娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち

文字の大きさ
231 / 266

208 判決

しおりを挟む
 神の言葉に、嘘はないように思えた。
 しかし妻は「約束を破ったら承知しないわよ」と忘れずにくぎを刺している。
 俺も同じ気持ちで、神に厳しい視線を向た。

 神は俺たちの気持ちを受け止めたうえで、確かに頷く。
 それでもやはり、胸の中を渦巻く不安やさみしさは消えない。


 そんな俺たちを労うように、ノアが俺と妻の背中をポンポンと叩いた。
 あまりに優しい手つきで、思わず泣きそうになったが堪える。

 ノアは大きく息を吸い込むと、それまでの穏やかな表情から凛とした表情に切り替えた。
 そして神の前に立ち、冷たい声で言い放つ。


「無許可での異世界からの略奪および干渉等の罪により、そなたを有罪とする。罰として、神の力の半分を剥奪。異論はないな?」

『……ああ』


 いきなり始まった判決の宣告に、俺と妻は戸惑いを隠せず、顔を見合わせた。
 しかも神は動揺する様子は一切なく、当然のように判決を受け入れている。


「ノア……?」


 恐る恐る呼びかけると、ノアはふっと表情をやわらげ、困ったように笑った。


「僕は神の世界の秩序を司る存在なんだ。今まで言えなくてごめんね」

「秩序……。裁判官みたいなものか?」

「そうだね……君たちの世界で言うと、裁判官と検察官と裁判官を組み合わせたようなものかな?」


 それはずいぶんと大変そうに思えるが、神の世界の秩序は緩く、それを乱すものはごく少数らしい。
 そのため、ノアやその部下たちだけで十分やっていけるという。


「今回の僕らの務めは、神の間で横行している異世界転移の取り締まりだったんだ。今まで巡ってきた世界の神々にも、罪の重さに応じた罰を与えることになる。本来なら関係各所へ手続きをしなくちゃならないから、判決を下すのはもっと先になるんだけど……彼の場合は特例として、この場で罰を与える許可が下りたんだ」


 ノアがほかの神々と比べても強い力を持っているのは、取り締まる側だったからなのか。
 そう思うと納得できた。
 しかし、この世界の神だけ特例となった理由がよくわからない。
 それに、神の力を半分剥奪するという判決が重いのか軽いのかも、俺たちの感覚では予想もつかない。


「神の世界には序列っていうものがあるんだ。そしてその序列は、所持している力の大きさによって決まる。彼は上級の神で序列は高い方だったんだけど、力が半減することによって下級まで落ちることになるだろうね」

「えっと……それは大変なこと、なんだよな?」

「うん、伊月くんがよく読んでた異世界物の小説で例えるなら、国外追放は免れたけど、爵位剥奪により平民落ちって感じかな?」

「……よくわかった」


 俺はそう答え、しみじみと「改めて考えると、すごい神様だったんだな」とつぶやいた。

 ノアによると、上級神でもなければほかの神の管理する世界に干渉することなどできないそうだ。
 それはつまり、今までの世界の神々も総じて上級の神だったということになる。
 これから神の世界のパワーバランスは大きく変わるだろうね、とこぼしたノアからは哀愁を感じた。


「神の力って、取り戻せるのか?」

「不可能ではないよ。自分の世界で信仰を集めるほかにも、いくつか方法がある。でもそのどれも、長い年月がかかることだけは確かだね」

「そうか……」


 ちらりと神を見ると、俺たちの視線に気づいた神は、ふっと微笑んだ。
 判決には何の不服もないとでも言いたげな顔だった。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...