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14 新入生歓迎パーティー①
「わぁっ! リナ、すっごく綺麗!」
「ありがとう。オリヴィアもとっても素敵よ!」
ついに、この日がやって来た。
新入生歓迎パーティーである。今日は授業もお休みで、寄宿舎の令嬢たちは朝からドレスの支度に忙しかった。
私はセルゲイから借りたドレスを身に纏った。彼はドレスに加えて靴とアクセサリーも用意してくれた。
靴はドレスに見合うものを持っていなかったし、ネックレスはアレクサンドル皇家を象徴するもの……侍女がフレデリック様の手紙とともに隠してくれいていた……しか持っていなかったので助かった。さすがに皇家に代々伝わる派手なブルーダイヤモンドの首飾りなんて恐ろしくて身に付けられないわ。
エスコートもセルゲイが申し出てくれた。彼は多くの令嬢から誘いを受けていたので気が引けたけど、エレーナの新作の宣伝だから今日はずっと一緒にいたいんですって。まぁ、それなら仕方ないわね。私も歩く広告塔として頑張るわ。
オリヴィアは同じクラスの子爵令息がエスコートをすることになった。
実は彼女は令息たちからの人気が高い。
つい半年前までは平民だった男爵令嬢ではあるけど、その分陰湿な貴族社会に染まってなくて素直で優しくてほんわかした雰囲気が彼らの心を射止めているようだ。現に同じクラスの数人の令息からエスコートの申し出を受けていた。
一方、グレースたちは誰も声を掛ける令息がいなくて三人とも憤慨していた。
そりゃ毎日私やオリヴィアに意地悪をしている様子を見ていたら誰でも敬遠しちゃうでしょう。これを機に反省してもらいたいところだわ。無理だろうけど。
セルゲイに手を引かれてホールに入ると、きらびやかな空気に呑まれた。
そこは厳粛な入学式の会場だった場所が打って変わって、華やかなパーティー会場に変化していた。
パリッとしたタキシードを着た楽団、燦然と輝くクリスタルのシャンデリア、精巧な細工をされた花瓶に活けられた色とりどりの花、芸術のような料理……どれも帝国の皇女時代を彷彿とさせるものでなんだか懐かしい気分になった。
私たちが入場すると、一瞬しんと静まり返る。毒のある視線が一斉に突き刺さった。そのあとはざわざわと私の悪口が始まった。
平民の特待生、平民の分際で、生意気な平民……どれもグレースたちから嫌になるほど浴びた言葉で思わず笑いそうになった。教養ある貴族ならもっと様々な種類の悪口を用意して欲しいところだ。さすがに飽きてきちゃったわ。
「本当に参加したのね、平民さん。のこのことやってくるなんて、なんて厚かましいのかしら」
背後からグレースの声が聞こえて振り返る。そして私は当て付けのようにカーテシーをしてやった。
「「「…………」」」
彼女たちは目を見張ってしばらく黙り込み、そのあと値踏みするように私のドレスをじろじろと眺めた。
「あら? おかしいかしら? 是非、お貴族様から惨めな平民にドレスのアドバイスを聞きたいわ」と、私はしれっと言った。
「なっ……」
グレースはみるみる顔を上気させて、
「なんなのよ! 平民のくせに! ――そ、そうだわ! ドレスは立派でも肝心のダンスはどうかしらねぇ~?」
まじまじと私を見つめていたジェシカとデイジーもニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべた。
「嫌だグレースったら~。平民にダンスなんて踊れるわけないじゃない」
「そこの平民上がりも。くすっ」
「どうかしらね」と、私は彼女たちを横目にその場を去った。
パーティーの開始は生徒会長であるフレデリック様の挨拶からだった。
私は今度は泣かないようにぎゅっと歯を食いしばって全身に力を込めた。当たり前だけど今日も彼が遠くて、これからパーティーが始まるのにちょっとだけ悲しい気分になった。
挨拶が終わったら次は生徒会長と副会長によるファーストダンスだ。
フレデリック様と上品で綺麗な令嬢が手を取り合ってホールの中央に優雅に向かう。
ズキリと、胸が痛んだ。
彼が他の令嬢と踊る場面なんて見たくなかった。でも、瞳は彼に釘付けになってしまう。その矛盾に胸が苦しかった。
「まぁ! フローレンス様よ! 今日もとってもお綺麗ねぇ」と、近くの令嬢たちがヒソヒソと小声で話し始めた。
「美人で成績優秀で優しくて……わたしも侯爵令嬢みたいになりたいわぁ!」
「殿下の婚約者候補なんでしょう? ほら、皇女様がお亡くなりになったから……」
出し抜けに聞きたくもない言葉が耳に入ってきた。思わず顔をしかめる。
そう……あの令嬢がフレデリック様の次の――……。
彼女は艷やかな黒髪に深い赤紫の瞳が印象的だった。人形みたいにとっても綺麗な方。所作も洗練としていて、王太子の婚約者にぴったりだわ。
でも、どこか冷淡な雰囲気を感じるのは私が彼女に嫉妬してるからかもしれない。
フレデリック様の隣は私の場所なのに、なんであんな子が……そんな醜い感情がみるみる全身を支配していくのが分かった。
私は邪悪な思考を取り払うように頭を振る。
駄目よ。
もう私はエカチェリーナではないのだから、よこしまな考えはしちゃいけないわ。妬むより、元婚約者の幸せを祈るのよ。それがマーサさんから教わった前向きな生き方だから。
「!」
気が付くと、震える私の手をセルゲイがぎゅっと握ってくれていた。彼の体温のぬくもりに安堵して少しだけ楽になった気がした。
「辛ければ一度外へ出ようか?」と、彼は囁く。
私は小さく頭を振って、
「大丈夫。ありがとう」
「そうか」
生徒会長と副会長のダンスは優美で非の打ち所のない見事なものだった。
ファーストダンスが終了したら、次は新入生の番だ。私たちはホールの中央へと向かう。
「リナ……どうしよう、緊張しちゃう……」と、オリヴィアが不安げに私を見た。
「大丈夫よ。あんなに特訓したでしょう? 自信持って!」
「そうだよ、君ならできる。頭の中でリズムを取るんだ。あとはパートナーに任せればいいさ。頑張ってくれ」
「二人ともありがとう。そうよね、皆であんなに練習したんだもの。……うん、やってみるわ」
静寂が訪れる。
これからダンスが始まる合図だ。私とセルゲイは互いに一礼をした。
ふと、グレースたちの姿が目に入った。パートナーのいない彼女たちは壁際でニタニタと笑いながらこちらを見ていた。
音楽が始まる。
セルゲイに導かれて最初の一歩を踏み出した。
ステップ、ステップ、ターン。
アルフィー先生に教わったリーズ式のダンスを私たちはすいすいと泳ぐようになぞっていった。
ふと隣を見ると、オリヴィアもパートナーの子爵令息と笑顔で踊っていた。会話をする余裕もあるみたいで、私は一安心した。
これでグレースたちを見返してやることができそうね。なによりオリヴィアが楽しそうで良かったわ。
「楽しいな……」と、セルゲイがふっと微笑む。
「えぇ! 最高のデビュタントだわ! ありがとう、セルゲイ」
「こちらこそ、お姫様」
本来なら私は18になったときにデビュタントを迎えるはずだった。
そのときはフレデリック様がエスコートをしてくださる予定だった。
思い描いたデビュタントとは随分違ったけど、とっても素晴らしい思い出になったわ。
こんなに素敵なプレゼントをしてくれたセルゲイには本当に感謝の気持ち胸が一杯だった。
曲は終焉を迎えて、私たちは再び一礼をしてダンスは終わる。
「オリヴィア、お疲れ様。上手に踊れていたわよ」
「えぇ! 自分でも信じられないくらいよ! 本当に二人のおかげだわ! ありがとう!」
「オリヴィアが頑張ったからだよ」
「そうよ」
私たちは次のグループのためにホールの端のほうに向かった。
一曲終わったら喉が乾いたわ。ちょっとお腹も減ったかも。一旦休憩をして、回復したら今度は会場を隈なく回ってエレーナのドレスの宣伝をしなきゃね。
そのときだった。
――パシャッ!
にわかに、冷たい液体が豪快に私に降り掛かった。
「ありがとう。オリヴィアもとっても素敵よ!」
ついに、この日がやって来た。
新入生歓迎パーティーである。今日は授業もお休みで、寄宿舎の令嬢たちは朝からドレスの支度に忙しかった。
私はセルゲイから借りたドレスを身に纏った。彼はドレスに加えて靴とアクセサリーも用意してくれた。
靴はドレスに見合うものを持っていなかったし、ネックレスはアレクサンドル皇家を象徴するもの……侍女がフレデリック様の手紙とともに隠してくれいていた……しか持っていなかったので助かった。さすがに皇家に代々伝わる派手なブルーダイヤモンドの首飾りなんて恐ろしくて身に付けられないわ。
エスコートもセルゲイが申し出てくれた。彼は多くの令嬢から誘いを受けていたので気が引けたけど、エレーナの新作の宣伝だから今日はずっと一緒にいたいんですって。まぁ、それなら仕方ないわね。私も歩く広告塔として頑張るわ。
オリヴィアは同じクラスの子爵令息がエスコートをすることになった。
実は彼女は令息たちからの人気が高い。
つい半年前までは平民だった男爵令嬢ではあるけど、その分陰湿な貴族社会に染まってなくて素直で優しくてほんわかした雰囲気が彼らの心を射止めているようだ。現に同じクラスの数人の令息からエスコートの申し出を受けていた。
一方、グレースたちは誰も声を掛ける令息がいなくて三人とも憤慨していた。
そりゃ毎日私やオリヴィアに意地悪をしている様子を見ていたら誰でも敬遠しちゃうでしょう。これを機に反省してもらいたいところだわ。無理だろうけど。
セルゲイに手を引かれてホールに入ると、きらびやかな空気に呑まれた。
そこは厳粛な入学式の会場だった場所が打って変わって、華やかなパーティー会場に変化していた。
パリッとしたタキシードを着た楽団、燦然と輝くクリスタルのシャンデリア、精巧な細工をされた花瓶に活けられた色とりどりの花、芸術のような料理……どれも帝国の皇女時代を彷彿とさせるものでなんだか懐かしい気分になった。
私たちが入場すると、一瞬しんと静まり返る。毒のある視線が一斉に突き刺さった。そのあとはざわざわと私の悪口が始まった。
平民の特待生、平民の分際で、生意気な平民……どれもグレースたちから嫌になるほど浴びた言葉で思わず笑いそうになった。教養ある貴族ならもっと様々な種類の悪口を用意して欲しいところだ。さすがに飽きてきちゃったわ。
「本当に参加したのね、平民さん。のこのことやってくるなんて、なんて厚かましいのかしら」
背後からグレースの声が聞こえて振り返る。そして私は当て付けのようにカーテシーをしてやった。
「「「…………」」」
彼女たちは目を見張ってしばらく黙り込み、そのあと値踏みするように私のドレスをじろじろと眺めた。
「あら? おかしいかしら? 是非、お貴族様から惨めな平民にドレスのアドバイスを聞きたいわ」と、私はしれっと言った。
「なっ……」
グレースはみるみる顔を上気させて、
「なんなのよ! 平民のくせに! ――そ、そうだわ! ドレスは立派でも肝心のダンスはどうかしらねぇ~?」
まじまじと私を見つめていたジェシカとデイジーもニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべた。
「嫌だグレースったら~。平民にダンスなんて踊れるわけないじゃない」
「そこの平民上がりも。くすっ」
「どうかしらね」と、私は彼女たちを横目にその場を去った。
パーティーの開始は生徒会長であるフレデリック様の挨拶からだった。
私は今度は泣かないようにぎゅっと歯を食いしばって全身に力を込めた。当たり前だけど今日も彼が遠くて、これからパーティーが始まるのにちょっとだけ悲しい気分になった。
挨拶が終わったら次は生徒会長と副会長によるファーストダンスだ。
フレデリック様と上品で綺麗な令嬢が手を取り合ってホールの中央に優雅に向かう。
ズキリと、胸が痛んだ。
彼が他の令嬢と踊る場面なんて見たくなかった。でも、瞳は彼に釘付けになってしまう。その矛盾に胸が苦しかった。
「まぁ! フローレンス様よ! 今日もとってもお綺麗ねぇ」と、近くの令嬢たちがヒソヒソと小声で話し始めた。
「美人で成績優秀で優しくて……わたしも侯爵令嬢みたいになりたいわぁ!」
「殿下の婚約者候補なんでしょう? ほら、皇女様がお亡くなりになったから……」
出し抜けに聞きたくもない言葉が耳に入ってきた。思わず顔をしかめる。
そう……あの令嬢がフレデリック様の次の――……。
彼女は艷やかな黒髪に深い赤紫の瞳が印象的だった。人形みたいにとっても綺麗な方。所作も洗練としていて、王太子の婚約者にぴったりだわ。
でも、どこか冷淡な雰囲気を感じるのは私が彼女に嫉妬してるからかもしれない。
フレデリック様の隣は私の場所なのに、なんであんな子が……そんな醜い感情がみるみる全身を支配していくのが分かった。
私は邪悪な思考を取り払うように頭を振る。
駄目よ。
もう私はエカチェリーナではないのだから、よこしまな考えはしちゃいけないわ。妬むより、元婚約者の幸せを祈るのよ。それがマーサさんから教わった前向きな生き方だから。
「!」
気が付くと、震える私の手をセルゲイがぎゅっと握ってくれていた。彼の体温のぬくもりに安堵して少しだけ楽になった気がした。
「辛ければ一度外へ出ようか?」と、彼は囁く。
私は小さく頭を振って、
「大丈夫。ありがとう」
「そうか」
生徒会長と副会長のダンスは優美で非の打ち所のない見事なものだった。
ファーストダンスが終了したら、次は新入生の番だ。私たちはホールの中央へと向かう。
「リナ……どうしよう、緊張しちゃう……」と、オリヴィアが不安げに私を見た。
「大丈夫よ。あんなに特訓したでしょう? 自信持って!」
「そうだよ、君ならできる。頭の中でリズムを取るんだ。あとはパートナーに任せればいいさ。頑張ってくれ」
「二人ともありがとう。そうよね、皆であんなに練習したんだもの。……うん、やってみるわ」
静寂が訪れる。
これからダンスが始まる合図だ。私とセルゲイは互いに一礼をした。
ふと、グレースたちの姿が目に入った。パートナーのいない彼女たちは壁際でニタニタと笑いながらこちらを見ていた。
音楽が始まる。
セルゲイに導かれて最初の一歩を踏み出した。
ステップ、ステップ、ターン。
アルフィー先生に教わったリーズ式のダンスを私たちはすいすいと泳ぐようになぞっていった。
ふと隣を見ると、オリヴィアもパートナーの子爵令息と笑顔で踊っていた。会話をする余裕もあるみたいで、私は一安心した。
これでグレースたちを見返してやることができそうね。なによりオリヴィアが楽しそうで良かったわ。
「楽しいな……」と、セルゲイがふっと微笑む。
「えぇ! 最高のデビュタントだわ! ありがとう、セルゲイ」
「こちらこそ、お姫様」
本来なら私は18になったときにデビュタントを迎えるはずだった。
そのときはフレデリック様がエスコートをしてくださる予定だった。
思い描いたデビュタントとは随分違ったけど、とっても素晴らしい思い出になったわ。
こんなに素敵なプレゼントをしてくれたセルゲイには本当に感謝の気持ち胸が一杯だった。
曲は終焉を迎えて、私たちは再び一礼をしてダンスは終わる。
「オリヴィア、お疲れ様。上手に踊れていたわよ」
「えぇ! 自分でも信じられないくらいよ! 本当に二人のおかげだわ! ありがとう!」
「オリヴィアが頑張ったからだよ」
「そうよ」
私たちは次のグループのためにホールの端のほうに向かった。
一曲終わったら喉が乾いたわ。ちょっとお腹も減ったかも。一旦休憩をして、回復したら今度は会場を隈なく回ってエレーナのドレスの宣伝をしなきゃね。
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