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第28話 虚弱聖女と偶然の事故
全身の血が、顔に上っていくのを感じる。
喉の奥から何かが迸りそうなる。
自分の指にキスされている状況を冷静に受け止められるほど、私の精神は成熟していなかった。
反射的に身体を起こしてしまい、レイ様の手から私の手が離れてしまう。
「んっ……うーん……」
声を漏らしながらレイ様が目を覚ました。
目をこすりながら彼も身を起こし、大きくあくびをしながら、両腕を上げて伸びをした。
「セレスティアル、おはよう。少しは休め……って、え? どうした? なんか顔が凄く赤いが」
「あっ、あのっ……」
「どうした? 眠れなかったのか?」
レイ様が身を寄せてきた。
彼の顔が、
唇が、
近づいてくる。
彼の唇に指が触れていた感覚が生々しく蘇り、恥ずかしさでいっぱいになった私は、口をパクパクするしかできない。
レイ様の表情が陰った。
見たことがある。私の手が冷たすぎるのを心配して、お医者様を呼ぼうとしたときと同じ顔。
このままだと、元気なのにお医者様を呼ばれてしまう!
そのとき、
「大丈夫だよ、レイ。セレスティアルもついさっきまで良く眠っていたよ?」
ラメンテの声が降ってきた。
今までぺったりと地面に身を横たえていた彼が、気づけば頭を起こして私たちを見ていた。
も、もしかしてラメンテは起きていたの?
そして私のことを、見ていたの?
ラメンテの金色の瞳が、私の方に向けられた。どこか揶揄うように細められているのを見て、嫌な予感がし……それは的中した。
「レイが、セレスティアルの手に、チュってしてたから、びっくりしたんだよねー?」
「え?」
「ら、ラメンテっ!!」
私の絶叫が響き渡った。
レイ様は、何度かラメンテの発言を反芻し、やがて赤い瞳を大きく見開いた。口元に手をやっている。
ラメンテの発言の意味を、完全に理解してしまった仕草だ。
「すまない、セレスティアル、君の指に、俺の唇が当たったままだ――」
「大丈夫です! 私、全く気にしていませんから!」
レイ様の発言を遮るように、私は激しく首を横に振った。
私の言葉に、レイ様は何故か唇を緩ませた。そして、
「そうか。気にならなかったか」
どこか嬉しそうに呟く。
良かった。
レイ様も分かってくれたみたい。
「はい、気にしていませんから! あれは……事故……そう! 事故みたいなものですから! たまたまレイ様の口に私の手が当たっていただけの、偶然起こった事故ですから! 私、ぜんっっっっぜん、気にしていませんから!」
私は大きく何度も首を縦に振りながら、言葉を畳みかける。
だけど、何故だろう?
事故? と呟いたレイ様の瞳が、困惑で揺れているのは……
「セレスティアル。あれは……」
レイ様が話し出そうとしたとき、遠くで呼び鈴が鳴る音がした。
会議再開の合図だ。
急いで戻らないと。
「会議が始まるようですね、レイ様、戻りましょう」
「あっ、待て、セレスティアル!」
レイ様の隣を横切ろうとした私の肩が、強い力で引き寄せられた。レイ様と向き合う形に体勢を変えられ、私の両肩が掴まれる。
赤い瞳が、真剣な眼差しで私を見つめる。
「俺は、セレスティアルが好きだ」
突然好意を告げられ、心臓が大きく跳ね上がった。
だけど……これは、レイ様にとっては挨拶も同じ。
おはよう、と言う感覚で仰っているだけ。
落ち着け。
落ち着け。
心の中で呪文のように繰り返すと、動揺を悟られないように笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます、レイ様。そうやって皆さんに感謝や好意をはっきりと告げているから、皆さんもレイ様を信頼し、大切にされているんですね。素晴らしいことだと思います」
そう言って、レイ様の言葉を受け入れる。
たくさんの人々に見せている好意を、私にも与えてくれていることに感謝しながら。
レイ様の手が、私の両肩から力なく離れた。彼の両腕がだらんと落ち、両手がぶらぶらと太もものあたりで揺れている。
「レイ様?」
「セレスティアルは、先に会議室に戻っていてくれないか?」
「分かりましたが、レイ様は……」
「俺は……ルヴィスの忠告について少し考えてから戻る」
「え? 忠告?」
「すぐに戻る。皆にはそう伝えてくれないか?」
「わ、分かりました」
私はレイ様に向かって頭を下げると、小さいサイズに戻ったラメンテと一緒に屋上を後にした。
レイ様、一体どうしたのかな?
ルヴィスさんの忠告って……一体のことなんだろう?
喉の奥から何かが迸りそうなる。
自分の指にキスされている状況を冷静に受け止められるほど、私の精神は成熟していなかった。
反射的に身体を起こしてしまい、レイ様の手から私の手が離れてしまう。
「んっ……うーん……」
声を漏らしながらレイ様が目を覚ました。
目をこすりながら彼も身を起こし、大きくあくびをしながら、両腕を上げて伸びをした。
「セレスティアル、おはよう。少しは休め……って、え? どうした? なんか顔が凄く赤いが」
「あっ、あのっ……」
「どうした? 眠れなかったのか?」
レイ様が身を寄せてきた。
彼の顔が、
唇が、
近づいてくる。
彼の唇に指が触れていた感覚が生々しく蘇り、恥ずかしさでいっぱいになった私は、口をパクパクするしかできない。
レイ様の表情が陰った。
見たことがある。私の手が冷たすぎるのを心配して、お医者様を呼ぼうとしたときと同じ顔。
このままだと、元気なのにお医者様を呼ばれてしまう!
そのとき、
「大丈夫だよ、レイ。セレスティアルもついさっきまで良く眠っていたよ?」
ラメンテの声が降ってきた。
今までぺったりと地面に身を横たえていた彼が、気づけば頭を起こして私たちを見ていた。
も、もしかしてラメンテは起きていたの?
そして私のことを、見ていたの?
ラメンテの金色の瞳が、私の方に向けられた。どこか揶揄うように細められているのを見て、嫌な予感がし……それは的中した。
「レイが、セレスティアルの手に、チュってしてたから、びっくりしたんだよねー?」
「え?」
「ら、ラメンテっ!!」
私の絶叫が響き渡った。
レイ様は、何度かラメンテの発言を反芻し、やがて赤い瞳を大きく見開いた。口元に手をやっている。
ラメンテの発言の意味を、完全に理解してしまった仕草だ。
「すまない、セレスティアル、君の指に、俺の唇が当たったままだ――」
「大丈夫です! 私、全く気にしていませんから!」
レイ様の発言を遮るように、私は激しく首を横に振った。
私の言葉に、レイ様は何故か唇を緩ませた。そして、
「そうか。気にならなかったか」
どこか嬉しそうに呟く。
良かった。
レイ様も分かってくれたみたい。
「はい、気にしていませんから! あれは……事故……そう! 事故みたいなものですから! たまたまレイ様の口に私の手が当たっていただけの、偶然起こった事故ですから! 私、ぜんっっっっぜん、気にしていませんから!」
私は大きく何度も首を縦に振りながら、言葉を畳みかける。
だけど、何故だろう?
事故? と呟いたレイ様の瞳が、困惑で揺れているのは……
「セレスティアル。あれは……」
レイ様が話し出そうとしたとき、遠くで呼び鈴が鳴る音がした。
会議再開の合図だ。
急いで戻らないと。
「会議が始まるようですね、レイ様、戻りましょう」
「あっ、待て、セレスティアル!」
レイ様の隣を横切ろうとした私の肩が、強い力で引き寄せられた。レイ様と向き合う形に体勢を変えられ、私の両肩が掴まれる。
赤い瞳が、真剣な眼差しで私を見つめる。
「俺は、セレスティアルが好きだ」
突然好意を告げられ、心臓が大きく跳ね上がった。
だけど……これは、レイ様にとっては挨拶も同じ。
おはよう、と言う感覚で仰っているだけ。
落ち着け。
落ち着け。
心の中で呪文のように繰り返すと、動揺を悟られないように笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます、レイ様。そうやって皆さんに感謝や好意をはっきりと告げているから、皆さんもレイ様を信頼し、大切にされているんですね。素晴らしいことだと思います」
そう言って、レイ様の言葉を受け入れる。
たくさんの人々に見せている好意を、私にも与えてくれていることに感謝しながら。
レイ様の手が、私の両肩から力なく離れた。彼の両腕がだらんと落ち、両手がぶらぶらと太もものあたりで揺れている。
「レイ様?」
「セレスティアルは、先に会議室に戻っていてくれないか?」
「分かりましたが、レイ様は……」
「俺は……ルヴィスの忠告について少し考えてから戻る」
「え? 忠告?」
「すぐに戻る。皆にはそう伝えてくれないか?」
「わ、分かりました」
私はレイ様に向かって頭を下げると、小さいサイズに戻ったラメンテと一緒に屋上を後にした。
レイ様、一体どうしたのかな?
ルヴィスさんの忠告って……一体のことなんだろう?
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