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30 元貴族?
「ねぇ、リナって元貴族なの?」
「っぷはっ……!?」
思い掛けないアメリア様の発言に、私は飲んでいるお茶を吐き出しそうになった。激しく動揺して、ガタガタと音を立てながらソーサーにカップを置く。手の震えが止まらなかった。
「い、いえ……わ、わ、私は……」
私は彼女の不意打ちにすっかり動転して二の句が継げない。
「別に隠さなくてもいいわよ」
「わ……私は生まれも育ちも平民です……!」と、呻くように答える。
アメリア様は怪訝そうな顔で、
「所作でバレバレなんだけど」
「嘘っ!?」
ぎょっとして思わず立ち上がる。ターニャさんと一年かけてあんなに平民になる訓練をしたのに、な、なぜ……。
「それで隠せているつもりだったの? ま、わたしもこうやって一緒にお茶を飲むまでは分からなかったけどね。平民はそんな風に優雅にカップを持たないわ。隠すのならもっと上手くやるのね」
「そ、そうですか……」
冷や汗が止まらなかった。まだ心臓がバクバクしている。さすがに元皇族だとはばれていないわよね……?
「リナは没落貴族なの?」
アメリア様は興味津々に私に尋ねる。純粋な瞳が太陽のように眩しくて正面から見ていられなかった。
「そ、そうですね……。革命で、お家取り潰しに……。で、でも下位貴族なので平民とあまり変わりませんから!」
私は咄嗟に嘘を並べた。
「そうなのね。革命では没落した帝国貴族もいるって聞いたわ。リナも大変だったのね」
「えぇ、まぁ……。アメリア様はお詳しいのですね」
「帝国のことはフレディお兄様からいろいろ聞いているの。お兄様はね、エカチェリーナ様と何年も文通をしていて、お手紙の話をいつもわたしにしてくれていたのよ」と、アメリア様は嬉しそうに言った。
「そうなのですか」と、私は何食わぬ顔で相槌を打つ。
「そうなの! わたし、お兄様からお話を聞いていてエカチェリーナ様のことが大好きになっちゃった! 早くお会いしたいわぁっ!」
「あの……エカチェリーナ、様は……」と、私はおずおずと言った。
公式では私は死亡しているのだ。私たちが会うことは決してない。
「リナは知らないの?」アメリア様はきょとんとして「エカチェリーナ様は生きているんだって! お兄様が言っていたわ。だから今、お兄様たちが一生懸命探している最中なの。それにお兄様はエカチェリーナ様に会ったときに渡そうと思って、今もお手紙を書き続けているのよ!」
「えっ……! フレデリック様が……?」
驚いて、息を呑んだ。
私だけじゃなかったんだ……!
にわかに胸が早鐘を打った。嬉しくて涙がこみ上げてきて、ぐっと堪えて飲み込んだ。
フレデリック様もまだ私に手紙を書き続けている。まだ私のことを想っていてくださっている。その事実が胸を打った。
「わたしはね」アメリア様は得意げに話を続ける。「そんなことをしたらエカチェリーナ様の重荷になるわよ、って言っているんだけど、お兄様ったら『リーナも革命後以降の空白の期間の僕の話を知りたいはずだ』って聞かないのよ。おかしいでしょう? 自意識過剰で本当に呆れちゃうわ」
アメリア様はくすくすと笑った。私はなんだかこそばゆい気分で微苦笑した。
同じことを考えていたわ……。そんな自分のことを思い上がりも甚だしいわねって自嘲していたけど、フレデリック様も同じ気持ちだったなんて……。
でも、いつかは終止符を打たないといけないときが来る。
その日が、怖い。
「でもね……」
アメリア様は打って変わって悲しげな顔で俯いた。
「どうしたのですか?」
「あのね、時間がないの。このままだとフレディお兄様は年内にもフローレンス・フォード侯爵令嬢と婚約させられそうなの……」
「っぷはっ……!?」
思い掛けないアメリア様の発言に、私は飲んでいるお茶を吐き出しそうになった。激しく動揺して、ガタガタと音を立てながらソーサーにカップを置く。手の震えが止まらなかった。
「い、いえ……わ、わ、私は……」
私は彼女の不意打ちにすっかり動転して二の句が継げない。
「別に隠さなくてもいいわよ」
「わ……私は生まれも育ちも平民です……!」と、呻くように答える。
アメリア様は怪訝そうな顔で、
「所作でバレバレなんだけど」
「嘘っ!?」
ぎょっとして思わず立ち上がる。ターニャさんと一年かけてあんなに平民になる訓練をしたのに、な、なぜ……。
「それで隠せているつもりだったの? ま、わたしもこうやって一緒にお茶を飲むまでは分からなかったけどね。平民はそんな風に優雅にカップを持たないわ。隠すのならもっと上手くやるのね」
「そ、そうですか……」
冷や汗が止まらなかった。まだ心臓がバクバクしている。さすがに元皇族だとはばれていないわよね……?
「リナは没落貴族なの?」
アメリア様は興味津々に私に尋ねる。純粋な瞳が太陽のように眩しくて正面から見ていられなかった。
「そ、そうですね……。革命で、お家取り潰しに……。で、でも下位貴族なので平民とあまり変わりませんから!」
私は咄嗟に嘘を並べた。
「そうなのね。革命では没落した帝国貴族もいるって聞いたわ。リナも大変だったのね」
「えぇ、まぁ……。アメリア様はお詳しいのですね」
「帝国のことはフレディお兄様からいろいろ聞いているの。お兄様はね、エカチェリーナ様と何年も文通をしていて、お手紙の話をいつもわたしにしてくれていたのよ」と、アメリア様は嬉しそうに言った。
「そうなのですか」と、私は何食わぬ顔で相槌を打つ。
「そうなの! わたし、お兄様からお話を聞いていてエカチェリーナ様のことが大好きになっちゃった! 早くお会いしたいわぁっ!」
「あの……エカチェリーナ、様は……」と、私はおずおずと言った。
公式では私は死亡しているのだ。私たちが会うことは決してない。
「リナは知らないの?」アメリア様はきょとんとして「エカチェリーナ様は生きているんだって! お兄様が言っていたわ。だから今、お兄様たちが一生懸命探している最中なの。それにお兄様はエカチェリーナ様に会ったときに渡そうと思って、今もお手紙を書き続けているのよ!」
「えっ……! フレデリック様が……?」
驚いて、息を呑んだ。
私だけじゃなかったんだ……!
にわかに胸が早鐘を打った。嬉しくて涙がこみ上げてきて、ぐっと堪えて飲み込んだ。
フレデリック様もまだ私に手紙を書き続けている。まだ私のことを想っていてくださっている。その事実が胸を打った。
「わたしはね」アメリア様は得意げに話を続ける。「そんなことをしたらエカチェリーナ様の重荷になるわよ、って言っているんだけど、お兄様ったら『リーナも革命後以降の空白の期間の僕の話を知りたいはずだ』って聞かないのよ。おかしいでしょう? 自意識過剰で本当に呆れちゃうわ」
アメリア様はくすくすと笑った。私はなんだかこそばゆい気分で微苦笑した。
同じことを考えていたわ……。そんな自分のことを思い上がりも甚だしいわねって自嘲していたけど、フレデリック様も同じ気持ちだったなんて……。
でも、いつかは終止符を打たないといけないときが来る。
その日が、怖い。
「でもね……」
アメリア様は打って変わって悲しげな顔で俯いた。
「どうしたのですか?」
「あのね、時間がないの。このままだとフレディお兄様は年内にもフローレンス・フォード侯爵令嬢と婚約させられそうなの……」
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追記
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