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第3話 虚弱聖女と赤毛の男性
※誤ってR18になってました!R15です!すみません!
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ラメンテ?
それが、目の前の聖獣様の御名?
ラメンテと呼ばれた守護獣様と、ラメンテと呼んだ赤毛の男性を見比べながら、私は何も言えずにいた。
ラメンテ様は僅かにうなり声をあげると、男性から顔を背けた。拒絶するような態度に、男性の大きな赤い瞳がつり上がる。
大股で近づいてくると、ラメンテ様の顔を両手で押さえ、自分の方へと向けさせた。
この国を守っている守護獣様への態度にしては非礼過ぎて、思わず私の喉から悲鳴が上がりそうになる。
だけど男性の唇から洩れた声色に、私の悲鳴は喉の奥へと引っ込んだ。
「ラメンテ……何で俺の前から突然姿を消したんだ! どれだけ、心配したか……」
悲痛な叫びだった。
男性の言葉にラメンテ様がうなだれ、ポツリと洩らす。
「……ごめん、レイ。でも僕は、もう見ていられなかったんだ。これ以上、この国が衰退していく様を……」
「それは、俺が不甲斐ないからだ! お前がこの地に現れたときから今まで、聖女を見つけてやれず、長きに渡り苦しませる結果になってしまったから……」
「レイのせいじゃない! 僕に……僕に力がないから……!」
「それは違う! 自身の力を削って国の結界を維持していたせいで、こんなにも小さくなって……なのに結界のほころびを修復するため、ここまで一人で来たんだろ? 命を削る行為だと分かっていながら……」
レイと呼ばれた男性は、横になったままのラメンテ様を抱きしめた。ふわふわの白い毛に顔を埋め、声を震わせる。
「すまなかった、ラメンテ……お前を追い詰めたのは、俺の責任だ」
「そんなことない! レイは一生懸命やってる。ごめん……本当にごめん、僕が……ぼく、が……」
ラメンテ様の金色の瞳が潤んだかと思うと、光るものが一粒落ちた。
守護獣様が、一人の人間と抱き合い、涙を流している。
その光景に驚きながらも、二人の間から感じられる、お互いを信頼し、大切に思う気持ちを美しく思った。
抱きしめ合う二人の光景が、とても……とても美しかった。
私には縁遠い光景だったから余計に――
目の奥がじわっと熱くなっていく。二人のことは知らないけれど、感動的な場面に、涙が出そうになった。
黙って二人を見守っていると、赤毛の男性の視線がこちらに向けられた。初めて私の存在に気づいたようで、小さく「あっ」と呟き、私を凝視したまま動きを止めた。
同時にラメンテ様も私のことを出したようで、身を起こすと私に手の甲に鼻先をこすりつけながら仰った。
「レイ! 僕、彼女に助けて貰ったんだ!」
ラメント様の言葉に、レイさんがハッと息を呑んだ。そして「助けて貰った?」とポツリと呟くと、何かに気づいたのか、彼の顔や身体を確認するように見た。
「ラメンテ……元気になった、のか? 俺と別れる前は、あんなに衰弱していたのに……」
「うん! 彼女に力を与えて貰ったからね」
「ち、から……? ま、まさか……」
「やっと見つけたよ」
金色と赤い瞳がほぼ同時に私に向けられた。
一方はとても嬉しそうな、そしてもう一方は驚きと期待で満ちた瞳を――
「僕の聖女を」
……え?
僕、の?
疑問に思った瞬間、
「やっ……やったぁぁぁっ、我が国の聖女が見つかったぞ――!!」
「ひゃぁっ!?」
突然レイさんに抱き上げられ、私は悲鳴を上げた。しかし彼は、私の悲鳴などお構いなしに、まるで小さな子どもに高い高いをするように私を高く持ち上げると、
「これで……ラメンテの苦しみも終わる! 我が国の民たちも救われる……なんと……なんと良き日だ!!」
などと叫びながら、その場でクルクルと回り出した。
怖い怖い怖い怖い!
目が回る――っ!!
驚きと恐怖と浮遊感で頭がふらふらする私の耳に、ラメンテ様の少し呆れたような声色が届いた。
「レイ、喜ぶのはいいけど、彼女を巻き込んじゃ駄目だよ。ほら、彼女、ぐったりしてるじゃないか」
「……あっ」
ラメンテ様に指摘されたレイさんの動きが止まった。
止まると今度はめまいが……
もう動いていないはずなのに、頭の中がクラクラする……
「君、だ、大丈夫か?」
「は、はい……なんとか……」
吐き気をこらえながら返答をすると、レイさんは、私が目覚めたときに横になっていた大木の下に行き、木の幹にもたれさせた。
爽やかな風が吹き抜け、気持ち悪さが落ち着いてくる。
目を開けると、レイさんの顔があった。宝石の輝きを思わせる赤い瞳が、心配そうに私を見ている。
意思の強さを思わせる眉に、二重がはっきりとした瞳、スッと通った鼻筋。少し焼けた肌から、彼が外にいることが多いのであろうことがうかがえる。年齢は私よりもいくつか上だろう。
とても綺麗な人だ。しかし中性的な美しさではなく、男性らしさを兼ねそろえた美しさだ。
生命力の強さ、とも言っても良いかもしれない。
恐らく、虚弱聖女と呼ばれていた私にはない強さだ。
少し伸びた赤毛が邪魔なのか、無理矢理一つにくくっているせいで、小さな尻尾のようになっているのが何だか可愛い。
眉根を寄せていた彼の表情が、フッと緩む。
「もう大丈夫か?」
「は、はい……」
少年のような裏表のない微笑みを間近で見せられ、何故か一瞬だけ息が止まった。
今まで異性と関わってきたことがほとんどなかった分、近い距離感に戸惑ってしまう。
普通、こんなに近くまで顔をつきあわせて会話をするもの?
そこにラメンテ様が近づいてきた。レイさんにぴったりと寄り添いながら、私に尋ねる。
「改めて、僕はラメンテ。この国――ルミテリス王国の守護獣だよ。君は?」
「わ、私は……セレスティアルと申します。守護獣ラメンテ様」
「ラメンテでいいよ。代わりに君のことを、セレスティアルって呼んでもいい?」
「あ、はい、もちろん――」
「敬語も禁止。いい?」
私の発言に、ラメンテ様が――いいえ、ラメンテが言った。声色は柔らかく、少し笑いを含んでいる。
ラメンテの鼻先が、つんつんっとレイさんの手の甲をつついた。レイさんの赤い瞳が揺れハッと息を飲むと、慌てて私に向かって頭を下げた。
「セレスティアル、我が国の守護獣ラメンテを救っていただき、感謝する。そして……先ほどの非礼を改めて詫びたい」
「非礼の件は、も、もういいですから……」
先ほどの非礼とは、私を抱き上げてクルクル回ったことだろう。改めて考えると、成人女性を持ち上げて軽く回すことが出来るレイさんって、結構な力持ちなんじゃ……
両腕を見ると、服の上からでも分かるほど鍛えられている。私の細く筋力のない腕とは大違いだ。
そんな腕に持ち上げられたことを思い出すと、何故か鼓動が速くなった気がした。
レイさんは、一言「感謝する」と述べると、私の前に跪きながら名乗った。
「俺は、レイ・オルシア・ルミテリス。この国――ルミテリス王国の国王だ」
へえー、この人、国王様なんだ。
……え?
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ラメンテ?
それが、目の前の聖獣様の御名?
ラメンテと呼ばれた守護獣様と、ラメンテと呼んだ赤毛の男性を見比べながら、私は何も言えずにいた。
ラメンテ様は僅かにうなり声をあげると、男性から顔を背けた。拒絶するような態度に、男性の大きな赤い瞳がつり上がる。
大股で近づいてくると、ラメンテ様の顔を両手で押さえ、自分の方へと向けさせた。
この国を守っている守護獣様への態度にしては非礼過ぎて、思わず私の喉から悲鳴が上がりそうになる。
だけど男性の唇から洩れた声色に、私の悲鳴は喉の奥へと引っ込んだ。
「ラメンテ……何で俺の前から突然姿を消したんだ! どれだけ、心配したか……」
悲痛な叫びだった。
男性の言葉にラメンテ様がうなだれ、ポツリと洩らす。
「……ごめん、レイ。でも僕は、もう見ていられなかったんだ。これ以上、この国が衰退していく様を……」
「それは、俺が不甲斐ないからだ! お前がこの地に現れたときから今まで、聖女を見つけてやれず、長きに渡り苦しませる結果になってしまったから……」
「レイのせいじゃない! 僕に……僕に力がないから……!」
「それは違う! 自身の力を削って国の結界を維持していたせいで、こんなにも小さくなって……なのに結界のほころびを修復するため、ここまで一人で来たんだろ? 命を削る行為だと分かっていながら……」
レイと呼ばれた男性は、横になったままのラメンテ様を抱きしめた。ふわふわの白い毛に顔を埋め、声を震わせる。
「すまなかった、ラメンテ……お前を追い詰めたのは、俺の責任だ」
「そんなことない! レイは一生懸命やってる。ごめん……本当にごめん、僕が……ぼく、が……」
ラメンテ様の金色の瞳が潤んだかと思うと、光るものが一粒落ちた。
守護獣様が、一人の人間と抱き合い、涙を流している。
その光景に驚きながらも、二人の間から感じられる、お互いを信頼し、大切に思う気持ちを美しく思った。
抱きしめ合う二人の光景が、とても……とても美しかった。
私には縁遠い光景だったから余計に――
目の奥がじわっと熱くなっていく。二人のことは知らないけれど、感動的な場面に、涙が出そうになった。
黙って二人を見守っていると、赤毛の男性の視線がこちらに向けられた。初めて私の存在に気づいたようで、小さく「あっ」と呟き、私を凝視したまま動きを止めた。
同時にラメンテ様も私のことを出したようで、身を起こすと私に手の甲に鼻先をこすりつけながら仰った。
「レイ! 僕、彼女に助けて貰ったんだ!」
ラメント様の言葉に、レイさんがハッと息を呑んだ。そして「助けて貰った?」とポツリと呟くと、何かに気づいたのか、彼の顔や身体を確認するように見た。
「ラメンテ……元気になった、のか? 俺と別れる前は、あんなに衰弱していたのに……」
「うん! 彼女に力を与えて貰ったからね」
「ち、から……? ま、まさか……」
「やっと見つけたよ」
金色と赤い瞳がほぼ同時に私に向けられた。
一方はとても嬉しそうな、そしてもう一方は驚きと期待で満ちた瞳を――
「僕の聖女を」
……え?
僕、の?
疑問に思った瞬間、
「やっ……やったぁぁぁっ、我が国の聖女が見つかったぞ――!!」
「ひゃぁっ!?」
突然レイさんに抱き上げられ、私は悲鳴を上げた。しかし彼は、私の悲鳴などお構いなしに、まるで小さな子どもに高い高いをするように私を高く持ち上げると、
「これで……ラメンテの苦しみも終わる! 我が国の民たちも救われる……なんと……なんと良き日だ!!」
などと叫びながら、その場でクルクルと回り出した。
怖い怖い怖い怖い!
目が回る――っ!!
驚きと恐怖と浮遊感で頭がふらふらする私の耳に、ラメンテ様の少し呆れたような声色が届いた。
「レイ、喜ぶのはいいけど、彼女を巻き込んじゃ駄目だよ。ほら、彼女、ぐったりしてるじゃないか」
「……あっ」
ラメンテ様に指摘されたレイさんの動きが止まった。
止まると今度はめまいが……
もう動いていないはずなのに、頭の中がクラクラする……
「君、だ、大丈夫か?」
「は、はい……なんとか……」
吐き気をこらえながら返答をすると、レイさんは、私が目覚めたときに横になっていた大木の下に行き、木の幹にもたれさせた。
爽やかな風が吹き抜け、気持ち悪さが落ち着いてくる。
目を開けると、レイさんの顔があった。宝石の輝きを思わせる赤い瞳が、心配そうに私を見ている。
意思の強さを思わせる眉に、二重がはっきりとした瞳、スッと通った鼻筋。少し焼けた肌から、彼が外にいることが多いのであろうことがうかがえる。年齢は私よりもいくつか上だろう。
とても綺麗な人だ。しかし中性的な美しさではなく、男性らしさを兼ねそろえた美しさだ。
生命力の強さ、とも言っても良いかもしれない。
恐らく、虚弱聖女と呼ばれていた私にはない強さだ。
少し伸びた赤毛が邪魔なのか、無理矢理一つにくくっているせいで、小さな尻尾のようになっているのが何だか可愛い。
眉根を寄せていた彼の表情が、フッと緩む。
「もう大丈夫か?」
「は、はい……」
少年のような裏表のない微笑みを間近で見せられ、何故か一瞬だけ息が止まった。
今まで異性と関わってきたことがほとんどなかった分、近い距離感に戸惑ってしまう。
普通、こんなに近くまで顔をつきあわせて会話をするもの?
そこにラメンテ様が近づいてきた。レイさんにぴったりと寄り添いながら、私に尋ねる。
「改めて、僕はラメンテ。この国――ルミテリス王国の守護獣だよ。君は?」
「わ、私は……セレスティアルと申します。守護獣ラメンテ様」
「ラメンテでいいよ。代わりに君のことを、セレスティアルって呼んでもいい?」
「あ、はい、もちろん――」
「敬語も禁止。いい?」
私の発言に、ラメンテ様が――いいえ、ラメンテが言った。声色は柔らかく、少し笑いを含んでいる。
ラメンテの鼻先が、つんつんっとレイさんの手の甲をつついた。レイさんの赤い瞳が揺れハッと息を飲むと、慌てて私に向かって頭を下げた。
「セレスティアル、我が国の守護獣ラメンテを救っていただき、感謝する。そして……先ほどの非礼を改めて詫びたい」
「非礼の件は、も、もういいですから……」
先ほどの非礼とは、私を抱き上げてクルクル回ったことだろう。改めて考えると、成人女性を持ち上げて軽く回すことが出来るレイさんって、結構な力持ちなんじゃ……
両腕を見ると、服の上からでも分かるほど鍛えられている。私の細く筋力のない腕とは大違いだ。
そんな腕に持ち上げられたことを思い出すと、何故か鼓動が速くなった気がした。
レイさんは、一言「感謝する」と述べると、私の前に跪きながら名乗った。
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