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187 問い
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魔王の配慮で、俺たちの部屋は娘の部屋近くの隠し部屋に移してもらった。
もともとは急な襲撃に備えて、娘をかくまうために用意された部屋らしい。
なかは想像以上に広く、生活に必要な設備は一通りそろっている。
いざというときは、ここにしばらく籠城することもできるそうだ。
また神の行動が読めない以上、護衛対象はひとまとめにしておいた方がいい。
そうノアが提案し、娘も俺たちと同じ部屋にうつってくることになった。
部屋といっても、マンションの一室のように、共用スペースのほかに個室が3つも用意されている。
魔王は「狭いところに申し訳ない」と顔を曇らせていたが、正直元の世界の俺の家よりも広い部屋だ。
「……まさかここに通されるなんて、驚きました」
感嘆した様子でそう言ったのは、アリーだった。
アリーは俺たちの荷物をまとめて運び、部屋の支度も整えてくれたらしい。
隠し部屋の存在は一部の高位魔族にしか知らされておらず、その正確な場所を知るものはさらに絞られる。
アリーも、隠し部屋の存在は知っていたが、場所は今日初めて知ったそうだ。
「それに、ユノ様のご家族だったなんて!今まで大変なご無礼を……」
「いやいや、すごく丁寧に対応していただいて感謝しています。こちらこそ事情があったとはいえ、最初からお伝えできず、すみませんでした」
俺とアリーがぺこぺこと頭を下げあっている横で、娘と妻がくすくすと笑う。
娘の腕の中には、心地よさそうな顔をしたコトラが抱かれている。
ちなみに絶体絶命の状況を打破するきっかけを作ってくれたことに感謝し、頭を撫でようとした俺の手は前足ではたかれてしまった。
相変わらずな俺たちの関係性に、娘が大笑いしたことは言うまでもない。
「コトラも来てくれてるなんて思わなかったなぁ。助けに来てくれてありがとう。……でも、もう危ないことをしちゃだめだよ」
娘がコトラを撫でながら言う。
コトラは気持ちよさそうにのどを鳴らし、完全に娘に甘え切っている。
魔王も小動物に惹かれるものがあるのか、コトラに向かってこっそり手を伸ばしていたが、思いきり威嚇されていたのを俺は見逃さなかった。
残念そうに肩を落とす魔王に溜飲が下がったのは、妻と娘には内緒だ。
一通り空気が和んだところで、俺は静かに切り出した。
「なあ、ノア」
「なんだい?」
「……まだ、教えてもらうことはできないのか?」
「……何を?」
「神の目的だ。どうして娘をさらったのか……どうして、娘でなくてはならないのか」
じっと俺を見据えるノアの瞳は、迷うように揺らいだ。
無言のまま、ノアは何かを考えこんでいるようだった。
ノアはチラリと娘に視線を向け、軽い溜息をつく。
そして再び俺に視線を戻したとき、すでにその瞳から迷いの色は消えていた。
「伊月くんは、僕が事情を知ってるって思うんだ?」
「……ああ」
思えば、ノアは娘の話になると複雑そうな顔をすることが多かった。
それは、何かしらの情報を得ていたからなのだろう。
そしてノアは、俺たちにその事情を話そうかずっと悩んでいたように思える。
「前にさ、柚乃のことを知りたいかって聞かれたことがあっただろう?」
「うん。……伊月くんたちは、柚乃ちゃん本人に聞くから大丈夫だって言ったよね」
「この世界に来る前にも、複雑そうな顔をしていた」
「……そうだったかな」
ノアは少し困ったように、髪をかき上げた。
その隣で、サミューも目を伏せる。
「……いいよ」
ノアの言葉に、誰よりも驚いた顔をしたのはサミューだった。
目を見開いて、ノアのことを驚愕の表情で見つめている。
「君たち家族にとってはつらい話になるかもしれないけど、それでもいいならね」
「……覚悟はできている。詩織、柚乃。お前たちは席を外していてもいい」
俺がそういうと、二人は首を横に振った。
その動きがあんまりそっくりで、俺は「やっぱり親子だな」と呑気なことを思った。
もともとは急な襲撃に備えて、娘をかくまうために用意された部屋らしい。
なかは想像以上に広く、生活に必要な設備は一通りそろっている。
いざというときは、ここにしばらく籠城することもできるそうだ。
また神の行動が読めない以上、護衛対象はひとまとめにしておいた方がいい。
そうノアが提案し、娘も俺たちと同じ部屋にうつってくることになった。
部屋といっても、マンションの一室のように、共用スペースのほかに個室が3つも用意されている。
魔王は「狭いところに申し訳ない」と顔を曇らせていたが、正直元の世界の俺の家よりも広い部屋だ。
「……まさかここに通されるなんて、驚きました」
感嘆した様子でそう言ったのは、アリーだった。
アリーは俺たちの荷物をまとめて運び、部屋の支度も整えてくれたらしい。
隠し部屋の存在は一部の高位魔族にしか知らされておらず、その正確な場所を知るものはさらに絞られる。
アリーも、隠し部屋の存在は知っていたが、場所は今日初めて知ったそうだ。
「それに、ユノ様のご家族だったなんて!今まで大変なご無礼を……」
「いやいや、すごく丁寧に対応していただいて感謝しています。こちらこそ事情があったとはいえ、最初からお伝えできず、すみませんでした」
俺とアリーがぺこぺこと頭を下げあっている横で、娘と妻がくすくすと笑う。
娘の腕の中には、心地よさそうな顔をしたコトラが抱かれている。
ちなみに絶体絶命の状況を打破するきっかけを作ってくれたことに感謝し、頭を撫でようとした俺の手は前足ではたかれてしまった。
相変わらずな俺たちの関係性に、娘が大笑いしたことは言うまでもない。
「コトラも来てくれてるなんて思わなかったなぁ。助けに来てくれてありがとう。……でも、もう危ないことをしちゃだめだよ」
娘がコトラを撫でながら言う。
コトラは気持ちよさそうにのどを鳴らし、完全に娘に甘え切っている。
魔王も小動物に惹かれるものがあるのか、コトラに向かってこっそり手を伸ばしていたが、思いきり威嚇されていたのを俺は見逃さなかった。
残念そうに肩を落とす魔王に溜飲が下がったのは、妻と娘には内緒だ。
一通り空気が和んだところで、俺は静かに切り出した。
「なあ、ノア」
「なんだい?」
「……まだ、教えてもらうことはできないのか?」
「……何を?」
「神の目的だ。どうして娘をさらったのか……どうして、娘でなくてはならないのか」
じっと俺を見据えるノアの瞳は、迷うように揺らいだ。
無言のまま、ノアは何かを考えこんでいるようだった。
ノアはチラリと娘に視線を向け、軽い溜息をつく。
そして再び俺に視線を戻したとき、すでにその瞳から迷いの色は消えていた。
「伊月くんは、僕が事情を知ってるって思うんだ?」
「……ああ」
思えば、ノアは娘の話になると複雑そうな顔をすることが多かった。
それは、何かしらの情報を得ていたからなのだろう。
そしてノアは、俺たちにその事情を話そうかずっと悩んでいたように思える。
「前にさ、柚乃のことを知りたいかって聞かれたことがあっただろう?」
「うん。……伊月くんたちは、柚乃ちゃん本人に聞くから大丈夫だって言ったよね」
「この世界に来る前にも、複雑そうな顔をしていた」
「……そうだったかな」
ノアは少し困ったように、髪をかき上げた。
その隣で、サミューも目を伏せる。
「……いいよ」
ノアの言葉に、誰よりも驚いた顔をしたのはサミューだった。
目を見開いて、ノアのことを驚愕の表情で見つめている。
「君たち家族にとってはつらい話になるかもしれないけど、それでもいいならね」
「……覚悟はできている。詩織、柚乃。お前たちは席を外していてもいい」
俺がそういうと、二人は首を横に振った。
その動きがあんまりそっくりで、俺は「やっぱり親子だな」と呑気なことを思った。
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