虚弱体質で偽聖女だと追放された私は、隣国でモフモフ守護獣様の白き聖女になりました

・めぐめぐ・

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第37話 虚弱聖女と聖獣

「今、聖獣……と言ったか? 守護獣ではなく?」

 レイ様の疑問が、部屋の空気を震わせた。私もレイ様と同じ意見を持っていた。
 だって【聖獣】という単語を、今まで耳にしたことがなかったから。

 ルゥナ様は頷き、私たちの聞き間違いでないことを肯定する。

「まあ待て。順番に話をしていく」

 そう言って語られたのは、私たちが知らない、この世界の成り立ちの物語だった。

 遙か昔、【創世の女神】と女神様のお役目を補佐される存在――【神獣】がいた。
 女神様は人の形だが、神獣様はラメンテたちような獣の姿をされているのだという。

 お二方は長い時間ともに過ごし、たくさんの世界を創造してきた。

 世界創造――それが、女神様と神獣様のお役目だったから。

 そして最後に創られたのが、【聖獣界】と【聖獣】という存在だった。

「まあ、聖獣とは種族の名前じゃ。わしらを種族として【人間】と呼ぶのと同じこと」

 システィーナ様の補足により、聖獣という存在の意味を理解することが出来た。

 女神様と神獣様によって創り出された聖獣と聖獣界だったが、大きな問題があった。

 それは、聖獣界が非常に不安定な世界だったこと。

 しかし生み出した聖獣界と聖獣を無にしたくはない。
 その想いを持ち、女神様と神獣様が出した解決策は――

「聖獣界を支える世界を、もう一つ創ることだ」
「それってもしかして……」

 私の呟きに、ルゥナ様は強く頷いた。

「ああ、そうだ。聖獣界を支えるために創られたもう一つの世界――それが、ここ人間界だ」

 まさか、この世界に、聖獣界を支える役目があったなんて、誰が想像できただろう。

 しかしこれで全てが丸く収まらなかった。
 何故なら、新たに生み出された人間界も聖獣界と同じく、不安定だったのだ。

 不安定な世界同士が、不安定なまま支え合っている。それが今の現状なのだという。

 レイ様がうーんと唸る。

「話を聞く限りその女神とやらは……世界を生み出すのが下手なのか?」

 生み出した世界はことごとく不安定。
 レイ様がそういう感想を持つのも仕方が無いと思った。しかしそれを聞いたルゥナ様が、今まで見たことのないほどの怒りを、黒い双眸に滲ませた。

「……はっ? 今お前、なんつった? 俺たちを生み出した女神様に、何つった!?」

 あまりの剣幕に、皆がたじろいだ。ルゥナ様と対峙したレイ様すら、彼の怒りに圧倒されているようだ。
 そんな中、システィーナ様の軽やかな笑い声が響き渡った。

 緊張で満たされていた部屋の空気が、ふわっと軽くなる。
 
「世界が不安定だったのは、数多の世界を創造し続けたことで、創造の要である女神の大いなる力に陰りが見えていたからじゃ。気をつけよ、レイ王。聖獣たちにとって、女神は愛すべき絶対的な存在じゃからのぅ。流石のわしも、女神の悪口は言わん」
「そ、そうだったのか。力を疑うような発言、許してくれ、ルゥナ殿」
「……ま、分かったんならいい。お前らは女神様も神獣様を知らない超超超超超超可哀想な奴らだから、多めに見てやる。けど……二度目はないからな!」

 レイ様が頭を深く下げ、素直に謝ったからか、ルゥナ様は怒りを収め、同じことをしないよう釘を刺した。レイ様は再びルゥナ様に謝罪を告げると、

「まあ確かに俺も、大切な人の悪口を言われれば怒る」
 
 と、私の方――を見ていらっしゃるように思えたけど、恐らく私の膝の上に乗っているラメンテを見ながら呟いていらっしゃった。

 相変わらず、とても仲が良い二人だと微笑ましく思いながら、膝の上のラメンテを撫でる。

 ふと視界の端にルヴィスさんが映ったけど、私と、何か言いたげに眉間に皺を寄せているレイ様を交互に見比べながら、肩を落としていた。彼から吐き出された大きなため息に、言葉が乗る。

「申し訳ございません。話が脱線したようです。ルゥナ様、どうか続きを――」
「ん、悪い。女神様のことになるとついな。で、どこまで話したっけな」

 記憶を探りながら、ルゥナ様の話が再開した。

 女神様は、聖獣界を安定させるため、その裏に人間界を創り出した。しかし人間界は聖獣界以上に不安定だった。

 そこで選ばれたのが――三体の聖獣。

「つまり、人間界を安定させるため送り出された三体の聖獣が、俺たち『守護獣』ってことだ」
「ま、『守護獣』とは役割じゃな。わしで言うなら『女王』という肩書き当たるようなもんじゃ。人間界に来た聖獣が『守護獣』と呼ばれると理解すれば良い」

 なるほど。
 システィーナ様の補足が、とても分かりやすい。

 ラメンテが自身のことを『人間界を安定させるために、この世界を創った女神様に遣わされた守護獣』と言っていた理由が、本当の意味で理解出来た。

 つまり、守護獣様たちがこの世界を安定させなければ、もう一つの世界――聖獣界も危ないということ。

 人間界と聖獣界は、もはや運命共同体といっても過言ではない。

 壮大過ぎる物語に、身震いがする。

「聖獣は、人間と違って魔法が使える。魔法で人間界全体に結界を張り、安定して住める環境を作る。人間界が安定すれば、聖獣界も安定する。そのために、俺たちがいるってわけだ。しかし、ここでも一つ問題が発生した。魔法には【魔力】が必要だ。だが、人間界では、魔力を補充することが出来ない」

 聖獣界は魔力で満ちているため、存在するだけで補充出来る。しかし人間界には魔力自体がないため、魔力を補充する術がないのだという。

 魔力が供給できなければ、ラメンテのように自分自身を削りながら世界を保つこととなり……最終的には消滅してしまう。

 そこで女神様たちが考え出された解決策が――

「【聖女】と呼ばれる人間を介し、魔力を俺たちに注ぐ方法だ」

 聖女。
 その単語と、これから語られる真実に、ドクンと大きく心臓が高鳴った。
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