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188 世界創造ブーム
「……どこから話そうかな」
遠い日を懐かしむように、ノアが目を細めた。
そんなに古くからの因縁があるのかと、ノアの言葉に耳を傾ける。
「あれはそう、第三次世界創造ブームのころ……」
「……ちょっと待て」
「なんなの、そのブームってのは!」
黙って話を聞いていようと思ったが、さすがに第三次世界創造ブームとやらは見逃せない。
気になったのは娘も同じだったようで、流れるような突っ込みを入れている。
「何って言われても……。そうだね、神のあいだで世界を創るのが流行った時期があるんだよ」
「流行ったって……軽いな」
「まあ実際、神にとっては手軽な娯楽のようなものだからね。君たちがペットを飼ったり、園芸を楽しんだりするのとさほど変わらない感覚かな?……伊月くんたちには、ゲームや映画のようなもの、といった方がわかりやすいかもしれないね」
唖然とする俺たちを尻目に、ノアはサミューに「こないだきたのは何度目のブームだったっけ?」と訊ねる。
サミューは『おそらく37度目かと』と答えた。
それほどのブームの中、どれだけ多くの世界が創られたのだろう。
遊び半分で創られた世界だからこそ、その住人の命をあれほど軽んじられるのだと、腹立たしく思いつつも納得した。
「世界って、そんなに手軽に創れるものなんだな……」
ぼそりとつぶやいた俺の言葉を、ノアが「そうだね」と肯定する。
「一応簡単な審査はあるんだけど、落ちる神はほとんどいないかな。世界の設計図に大きな欠陥がある場合や、かつて世界の管理を著しく怠ったことがある場合なんかをのぞいてね」
世界創造ブームが加速する中で、神のあいだで法整備を求める声が上がったという。
世界を創ったものの、飽きて管理を怠る者。
次々に新しい世界を生み出し、管理の手が回らなくなった者。
自分の作った世界の中の生き物を殺して遊ぶ者。
そうした者たちを野放しにしておいてはいけないという意見が集まったのだそうだ。
それを受け、議会での話し合いの結果、3つのルールが制定された。
一つ、ほかの神の所有する世界に無許可で干渉しないこと。
二つ、創造した世界の管理を放棄しないこと。
三つ、創造した世界へ過度な干渉をしないこと。
「……議会とか法整備とか、ずいぶん現実的だな」
「そりゃそうさ。多数の統率をとるためには、秩序が必要だからね。神は身勝手なものだから、あまり好き勝手するとすぐに戦争になってしまう。……ま、人間や魔族とさほど変わらないということだね」
創造された世界は、神力によって維持される。
水をやらないと植物が枯れるように、餌を与えないとペットが死んでしまうように、神力がなければ世界はやがて滅んでしまう。
そうならないよう、神は定期的に世界へ神力を注がなくてはならない。
ただし、過剰な栄養は毒となる。
神の干渉が強ければ、世界はバランスを崩してしまう。
……何事も、適量が大切だということだろう。
「過度な干渉というのは……?」
「そうだな。例えば、その世界の住人に加護を与えるのは問題ない。神託として、災害の予見や発展のヒントを与えることも。でも、神が自ら世界に顕現して勇者になったり、魔王や大量虐殺者になったりして世界を大きく変えるような変化をもたらすことは許されない」
「顕現すること自体は、問題ないのか?」
「うん。森を散策したり、街で買い物したりするのは大丈夫。なかには、その世界の住人のふりをしめ暮らしている神もいるくらいだよ」
俺たちの巡ってきた世界の神は問題児ばかりだったが、大半の神がルールを守って世界を管理しているという。
今まで出会った神々の方がイレギュラーだと知れて、少しほっとした。
遠い日を懐かしむように、ノアが目を細めた。
そんなに古くからの因縁があるのかと、ノアの言葉に耳を傾ける。
「あれはそう、第三次世界創造ブームのころ……」
「……ちょっと待て」
「なんなの、そのブームってのは!」
黙って話を聞いていようと思ったが、さすがに第三次世界創造ブームとやらは見逃せない。
気になったのは娘も同じだったようで、流れるような突っ込みを入れている。
「何って言われても……。そうだね、神のあいだで世界を創るのが流行った時期があるんだよ」
「流行ったって……軽いな」
「まあ実際、神にとっては手軽な娯楽のようなものだからね。君たちがペットを飼ったり、園芸を楽しんだりするのとさほど変わらない感覚かな?……伊月くんたちには、ゲームや映画のようなもの、といった方がわかりやすいかもしれないね」
唖然とする俺たちを尻目に、ノアはサミューに「こないだきたのは何度目のブームだったっけ?」と訊ねる。
サミューは『おそらく37度目かと』と答えた。
それほどのブームの中、どれだけ多くの世界が創られたのだろう。
遊び半分で創られた世界だからこそ、その住人の命をあれほど軽んじられるのだと、腹立たしく思いつつも納得した。
「世界って、そんなに手軽に創れるものなんだな……」
ぼそりとつぶやいた俺の言葉を、ノアが「そうだね」と肯定する。
「一応簡単な審査はあるんだけど、落ちる神はほとんどいないかな。世界の設計図に大きな欠陥がある場合や、かつて世界の管理を著しく怠ったことがある場合なんかをのぞいてね」
世界創造ブームが加速する中で、神のあいだで法整備を求める声が上がったという。
世界を創ったものの、飽きて管理を怠る者。
次々に新しい世界を生み出し、管理の手が回らなくなった者。
自分の作った世界の中の生き物を殺して遊ぶ者。
そうした者たちを野放しにしておいてはいけないという意見が集まったのだそうだ。
それを受け、議会での話し合いの結果、3つのルールが制定された。
一つ、ほかの神の所有する世界に無許可で干渉しないこと。
二つ、創造した世界の管理を放棄しないこと。
三つ、創造した世界へ過度な干渉をしないこと。
「……議会とか法整備とか、ずいぶん現実的だな」
「そりゃそうさ。多数の統率をとるためには、秩序が必要だからね。神は身勝手なものだから、あまり好き勝手するとすぐに戦争になってしまう。……ま、人間や魔族とさほど変わらないということだね」
創造された世界は、神力によって維持される。
水をやらないと植物が枯れるように、餌を与えないとペットが死んでしまうように、神力がなければ世界はやがて滅んでしまう。
そうならないよう、神は定期的に世界へ神力を注がなくてはならない。
ただし、過剰な栄養は毒となる。
神の干渉が強ければ、世界はバランスを崩してしまう。
……何事も、適量が大切だということだろう。
「過度な干渉というのは……?」
「そうだな。例えば、その世界の住人に加護を与えるのは問題ない。神託として、災害の予見や発展のヒントを与えることも。でも、神が自ら世界に顕現して勇者になったり、魔王や大量虐殺者になったりして世界を大きく変えるような変化をもたらすことは許されない」
「顕現すること自体は、問題ないのか?」
「うん。森を散策したり、街で買い物したりするのは大丈夫。なかには、その世界の住人のふりをしめ暮らしている神もいるくらいだよ」
俺たちの巡ってきた世界の神は問題児ばかりだったが、大半の神がルールを守って世界を管理しているという。
今まで出会った神々の方がイレギュラーだと知れて、少しほっとした。
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