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153 機転
しばらく移動を続けた俺たちは、国境近くの街から少し離れた森の中に潜伏していた。
情報屋から得た兵士の巡回ルートによると、あと30分もすれば巡回の隙をついて国境を越え、オートラック王国内に戻ることができるだろう。
今のうちに少し休憩をとっておくことになり、大きめの石に腰を下ろして水分補給をする。
妻がカバンの中から得意げにお菓子を取り出し、みんなに配って歩くのはもはや見慣れた光景だ。
妻はどれだけお菓子を隠し持っているのか、休憩のたびに配っている。
この世界でお菓子は高価だからと最初はみんな遠慮していたが、断ってもめげずにお菓子を差し出してくる妻に根負けして、今では「ありがとう」とすんなり受け取っている。
妻はみんながおいしそうにお菓子を食べる姿を見ては満足げにしていた。
みんなでちょっとしたおやつタイムを楽しんでいると、ふいに後ろから小枝を踏む音が聞こえた。
国境付近までたどり着き、気が緩んでいたのだろう。
思い切り油断していたことを後悔しつつ、音のした方を振り返る。
そこには、怯えた顔でこちらを見ている3人の子どもがいた。
近くの村か街の子どもなのだろう。
手に持ったかごの中には木の実や山菜が詰まっている。
3人は兄弟なのだろうか、よく似た顔立ちをしていた。
一番上の男の子は10歳くらいだろうか。
下の子2人は男女で、どちらも小学校低学年くらいに見える。
ゆっくりと後ろに後ずさる子どもたち。
このまま大人に知らせに行かれては困る。
国境付近で騒ぎとなれば、オートラック王国への侵入も難しくなってしまう。
しかし大人として、子どもに手荒な真似をする気はないし、怖がらせたくもない。
どうしようかと悩んでいるうちに、子どもたちは今にも駆け出してしまいそうだ。
「待って、私たちは怪しい者ではないわ」
優しい声で子どもたちに語り掛けたのは、奈央だった。
一番年上らしき子どもが「誰なの?」と問いかける。
「私は……この国の聖女よ」
「う、嘘だ……!聖女様がこんなところにいるわけない」
「嘘じゃないわ」
「絶対嘘!知らない人を見つけたら、すぐに大人に知らせなさいってお母さんが言ってたもん」
子どもたちの目には、たっぷりの涙が浮かんでいる。
このまま説得するのは難しいだろう。
どうするべきかと頭をフル回転させていると、俺はふと情報屋にもらったネックレスの存在を思い出した。
異世界人に反応して強い光を放つネックレス。
使い道はないと思っていたが、一か八かのハッタリにかけてみてもいいかもしれない。
「その人は本当に聖女様だよ。嘘じゃない。その証拠に、聖女様を見分ける魔法道具を見せてあげよう」
そう言って、俺はネックレスを取り出した。
子どもたちは疑いのまなざしでネックレスと俺の顔とを見比べている。
「今からネックレスを投げる。それを拾ったら、ネックレスの石についている小さなスイッチを押してごらん」
そうしてネックレスを子どもたちの方へ放り投げる。
下の男の子がキャッチしようと手を伸ばしたが、ネックレスはその手をすり抜けて地面に落ちた。
それを女の子が恐る恐る拾う。
そして、しばらくネックレスを眺めたあと、ボタンを押した。
するとネックレスは淡い光を放ちだした。
女の子は驚いてネックレスを落としてしまう。
俺は極めて落ち着いた声で「大丈夫だよ」と語り掛けた。
「そのネックレスは、聖女様のお力に反応して光るんだ。聖女様が今君たちのそばにいらっしゃるから、少しだけ光っているんだよ」
「……ほ、本当?」
「本当だよ。信じられないなら、聖女様にお渡ししてみて」
子どもたちは顔を見合わせて緊張した顔をしていたが、年上の男の子が地面に落ちているネックレスをそっと拾い上げた。
そして怯えながらも奈央に近づき、ネックレスを差し出す。
奈央は不安げにしながらも、微笑んでネックレスを受け取った。
その瞬間、あたりは眩い光に包まれた。
眩しさに目をつむりながら、俺は「聖女様、お放しください!」と叫ぶ。
すると奈央はネックレスを落としたのか、地面に置いたのか、まばゆい光がふっと消え去った。
瞬きをしながら奈央と子どもたちのほうをみると、子どもたちは唖然とした表情で奈央を見つめていた。
情報屋から得た兵士の巡回ルートによると、あと30分もすれば巡回の隙をついて国境を越え、オートラック王国内に戻ることができるだろう。
今のうちに少し休憩をとっておくことになり、大きめの石に腰を下ろして水分補給をする。
妻がカバンの中から得意げにお菓子を取り出し、みんなに配って歩くのはもはや見慣れた光景だ。
妻はどれだけお菓子を隠し持っているのか、休憩のたびに配っている。
この世界でお菓子は高価だからと最初はみんな遠慮していたが、断ってもめげずにお菓子を差し出してくる妻に根負けして、今では「ありがとう」とすんなり受け取っている。
妻はみんながおいしそうにお菓子を食べる姿を見ては満足げにしていた。
みんなでちょっとしたおやつタイムを楽しんでいると、ふいに後ろから小枝を踏む音が聞こえた。
国境付近までたどり着き、気が緩んでいたのだろう。
思い切り油断していたことを後悔しつつ、音のした方を振り返る。
そこには、怯えた顔でこちらを見ている3人の子どもがいた。
近くの村か街の子どもなのだろう。
手に持ったかごの中には木の実や山菜が詰まっている。
3人は兄弟なのだろうか、よく似た顔立ちをしていた。
一番上の男の子は10歳くらいだろうか。
下の子2人は男女で、どちらも小学校低学年くらいに見える。
ゆっくりと後ろに後ずさる子どもたち。
このまま大人に知らせに行かれては困る。
国境付近で騒ぎとなれば、オートラック王国への侵入も難しくなってしまう。
しかし大人として、子どもに手荒な真似をする気はないし、怖がらせたくもない。
どうしようかと悩んでいるうちに、子どもたちは今にも駆け出してしまいそうだ。
「待って、私たちは怪しい者ではないわ」
優しい声で子どもたちに語り掛けたのは、奈央だった。
一番年上らしき子どもが「誰なの?」と問いかける。
「私は……この国の聖女よ」
「う、嘘だ……!聖女様がこんなところにいるわけない」
「嘘じゃないわ」
「絶対嘘!知らない人を見つけたら、すぐに大人に知らせなさいってお母さんが言ってたもん」
子どもたちの目には、たっぷりの涙が浮かんでいる。
このまま説得するのは難しいだろう。
どうするべきかと頭をフル回転させていると、俺はふと情報屋にもらったネックレスの存在を思い出した。
異世界人に反応して強い光を放つネックレス。
使い道はないと思っていたが、一か八かのハッタリにかけてみてもいいかもしれない。
「その人は本当に聖女様だよ。嘘じゃない。その証拠に、聖女様を見分ける魔法道具を見せてあげよう」
そう言って、俺はネックレスを取り出した。
子どもたちは疑いのまなざしでネックレスと俺の顔とを見比べている。
「今からネックレスを投げる。それを拾ったら、ネックレスの石についている小さなスイッチを押してごらん」
そうしてネックレスを子どもたちの方へ放り投げる。
下の男の子がキャッチしようと手を伸ばしたが、ネックレスはその手をすり抜けて地面に落ちた。
それを女の子が恐る恐る拾う。
そして、しばらくネックレスを眺めたあと、ボタンを押した。
するとネックレスは淡い光を放ちだした。
女の子は驚いてネックレスを落としてしまう。
俺は極めて落ち着いた声で「大丈夫だよ」と語り掛けた。
「そのネックレスは、聖女様のお力に反応して光るんだ。聖女様が今君たちのそばにいらっしゃるから、少しだけ光っているんだよ」
「……ほ、本当?」
「本当だよ。信じられないなら、聖女様にお渡ししてみて」
子どもたちは顔を見合わせて緊張した顔をしていたが、年上の男の子が地面に落ちているネックレスをそっと拾い上げた。
そして怯えながらも奈央に近づき、ネックレスを差し出す。
奈央は不安げにしながらも、微笑んでネックレスを受け取った。
その瞬間、あたりは眩い光に包まれた。
眩しさに目をつむりながら、俺は「聖女様、お放しください!」と叫ぶ。
すると奈央はネックレスを落としたのか、地面に置いたのか、まばゆい光がふっと消え去った。
瞬きをしながら奈央と子どもたちのほうをみると、子どもたちは唖然とした表情で奈央を見つめていた。
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