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その後の話:君が花開く場所
第14話 別れ
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ジェネラルたちはフェクトの説明を受けながら、物資管理所の中をまわった。
彼女が考えた仕組みや工夫を目の当たりに、村に戻って来たジェネラルの第一声が、これだった。
「フェクトさん、良かったら城で働く気はありませんか?」
王の突然の申し出に、フェクトの目が丸くなった。
そんな彼女に構わず、称賛の言葉が続く。
「凄いじゃないですか! 工夫が斬新で中々思いつく事じゃないですよ。後、算術なんか、新しい発見ですよね。ああいう考え方で答えが出るなんて……」
「まあ、未だにその理屈が分からなくてぽかんとしてるやつが、一人いるけどな……」
そう言って、アクノリッジはぽかんとしているミディに視線を向けた。自分の事を指され、ミディの表情が恥ずかしさで赤くなった。
「うっ、うるさいわね!! 人には得手不得手があるのよっ!」
どうやら、ミディにとって算術は不得手に入るらしい。
フェクトは、ジェネラルに称賛の言葉を掛けられ、顔を真っ赤にしている。まさか魔王直々にスカウトされるとは思っていなかったようだ。
申し出は嬉しいが、自分は村に残ると決めたのだ。しかし王の申し出を断る事で、怒りを買うわけにはいかない。
アクノリッジはそんなフェクトの心の揺れに気づくと、ジェネラルの肩をぽんと叩いた。
「おい、ジェネラル。フェクトを困らせるんじゃねえよ。さっきのあれ、見てただろ? こいつにはこの村でやることがあるんだ」
「ああ、そうでしたね。困らせてしまってすみません、フェクトさん」
アクノリッジの苦言に、ジェネラルはフェクトに小さく頭を下げた。慌ててその必要はないとフェクトが首を振る。
「私などの為に、そのようなありがたいお言葉、本当にありがとうございます」
「気にしないで下さいね。あなたはあなたのすべき事をして下さい。それに、この地の施設を管理してくれていること自体、この国を支える大切な仕事ですから。でももし、村でのやるべきことが終わったら、その力を貸して下さい」
「はい! 是非!!」
フェクトはパッと表情を明るくすると、腰を折ってお辞儀をした。その時、アクノリッジが彼女の肩を叩いた。魔王との会話と同じ反応を期待し、フェクトにプロトコルへも来るように誘いをかける。
「仕事暇になったら、プロトコルにも是非来いよな」
「まっ……、まあ、あんたがそんなに言うなら、行ってやらなくもないけどっ!」
「……おい、魔王様と俺との対応、めっちゃ違わねえか? ……ひどくね?」
「当然の反応よっ!」
「当然の反応だと思うわ」
「当然の反応ですね」
「……とりあえず、今からジェネラルの秘密を暴露しようと思う」
「何でっ!?」
皆の意見に同意しただけなのに自分だけ理不尽だと、ジェネラルが突っ込んだ。まあ、何とか秘密を暴露されることはなかったのだが。
いよいよ、魔王が村を出る時間になった。
アクノリッジが馬車に乗り込む前に、フェクトは彼の服を引っ張った。そして視線を外しながら、小さい声で尋ねる。
「……仮にだけど、プロトコルに行ったとしたら……、どうやってあんたを訪ねればいいのよ? それが分からないと、行きようがないじゃない」
先ほどは酷い対応をされたが、ちゃんとプロトコル行きを考えてくれていたようだ。それに気づき、アクノリッジの表情が明るくなった。
「ああ、それなら、エルザ王国にあるモジュールって街に来てくれたらいい。俺はそこに住んでるから」
「モジュール? そう言えば、あんたの名前にもモジュールって入っていたような……」
「んー……、まあ、そうだな。とりあえず、町の人間に聞いたら分かるから、是非来てくれ。プロトコルに渡る方法は、魔王様に言えば協力して貰えるよう言っておくしな」
アクノリッジは、それ以上の話をはぐらかすと、フェクトに手を差し出した。フェクトは小さくため息をつくと、その手を握り返した。
初めて握手した時と違うのは、彼女がぎゅっと力強く握り返した事だ。返って来る力を感じ、青年の瞳が一瞬見開かれた。
「ありがと。私、頑張るわ」
「ああ、自信持てよ。もう変な劣等感に負けんなよ。……こっちこそ、色々ありがとな」
そう言って彼女の頭をポンポンすると、アクノリッジの姿が馬車の中に消えた。
ジェネラルがフェクトに視線を向け、小さく会釈をすると、続けて馬車に乗り込む。
その時、フェクトの横に立つ誰かの気配を感じた。
「アクノリッジはね、モジュール家の次期当主なのよ」
横からの突然の声に、フェクトは驚いて声の先を見た。美しき別世界の王女、ミディだ。どこか寂しそうな表情を浮かべ、これから乗り込む馬車の入口を見つめている。
先ほどはぐらかされた話の続きが聞けると直感したフェクトは、ミディに尋ねた。
「モジュール家の次期当主……? モジュール家とは、凄い一族なのですか?」
「まあ、町の名前になっているくらいだから。プロトコル内で強大な権力と財力を持つ家よ。世界的に影響力を持っているわ」
「そんな……、凄いやつだったんですか……」
フェクトは言葉を失った。
容姿や醸し出す雰囲気から、良いところのボンボンじゃないかと思っていたが、まさか世界的影響力を持つ一族の次期当主だったとは、彼女も思いもよらなかったに違いない。
そんな立場の人間でありながらも、自分や他の魔族たちにフレンドリーすぎるぐらいコミュ力が半端なかったからだ。
ミディは少し瞳を伏せると、何かを思い出しているかのように言葉を続ける。
「アクノリッジには、共に家を支えてきた弟がいたんだけれど、家を出てね。だからこれから彼一人で、あの大きなモジュール家を担っていかなければならないの。だから……」
ミディの澄んだ瞳が、真っすぐフェクトを捕えた。
「あなたのような優秀な魔族が、アクノリッジを支えてくれたらって思うの」
「えっ? ええ?」
「ふふっ、そういう事だから、良かったら考えておいて?」
ミディは、たくらみを企んでいるように小さな笑い声をあげると、フェクトに手を振って馬車に乗り込んだ。
扉が閉じ、馬車が動き出す。
村の魔族たちは、魔王の帰還をいつまでも手を振りながら答えていた。
彼女が考えた仕組みや工夫を目の当たりに、村に戻って来たジェネラルの第一声が、これだった。
「フェクトさん、良かったら城で働く気はありませんか?」
王の突然の申し出に、フェクトの目が丸くなった。
そんな彼女に構わず、称賛の言葉が続く。
「凄いじゃないですか! 工夫が斬新で中々思いつく事じゃないですよ。後、算術なんか、新しい発見ですよね。ああいう考え方で答えが出るなんて……」
「まあ、未だにその理屈が分からなくてぽかんとしてるやつが、一人いるけどな……」
そう言って、アクノリッジはぽかんとしているミディに視線を向けた。自分の事を指され、ミディの表情が恥ずかしさで赤くなった。
「うっ、うるさいわね!! 人には得手不得手があるのよっ!」
どうやら、ミディにとって算術は不得手に入るらしい。
フェクトは、ジェネラルに称賛の言葉を掛けられ、顔を真っ赤にしている。まさか魔王直々にスカウトされるとは思っていなかったようだ。
申し出は嬉しいが、自分は村に残ると決めたのだ。しかし王の申し出を断る事で、怒りを買うわけにはいかない。
アクノリッジはそんなフェクトの心の揺れに気づくと、ジェネラルの肩をぽんと叩いた。
「おい、ジェネラル。フェクトを困らせるんじゃねえよ。さっきのあれ、見てただろ? こいつにはこの村でやることがあるんだ」
「ああ、そうでしたね。困らせてしまってすみません、フェクトさん」
アクノリッジの苦言に、ジェネラルはフェクトに小さく頭を下げた。慌ててその必要はないとフェクトが首を振る。
「私などの為に、そのようなありがたいお言葉、本当にありがとうございます」
「気にしないで下さいね。あなたはあなたのすべき事をして下さい。それに、この地の施設を管理してくれていること自体、この国を支える大切な仕事ですから。でももし、村でのやるべきことが終わったら、その力を貸して下さい」
「はい! 是非!!」
フェクトはパッと表情を明るくすると、腰を折ってお辞儀をした。その時、アクノリッジが彼女の肩を叩いた。魔王との会話と同じ反応を期待し、フェクトにプロトコルへも来るように誘いをかける。
「仕事暇になったら、プロトコルにも是非来いよな」
「まっ……、まあ、あんたがそんなに言うなら、行ってやらなくもないけどっ!」
「……おい、魔王様と俺との対応、めっちゃ違わねえか? ……ひどくね?」
「当然の反応よっ!」
「当然の反応だと思うわ」
「当然の反応ですね」
「……とりあえず、今からジェネラルの秘密を暴露しようと思う」
「何でっ!?」
皆の意見に同意しただけなのに自分だけ理不尽だと、ジェネラルが突っ込んだ。まあ、何とか秘密を暴露されることはなかったのだが。
いよいよ、魔王が村を出る時間になった。
アクノリッジが馬車に乗り込む前に、フェクトは彼の服を引っ張った。そして視線を外しながら、小さい声で尋ねる。
「……仮にだけど、プロトコルに行ったとしたら……、どうやってあんたを訪ねればいいのよ? それが分からないと、行きようがないじゃない」
先ほどは酷い対応をされたが、ちゃんとプロトコル行きを考えてくれていたようだ。それに気づき、アクノリッジの表情が明るくなった。
「ああ、それなら、エルザ王国にあるモジュールって街に来てくれたらいい。俺はそこに住んでるから」
「モジュール? そう言えば、あんたの名前にもモジュールって入っていたような……」
「んー……、まあ、そうだな。とりあえず、町の人間に聞いたら分かるから、是非来てくれ。プロトコルに渡る方法は、魔王様に言えば協力して貰えるよう言っておくしな」
アクノリッジは、それ以上の話をはぐらかすと、フェクトに手を差し出した。フェクトは小さくため息をつくと、その手を握り返した。
初めて握手した時と違うのは、彼女がぎゅっと力強く握り返した事だ。返って来る力を感じ、青年の瞳が一瞬見開かれた。
「ありがと。私、頑張るわ」
「ああ、自信持てよ。もう変な劣等感に負けんなよ。……こっちこそ、色々ありがとな」
そう言って彼女の頭をポンポンすると、アクノリッジの姿が馬車の中に消えた。
ジェネラルがフェクトに視線を向け、小さく会釈をすると、続けて馬車に乗り込む。
その時、フェクトの横に立つ誰かの気配を感じた。
「アクノリッジはね、モジュール家の次期当主なのよ」
横からの突然の声に、フェクトは驚いて声の先を見た。美しき別世界の王女、ミディだ。どこか寂しそうな表情を浮かべ、これから乗り込む馬車の入口を見つめている。
先ほどはぐらかされた話の続きが聞けると直感したフェクトは、ミディに尋ねた。
「モジュール家の次期当主……? モジュール家とは、凄い一族なのですか?」
「まあ、町の名前になっているくらいだから。プロトコル内で強大な権力と財力を持つ家よ。世界的に影響力を持っているわ」
「そんな……、凄いやつだったんですか……」
フェクトは言葉を失った。
容姿や醸し出す雰囲気から、良いところのボンボンじゃないかと思っていたが、まさか世界的影響力を持つ一族の次期当主だったとは、彼女も思いもよらなかったに違いない。
そんな立場の人間でありながらも、自分や他の魔族たちにフレンドリーすぎるぐらいコミュ力が半端なかったからだ。
ミディは少し瞳を伏せると、何かを思い出しているかのように言葉を続ける。
「アクノリッジには、共に家を支えてきた弟がいたんだけれど、家を出てね。だからこれから彼一人で、あの大きなモジュール家を担っていかなければならないの。だから……」
ミディの澄んだ瞳が、真っすぐフェクトを捕えた。
「あなたのような優秀な魔族が、アクノリッジを支えてくれたらって思うの」
「えっ? ええ?」
「ふふっ、そういう事だから、良かったら考えておいて?」
ミディは、たくらみを企んでいるように小さな笑い声をあげると、フェクトに手を振って馬車に乗り込んだ。
扉が閉じ、馬車が動き出す。
村の魔族たちは、魔王の帰還をいつまでも手を振りながら答えていた。
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