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勇者
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この世界は、神に守られていた――はずだった。
しかし突如現れた魔王によって神は封印され、守護を失ったこの世界は、魔王の侵略によって滅亡の危機に瀕していた。
魔王の存在によって気候や土地が激変し、発生したモンスターが人々の日常を壊していく。
国は魔王討伐のために、世界中の手練れを集めて冒険者パーティー《エスペランサ》を結成し、様々な支援を行っている。
こんな俺も《エスペランサ》の一員だった。
ついさっきまでは、だが。
鼻息荒く横を歩くのは、俺と一緒に追放された聖女ラノだ。
「ごめんな、ラノ。君まで巻き込んでしまって……」
「いいの! あんなサイテー男のパーティーなんて、こっちからお断りよ!」
ラノが追放されたのは表向き、俺の追放を唯一反対したことだが、真の理由は、彼女よりも強力な攻撃魔法を扱える世界最強の魔術師メッゾが加入したからだ。
豊満な胸を押し付けるようにニスタに寄りかかる姿は、まあそういう関係なのだろう。
明日、《エスペランサ》は魔王討伐へ向かう。メッゾ加入によって、魔王を倒す算段がついたからだそうだ。
だから役立たずの俺と口うるさいラノが、ここぞとばかりに追放されたのだろう。
怒りを収め、唇を尖らせながらラノが悔しそうに呟いた。
「私に神様の封印を解く力があれば、勇者であるアルトが《聖剣》を手にし、あのクソ男をぎゃふんと言わせられるのに!」
「仕方ないさ。《聖剣》がなければ、俺が役立たずなのは本当だし」
「アルトは神様から選ばれた勇者、魔王を倒せる唯一の武器 《聖剣》の使い手なのよ⁉ 自信持ちなさい!」
「うむ……」
言葉が詰まって、言い返せなかった。
魔王を倒せる唯一の武器 《聖剣》は、勇者と神託を受けた俺にしか使えない。
しかし《聖剣》をもつ神は封印されており、封印を解くには大勢の聖女の命を捧げる必要がある。
この世界の聖女は3人しかおらず、現状 《聖剣》を手にするのは不可能だった。
俺自身、《聖剣》を扱う技術も力をあるが、その力が発揮されるのは《聖剣》を持った時のみ。
《聖剣》を持たない俺は、ただの人と同じだ。
なので、ニスタが役立たずと言った気持ちも分からなくもない。ないんだが、
(皆に役立てるよう様々な技術を習得し、戦いに貢献してきたつもりだったのにな)
その気持ちが空回ってたと思うと、恥ずかしさで消えたくなる。
俺の無能さを語るニスタと、呆然と立ち尽くしていた俺に向かって荷物を投げつける仲間たちの顔を思い出す。
リーダーであるニスタを尊敬していた。
仲間もいい人ばかりだった。
少なくとも、そう思っていた。
しかし、2か月前ぐらいから俺抜きで会議をすることが増え、疎外感を感じていた。
あの任務の失敗が原因だろうか……。
で、この追放会議だ。
(追放するくらいまで我慢してたなら、何が悪かったのか言って欲しかったな)
大人になると怒られることなく切捨てられると聞いたことがあるが、こんな形で洗礼を受けるとは思ってもなかった。
人間不信に陥りそうだ。
「でもね、追放されて一つ、良いことがあるわ」
「……なんだよ」
ラノの表情にパッと笑顔が咲くと、息がかかりそうなくらい顔を近づけてきた。
屈託のない笑顔に、心臓が跳ね上がり頰から耳にかけて熱が上がる。
「この制服みたいなダッサい服ともおさらばってこと! アルトも、その服しか持ってないでしょ? 落ち着いたら、一緒に新しい服買いに行こう? 約束よ?」
追放され落ち込む俺とは違い、ラノはいつも前向きだ。
彼女の明るい言葉に、正しさを貫く姿勢に、どれだけ心を救われたか分からない。
(俺、やっぱりラノが好きなんだな)
教会に身を置く彼女に、恋愛の自由などない。
決して叶うことのない想いだと知っていながらも、捨てきれない自分の女々しさに、また落ち込んだ。
しかし突如現れた魔王によって神は封印され、守護を失ったこの世界は、魔王の侵略によって滅亡の危機に瀕していた。
魔王の存在によって気候や土地が激変し、発生したモンスターが人々の日常を壊していく。
国は魔王討伐のために、世界中の手練れを集めて冒険者パーティー《エスペランサ》を結成し、様々な支援を行っている。
こんな俺も《エスペランサ》の一員だった。
ついさっきまでは、だが。
鼻息荒く横を歩くのは、俺と一緒に追放された聖女ラノだ。
「ごめんな、ラノ。君まで巻き込んでしまって……」
「いいの! あんなサイテー男のパーティーなんて、こっちからお断りよ!」
ラノが追放されたのは表向き、俺の追放を唯一反対したことだが、真の理由は、彼女よりも強力な攻撃魔法を扱える世界最強の魔術師メッゾが加入したからだ。
豊満な胸を押し付けるようにニスタに寄りかかる姿は、まあそういう関係なのだろう。
明日、《エスペランサ》は魔王討伐へ向かう。メッゾ加入によって、魔王を倒す算段がついたからだそうだ。
だから役立たずの俺と口うるさいラノが、ここぞとばかりに追放されたのだろう。
怒りを収め、唇を尖らせながらラノが悔しそうに呟いた。
「私に神様の封印を解く力があれば、勇者であるアルトが《聖剣》を手にし、あのクソ男をぎゃふんと言わせられるのに!」
「仕方ないさ。《聖剣》がなければ、俺が役立たずなのは本当だし」
「アルトは神様から選ばれた勇者、魔王を倒せる唯一の武器 《聖剣》の使い手なのよ⁉ 自信持ちなさい!」
「うむ……」
言葉が詰まって、言い返せなかった。
魔王を倒せる唯一の武器 《聖剣》は、勇者と神託を受けた俺にしか使えない。
しかし《聖剣》をもつ神は封印されており、封印を解くには大勢の聖女の命を捧げる必要がある。
この世界の聖女は3人しかおらず、現状 《聖剣》を手にするのは不可能だった。
俺自身、《聖剣》を扱う技術も力をあるが、その力が発揮されるのは《聖剣》を持った時のみ。
《聖剣》を持たない俺は、ただの人と同じだ。
なので、ニスタが役立たずと言った気持ちも分からなくもない。ないんだが、
(皆に役立てるよう様々な技術を習得し、戦いに貢献してきたつもりだったのにな)
その気持ちが空回ってたと思うと、恥ずかしさで消えたくなる。
俺の無能さを語るニスタと、呆然と立ち尽くしていた俺に向かって荷物を投げつける仲間たちの顔を思い出す。
リーダーであるニスタを尊敬していた。
仲間もいい人ばかりだった。
少なくとも、そう思っていた。
しかし、2か月前ぐらいから俺抜きで会議をすることが増え、疎外感を感じていた。
あの任務の失敗が原因だろうか……。
で、この追放会議だ。
(追放するくらいまで我慢してたなら、何が悪かったのか言って欲しかったな)
大人になると怒られることなく切捨てられると聞いたことがあるが、こんな形で洗礼を受けるとは思ってもなかった。
人間不信に陥りそうだ。
「でもね、追放されて一つ、良いことがあるわ」
「……なんだよ」
ラノの表情にパッと笑顔が咲くと、息がかかりそうなくらい顔を近づけてきた。
屈託のない笑顔に、心臓が跳ね上がり頰から耳にかけて熱が上がる。
「この制服みたいなダッサい服ともおさらばってこと! アルトも、その服しか持ってないでしょ? 落ち着いたら、一緒に新しい服買いに行こう? 約束よ?」
追放され落ち込む俺とは違い、ラノはいつも前向きだ。
彼女の明るい言葉に、正しさを貫く姿勢に、どれだけ心を救われたか分からない。
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