短編ホラー

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ピアスの穴

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ピアスにまつわる都市伝説って知ってる?
ピアスを開けたらその穴から白い糸みたいなものが出てて、それを引っ張って取ろうとしたら失明しちゃった。それは視神経だった。っていう話。
結構怖い話なんだけど、そんな話関係なくピアスを開ける人は多いよね。


私の友達のミカも最近ピアスを開けた。
いや、友達だった。
ミカは正直他の子よりも可愛くて、その自覚もある子だ。
だから人の彼氏を取ってしまう、ということはあった。そしてそれは仲の良かった私も例外ではなかった。
私はミカが嫌いになった。今となっては何で友達だったのか不思議なくらいに。
でもただやられっぱなしでミカと離れるのも癪だったから私はミカを痛い目にあわせてやろうと、彼を取られてからもそれなりに仲良くした。

ミカが私の彼氏を取ったのと同時期、ミカはピアスを開けた。人生初らしい。
私はいいことを思いついた。
ミカを本気で怖がらせてやろうと、その都市伝説の話をした。
もちろんこの話だけじゃ白い糸が出ないと怖くないから、もう一つ自分で勝手に考えた話を付け足して。


その話がこうだ、
「ピアスにまつわる話がもう一つあってね。ピアスを開けるっていうのは、体に小さな穴が開くってことでしょ?
だから一度ピアスの経験がある人なら慣れてるから大丈夫なんだけど、はじめての人は身体面だけじゃなくて霊的な面でも気をつけないといけないんだって。
人の体に新しく開いた小さな穴に、霊は興味を示すんだよ。そしてその穴を少しずつ広げようとするの。
そして穴が穴として限界まで大きくなった時、ピアスを開けた人は死んじゃうの。もちろんはじめてピアスを開けた人が誰でもそうなるわけじゃないよ。ただそうなる可能性があるだけ。」

我ながらかなり適当に作られた話だと思う。でもミカが怖がりのバカで助かった。
ミカはこんな話に結構怖がって、しきりにピアスの穴を気にしだすようになっていった。
作り話に踊らされるミカの姿は滑稽で面白かった。


でもある日、ミカはこんなことを言いだした。
「夜になると何かが私のピアスの穴を広げてる。私は死んじゃうかもしれない…」

最初は冗談かと思ったけど、かなり本気で言ってるみたいだった。
毎日毎日同じことを言ってくる。
心なしか私にもミカのピアスの穴はだんだん大きくなっていくように見えた。


一週間ぐらいして、ミカが学校に来なくなった。様子を見に行ったりは別にしなかったけど、ちょっと私も怖くなった。



更に一週間後、ミカが死んだと担任からクラスのみんなに伝えられた。
あんなデタラメの作り話が本当になったなんて信じたくなかったけど、私はもうこれからの人生でピアスを開けようだなんて思わなくなった。






…そして今度、私は手術で肺に穴を開けることになった。
体に穴を開けるのだ。

せめてあの時ミカのお見舞いにでも行けば良かった。
そうすればまだどうなっていくか分かったのに。覚悟が持てたかもしれないのに…

今、私は怖くてたまらない。

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