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215 詰問
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「この中に証拠があるのか?」
「ええ。あるというか、いるというか」
「……いるって、まさか……!」
こわばった表情でサーシャがドアノブに手をかける。
しばらく悩んだあと、覚悟を決めるように軽く息を吐いてサーシャが扉を開いた。
ドアに阻まれて、なかの様子は見えない。
部屋の中を見つめるサーシャの瞳が、大きく見開かれる。
「どうして……」
溢れた言葉の続きは、声にはならなかった。
ゆっくりと室内に足を進めるサーシャについて、俺も部屋に入る。
サーシャの背中に隠れて、檻の中の神の表情は見えない。
ドアの隙間から、心配顔の妻と娘が顔を出す。
魔王はまだ神と向き合う心が決まっていないのか、ついてきていないようだった。
「……嘘をついていたのか?」
静かな声で、サーシャが問いかける。
神は返事をせず、黙ったままだ。
「人間だと言ったのは嘘だったのかと聞いている!」
強い口調でサーシャが言い放つ。
檻の中の神は俯いたまま、だんまりを決め込んでいた。
業を煮やしたサーシャがツカツカと檻に近づき、仁王立ちで檻を見下す。
サーシャの足音にビクッと肩を揺らす神を、俺は見逃さなかった。
「なぜ答えない?都合が悪いからか?お前の悪事については、すでに聞いたあとだ。隠し立てしてもいいことなど一つもないぞ」
ガシャ、と音を立ててサーシャが檻を掴む。
ドスの効いた迫力のある声に、自分が怒られているわけでもないのに冷や汗が出た。
それでも神は応えず、顔も上げない。
まるで別人だとでも言うように知らんふりを貫き通している。
往生際が悪いが、顔を上げられない気持ちも理解できなくはない。
「……私とは、もう話もしたくないのか?」
気丈なサーシャの声が震える。
唇を噛んで、涙を堪えるように神を睨みつけるその顔が、なんとも切ない。
弱々しい声に、神が思わず顔を上げた。
そしてその表情を見て青ざめ、檻を掴んだままのサーシャの手を強く握る。
『すまないっ!……すまない、すまない……っ!』
繰り返し謝る神の声は切実で、深い後悔の念が滲んでいた。
サーシャはぐっと唇を噛みしめたまま、情けなく謝り続ける神を見つめている。
そのとき、ドアの方からカタンと物音がした。
振り返ってみてみると、ノアに促されたらしい魔王が部屋のなかを覗き込んでいる。
魔王の位置からは、きっとサーシャの表情は見えないだろう。
それでも、懇願するように謝罪を口にする父の姿に何か思うところがあるのか、複雑そうな顔をしている。
目の前の最愛の人に必死で息子の存在に気づいていない神は、サーシャの手を握ったまま懺悔を続けていた。
『卑怯な真似をして、君を傷つけてしまったこと、本当にすまない。正体を知られるのが怖かった。君が、ただの人間である俺を愛してくれたと知っていたから』
「……人間でないと知られれば、私がお前を捨てるとでも?」
『……関係が変わるのが怖かった』
「だから死んだふりをして、私のもとを去ったのか?……お前を失って嘆く姿は、さぞ滑稽だったろうな」
皮肉めいた言葉に、神がまた謝罪する。
しかし言葉とは裏腹に、サミューの表情は穏やかだった。
「私は、お前が何者でも構わなかった。ただそばにいて、ともに生きられればそれでよかった」
『……すまない』
「こんな……こんな腹立たしい場面なのに、怒りよりもお前に会えた喜びのほうが勝っている……。なんて愚かな……」
消え入りそうな声でサーシャがいい終える頃、ノアがパチンと指を鳴らした。
その音とともに、2人を阻んでいた檻は元の網の姿に戻ってその足元に落ちた。
神が驚いた表情でノアを見る。
ノアが「もう必要ないでしょ」と返すと、神は深く頭を下げた。
そして、目の前の愛する人を力強く抱きしめた。
「ええ。あるというか、いるというか」
「……いるって、まさか……!」
こわばった表情でサーシャがドアノブに手をかける。
しばらく悩んだあと、覚悟を決めるように軽く息を吐いてサーシャが扉を開いた。
ドアに阻まれて、なかの様子は見えない。
部屋の中を見つめるサーシャの瞳が、大きく見開かれる。
「どうして……」
溢れた言葉の続きは、声にはならなかった。
ゆっくりと室内に足を進めるサーシャについて、俺も部屋に入る。
サーシャの背中に隠れて、檻の中の神の表情は見えない。
ドアの隙間から、心配顔の妻と娘が顔を出す。
魔王はまだ神と向き合う心が決まっていないのか、ついてきていないようだった。
「……嘘をついていたのか?」
静かな声で、サーシャが問いかける。
神は返事をせず、黙ったままだ。
「人間だと言ったのは嘘だったのかと聞いている!」
強い口調でサーシャが言い放つ。
檻の中の神は俯いたまま、だんまりを決め込んでいた。
業を煮やしたサーシャがツカツカと檻に近づき、仁王立ちで檻を見下す。
サーシャの足音にビクッと肩を揺らす神を、俺は見逃さなかった。
「なぜ答えない?都合が悪いからか?お前の悪事については、すでに聞いたあとだ。隠し立てしてもいいことなど一つもないぞ」
ガシャ、と音を立ててサーシャが檻を掴む。
ドスの効いた迫力のある声に、自分が怒られているわけでもないのに冷や汗が出た。
それでも神は応えず、顔も上げない。
まるで別人だとでも言うように知らんふりを貫き通している。
往生際が悪いが、顔を上げられない気持ちも理解できなくはない。
「……私とは、もう話もしたくないのか?」
気丈なサーシャの声が震える。
唇を噛んで、涙を堪えるように神を睨みつけるその顔が、なんとも切ない。
弱々しい声に、神が思わず顔を上げた。
そしてその表情を見て青ざめ、檻を掴んだままのサーシャの手を強く握る。
『すまないっ!……すまない、すまない……っ!』
繰り返し謝る神の声は切実で、深い後悔の念が滲んでいた。
サーシャはぐっと唇を噛みしめたまま、情けなく謝り続ける神を見つめている。
そのとき、ドアの方からカタンと物音がした。
振り返ってみてみると、ノアに促されたらしい魔王が部屋のなかを覗き込んでいる。
魔王の位置からは、きっとサーシャの表情は見えないだろう。
それでも、懇願するように謝罪を口にする父の姿に何か思うところがあるのか、複雑そうな顔をしている。
目の前の最愛の人に必死で息子の存在に気づいていない神は、サーシャの手を握ったまま懺悔を続けていた。
『卑怯な真似をして、君を傷つけてしまったこと、本当にすまない。正体を知られるのが怖かった。君が、ただの人間である俺を愛してくれたと知っていたから』
「……人間でないと知られれば、私がお前を捨てるとでも?」
『……関係が変わるのが怖かった』
「だから死んだふりをして、私のもとを去ったのか?……お前を失って嘆く姿は、さぞ滑稽だったろうな」
皮肉めいた言葉に、神がまた謝罪する。
しかし言葉とは裏腹に、サミューの表情は穏やかだった。
「私は、お前が何者でも構わなかった。ただそばにいて、ともに生きられればそれでよかった」
『……すまない』
「こんな……こんな腹立たしい場面なのに、怒りよりもお前に会えた喜びのほうが勝っている……。なんて愚かな……」
消え入りそうな声でサーシャがいい終える頃、ノアがパチンと指を鳴らした。
その音とともに、2人を阻んでいた檻は元の網の姿に戻ってその足元に落ちた。
神が驚いた表情でノアを見る。
ノアが「もう必要ないでしょ」と返すと、神は深く頭を下げた。
そして、目の前の愛する人を力強く抱きしめた。
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