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8 やっと、あなたと
学園生活の初日はまずは各教室に集まって自己紹介や説明会、そして午後に入学式だ。
自己紹介では案の定、私の番では悪意のある視線しか感じなかった。ま、図々しくも平民が貴族の世界に入り込むのはいい気分はしないかもしれないわね。
そしてオリヴィアの番では意地の悪い令嬢たちからくすくすと笑い声が聞こえて、セルゲイの番では令嬢たちの目の色が変わった。彼はアレクサンドル連邦国でも令嬢たちから人気だったから、ここでもきっと彼に夢中になる女性は多いかもね。
オリヴィアをいじめていた令嬢の一人でリーダー格の伯爵令嬢はグレース・パッション。少しきつめの顔だけど目鼻立ちのはっきりした美人で、金色の縦ロールをゆさゆさと揺らしていた。
そして彼女の腰巾着の一人がジェシカ・ハーパー子爵令嬢。こちらは赤毛で背が高くて痩せっぽっちだ。
反対に、茶色い髪の背が低くてぽっちゃりした令嬢がもう一人の腰巾着のデイジー・ベル子爵令嬢。気の強いこの三人がこれからクラスを牛耳ることになりそうだ。
特待生の私のことは既に学園中の噂になっていて、休憩時間にセルゲイとオリヴィアと食堂に行った際も多くの生徒たちからじろじろと物珍しそうに見られたわ。それはもう珍獣のように。
ここでも教室と同じように好意的な目は全く向けられなかったわ。先が思いやられるけど、彼らに負けないように頑張らなきゃ。
そして、午後からの入学式。
大ホールで執り行われた式典には国王陛下も来賓された。
陛下は私の未来のお義父様になられる予定の方だったのね……と他人事のようにぼんやりと眺めていると、隣に座っているセルゲイから肘で突かれてはっと我に返った。
慌てて前を見ると、司会の先生が「在校生代表、挨拶」と読み上げているところだった。
すると、舞台の端から優雅な足取りで一人の令息が中央に向かって歩いて来た。その姿に私は目を見張った。
あれは、私に挽肉の包み焼きを買ってくださった貴族の方だわ!
驚きのあまり思わず立ち上がりそうになる。一度見たら忘れられないその容貌は壇上でも燦然と輝いていた。令嬢たちがざわめき、先生が注意していた。
彼はこの学園の生徒だったのね。今度、改めてあのときのお礼を言わなければ――、
「皆、入学おめでとう。私はこの学園の生徒会長のフレデリック・リーズだ」
その瞬間、私は目を見張って硬直した。
時が止まる。
息をするのも忘れてひらすら瞳で彼を追った。もう他にはなにも見えなかった。
そしてポロポロと自然と涙が溢れ出て、視界が濁って、堪らず俯いた。
やっと……やっとお会いできた。
ずっとお目にかかりたかったフレデリック様が今、目の前にいる。
遠いアレクサンドル連邦国からリーズ王国へ来て、魔法学園に入学して、私はこんなに彼の近くまで来られた。
でも……、
こんなに近くにいるのに、なんてこんなに遠いのだろう……。
平民である私は、恐れ多くも一国の王太子殿下に声を掛けることなんて決して許されない。
私たちの距離が縮まることは、ない。
涙は堰を切ったようにどんどん流れてくる。
アレクセイさんが言っていた「私が惨めな思いをする」という言葉の意味が胸に深く突き刺さった。
耐えられると思っていた。フレデリック様の姿を遠くから拝見できたら、それだけで満足してこの想いに踏ん切りがつくのだと思っていた。
でも、駄目……。
願いが叶ってやっと巡り合えたら、今度はもっと近くにいたいと思ってしまう。もっと彼のお側にいたいと思ってしまう。
もっと、もっと――……。
私はもう感情の制御ができなくて無様にも式典中ずっと泣き続け、その間もセルゲイが優しく背中を撫でてくれた。
自己紹介では案の定、私の番では悪意のある視線しか感じなかった。ま、図々しくも平民が貴族の世界に入り込むのはいい気分はしないかもしれないわね。
そしてオリヴィアの番では意地の悪い令嬢たちからくすくすと笑い声が聞こえて、セルゲイの番では令嬢たちの目の色が変わった。彼はアレクサンドル連邦国でも令嬢たちから人気だったから、ここでもきっと彼に夢中になる女性は多いかもね。
オリヴィアをいじめていた令嬢の一人でリーダー格の伯爵令嬢はグレース・パッション。少しきつめの顔だけど目鼻立ちのはっきりした美人で、金色の縦ロールをゆさゆさと揺らしていた。
そして彼女の腰巾着の一人がジェシカ・ハーパー子爵令嬢。こちらは赤毛で背が高くて痩せっぽっちだ。
反対に、茶色い髪の背が低くてぽっちゃりした令嬢がもう一人の腰巾着のデイジー・ベル子爵令嬢。気の強いこの三人がこれからクラスを牛耳ることになりそうだ。
特待生の私のことは既に学園中の噂になっていて、休憩時間にセルゲイとオリヴィアと食堂に行った際も多くの生徒たちからじろじろと物珍しそうに見られたわ。それはもう珍獣のように。
ここでも教室と同じように好意的な目は全く向けられなかったわ。先が思いやられるけど、彼らに負けないように頑張らなきゃ。
そして、午後からの入学式。
大ホールで執り行われた式典には国王陛下も来賓された。
陛下は私の未来のお義父様になられる予定の方だったのね……と他人事のようにぼんやりと眺めていると、隣に座っているセルゲイから肘で突かれてはっと我に返った。
慌てて前を見ると、司会の先生が「在校生代表、挨拶」と読み上げているところだった。
すると、舞台の端から優雅な足取りで一人の令息が中央に向かって歩いて来た。その姿に私は目を見張った。
あれは、私に挽肉の包み焼きを買ってくださった貴族の方だわ!
驚きのあまり思わず立ち上がりそうになる。一度見たら忘れられないその容貌は壇上でも燦然と輝いていた。令嬢たちがざわめき、先生が注意していた。
彼はこの学園の生徒だったのね。今度、改めてあのときのお礼を言わなければ――、
「皆、入学おめでとう。私はこの学園の生徒会長のフレデリック・リーズだ」
その瞬間、私は目を見張って硬直した。
時が止まる。
息をするのも忘れてひらすら瞳で彼を追った。もう他にはなにも見えなかった。
そしてポロポロと自然と涙が溢れ出て、視界が濁って、堪らず俯いた。
やっと……やっとお会いできた。
ずっとお目にかかりたかったフレデリック様が今、目の前にいる。
遠いアレクサンドル連邦国からリーズ王国へ来て、魔法学園に入学して、私はこんなに彼の近くまで来られた。
でも……、
こんなに近くにいるのに、なんてこんなに遠いのだろう……。
平民である私は、恐れ多くも一国の王太子殿下に声を掛けることなんて決して許されない。
私たちの距離が縮まることは、ない。
涙は堰を切ったようにどんどん流れてくる。
アレクセイさんが言っていた「私が惨めな思いをする」という言葉の意味が胸に深く突き刺さった。
耐えられると思っていた。フレデリック様の姿を遠くから拝見できたら、それだけで満足してこの想いに踏ん切りがつくのだと思っていた。
でも、駄目……。
願いが叶ってやっと巡り合えたら、今度はもっと近くにいたいと思ってしまう。もっと彼のお側にいたいと思ってしまう。
もっと、もっと――……。
私はもう感情の制御ができなくて無様にも式典中ずっと泣き続け、その間もセルゲイが優しく背中を撫でてくれた。
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追記
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