をお願いすることになるかもしれない」
眉を下げて、困ったような顔でイルミュールが言った。
俺は頷きながら、何か良くないことが起こっているのかもしれないと漠然と思った。
相手を待たせているという応接室へ向かうと、そこには美女が待っていた。
緑色の髪を無造作に束ねたエルフの女性は、王宮には似つかわしくないラフな服装をしている。
「イルさん!」
俺が驚いて名前を呼ぶと、美女はにっと笑みを浮かべた。
彼女はイルミュール。
ああ見えて、この国のギルドのトップに君臨する存在だ。
「すみません、お待たせしてしまって……」
「いや、構わん。先触れもなく訪れたのはこちらの方だ」
「それで、ご用件は……?」
「ああ。ドラゴンの査定が済んだぞ」
イルミュールはそういうと、大きなカバンを取り出し、机の上にドサリと置いた。
中から、金属のこすれるような音がする。
「これは……?」
「ドラゴンの買い取り額だ。確認してくれ!」
「……え?」
恐る恐るカバンを開くと、なかには白金貨が大量に詰め込まれていた。
ノアに教わった知識によると、白金貨はこの国で一番高価な通貨だったはず。
日本円に換算すると、1枚で100万円ほどの価値になるとか。
それがカバンいっぱいに……。
あまりの金額に、俺は思わず気が遠くなった。
妻は初めて見る本物の白金貨に「きれーい!」と目を輝かせている。
混乱する俺を尻目に、イルミュールはさらに話を続ける。
「ドラゴンのコアと肉の一部は別に保管してある。こちらへ持ってこようか?それとも君らが取りにくるか?」
「コア……?」
「そう。さすがにコアには値段がつけられなくてな。本当は研究用に譲ってもらいたかったんだが、買い取ってしまうとギルドの財政が破綻してしまうから、泣く泣く諦めたんだ」
「そ、そうなんですか……」
「肉は大目により分けて、しっかりと保管している。ドラゴンステーキは冒険者の夢だからな」
「……あ、ありがとうございます……」
話のスケールの大きさに、頭がついていかない。
ノアがドラゴンの肉は絶品だと話していたことを思い出しつつ、現実逃避する。
そして目の前の大金をそのままにしておくのは怖いので、ひとまず魔法のカバンの中に収納する。
小さなカバンに大きなカバンがすっぽりと入っていく様子を、イルミュールが興味深そうに眺めていた。
「それはマジックバッグか?ずいぶん希少なものを持っているんだな」
「ああ、これは代々受け継がれている家宝でして。マジックバッグといっても、容量はあまり大きくないんですよ」
「いや、それでも十分珍しい品だ。大事にすることだな」
ちなみにこれは、魔法のカバンについて人に問われたときのために用意していた作り話だ。
この世界ではマジックバッグは珍しいが、容量が少ないものなら所有者はそれなりにいるらしい。
誰かに目を付けられないよう、容量無制限だということは内緒にすることになっている。
イルミュールも納得したのか、それ以上突っ込んでくることはなかった。
「ところで、ノア少年はどうした?外出中か?」
「ええ。ちょっと別件で外せない用事がありまして」
「そうか……」
「何かありましたか?」
「いや、君たちの中で一番知識に長けているのはノア少年だろう?ちょっと意見を聞きたかったのだが、いつごろ戻ってくる予定かわかるか?」
「いえ……」
ノアからは、いまだ連絡がないままだ。
ノアの分身という伝書鳩は今も元気に俺の周りを飛び回っているが、こちらから連絡することもなかった。
「急を要する案件ですか?」
「いや、それほどではない。戻ったらギルドに顔を出してくれるよう伝えてくれるか?」
「わかりました」
「恩に着る。……状況次第では、君たちにも協力をお願いすることになるかもしれない」
眉を下げて、困ったような顔でイルミュールが言った。
俺は頷きながら、何か良くないことが起こっているのかもしれないと漠然と思った。
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