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217 涙
同意を求めようと、妻が娘を振り向いた。
しかし娘は顔を両手で覆い、泣きじゃくっている。
驚いた妻が「どうしたの!?」と娘に駆け寄った。
俺も慌てて娘のそばに向かう。
「神様も反省してくれたし、もう怖いことなんてないのよ?」
「そうだぞ。2人が話している間に、こっちもしっかり話をしたんだ。だから大丈夫!」
2人で説明するも、娘は泣きじゃくったまま、首を横に振るだけだ。
おろおろしている俺たちの背を、ノアがぽんっと叩いた。
「ちょっと落ち着こうか?」
娘が泣いているのに落ち着けるわけがない。
そう瞳で訴えると、ノアは呆れたように肩をすくめた。
思わずムッとした俺に、魔王が「悲しいわけではないはずだ」と告げる。
意味がわからずに妻を見ると、妻も首を傾げていた。
「2人とも、鍵のこと柚乃ちゃんにまだ話してなかったでしょ」
「……あ」
そういえば、勇者やら侵入者やらでバタバタしていて、まだ伝えられていなかった。
妻はまさか俺が話していなかったとは思っていなかったのか、ギロリと俺を睨みつける。
そしてようやく、温かい眼差しで娘を見つめている魔王とノアの真意がわかった。
「……嬉し泣きか……」
ポツリと呟くと、娘が小さく頷いた。
俺はなんだか身体の力が抜けて、ほっと胸を撫で下ろした。
ふと背後で、ふふっと笑い声が聞こえる。
振り返ると、サーシャが「すまない。つい……」と笑っている。
「そなたらがどんな人間なのか、よくわかった。……ユノがこちらの世界で幸せに暮らしていけるよう、できる限りのことをしよう。何か足りないことがあれば、いつでも言ってほしい」
「……ありがとうございます」
「それと確認なんだが、ユノには我が夫への恐怖心が残っているのではないか?それならば、今後顔を合わせないよう取り計らうこともできる」
「……い、いえ……」
鼻をすすりながら、娘が答える。
涙をゴシゴシと拭い、にっこりと微笑んだ。
「正直にいうと、まだ少し怖いです……。でも、アークのためにここまで必死になれるお父さんなら、きっとこの子にとってもいいおじいちゃんになってくれると思うんです」
お腹を擦りながら言う娘に、サーシャが「まさか……」と目を丸くする。
「私のお腹には、新しい命が宿っています。この子の成長を、おふたりにも見守ってほしいんです」
「……わかった」
そういいながら、サーシャは娘をそっと抱きしめ「ありがとう」と囁いた。
娘は照れくさそうにしながらも、うれしそうに笑っている。
そんな2人の様子を、魔王が曖昧に微笑みながら見つめていた。
正直、複雑な心境なのだろう。
罰を受けたとは言え、諸悪の根源ともいえる父にどう接すればいいのか、本人が一番迷っているはずだ。
俺はそっと魔王に近づき、その背をポンと押した。
「い、イツキ殿……?」
戸惑う魔王に、俺はにっと笑ってみせた。
俺たちを気にする必要はないと伝えるために。
こういうのはきっと、先延ばしにすればするほど尾を引いてしまうものだ。
ギクシャクした家庭環境は娘にも孫にも悪影響になるだろう。
わだかまりは、なるべく小さくしておいたほうがいい。
「彼の犯した罪と、彼の君への愛情は別物だ。俺たちのために、君が彼を憎む必要はない」
「し、しかし……」
「やり方は間違っていたかもしれないが、君の父親の愛情は本物だ。そこは認めてあげてもいいんじゃないかと、同じ父親として思うよ」
魔王はちらりと神に視線を向ける。
神は泣き出しそうな顔で、魔王を見ていた。
しかし娘は顔を両手で覆い、泣きじゃくっている。
驚いた妻が「どうしたの!?」と娘に駆け寄った。
俺も慌てて娘のそばに向かう。
「神様も反省してくれたし、もう怖いことなんてないのよ?」
「そうだぞ。2人が話している間に、こっちもしっかり話をしたんだ。だから大丈夫!」
2人で説明するも、娘は泣きじゃくったまま、首を横に振るだけだ。
おろおろしている俺たちの背を、ノアがぽんっと叩いた。
「ちょっと落ち着こうか?」
娘が泣いているのに落ち着けるわけがない。
そう瞳で訴えると、ノアは呆れたように肩をすくめた。
思わずムッとした俺に、魔王が「悲しいわけではないはずだ」と告げる。
意味がわからずに妻を見ると、妻も首を傾げていた。
「2人とも、鍵のこと柚乃ちゃんにまだ話してなかったでしょ」
「……あ」
そういえば、勇者やら侵入者やらでバタバタしていて、まだ伝えられていなかった。
妻はまさか俺が話していなかったとは思っていなかったのか、ギロリと俺を睨みつける。
そしてようやく、温かい眼差しで娘を見つめている魔王とノアの真意がわかった。
「……嬉し泣きか……」
ポツリと呟くと、娘が小さく頷いた。
俺はなんだか身体の力が抜けて、ほっと胸を撫で下ろした。
ふと背後で、ふふっと笑い声が聞こえる。
振り返ると、サーシャが「すまない。つい……」と笑っている。
「そなたらがどんな人間なのか、よくわかった。……ユノがこちらの世界で幸せに暮らしていけるよう、できる限りのことをしよう。何か足りないことがあれば、いつでも言ってほしい」
「……ありがとうございます」
「それと確認なんだが、ユノには我が夫への恐怖心が残っているのではないか?それならば、今後顔を合わせないよう取り計らうこともできる」
「……い、いえ……」
鼻をすすりながら、娘が答える。
涙をゴシゴシと拭い、にっこりと微笑んだ。
「正直にいうと、まだ少し怖いです……。でも、アークのためにここまで必死になれるお父さんなら、きっとこの子にとってもいいおじいちゃんになってくれると思うんです」
お腹を擦りながら言う娘に、サーシャが「まさか……」と目を丸くする。
「私のお腹には、新しい命が宿っています。この子の成長を、おふたりにも見守ってほしいんです」
「……わかった」
そういいながら、サーシャは娘をそっと抱きしめ「ありがとう」と囁いた。
娘は照れくさそうにしながらも、うれしそうに笑っている。
そんな2人の様子を、魔王が曖昧に微笑みながら見つめていた。
正直、複雑な心境なのだろう。
罰を受けたとは言え、諸悪の根源ともいえる父にどう接すればいいのか、本人が一番迷っているはずだ。
俺はそっと魔王に近づき、その背をポンと押した。
「い、イツキ殿……?」
戸惑う魔王に、俺はにっと笑ってみせた。
俺たちを気にする必要はないと伝えるために。
こういうのはきっと、先延ばしにすればするほど尾を引いてしまうものだ。
ギクシャクした家庭環境は娘にも孫にも悪影響になるだろう。
わだかまりは、なるべく小さくしておいたほうがいい。
「彼の犯した罪と、彼の君への愛情は別物だ。俺たちのために、君が彼を憎む必要はない」
「し、しかし……」
「やり方は間違っていたかもしれないが、君の父親の愛情は本物だ。そこは認めてあげてもいいんじゃないかと、同じ父親として思うよ」
魔王はちらりと神に視線を向ける。
神は泣き出しそうな顔で、魔王を見ていた。
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