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31 婚約の行方、皇女の行方
「フローレンス様と……!」
その名前に胸がチクリと痛んだ。やっぱり、婚約の話は進んでいたのね。まぁ普通はそうなるわよね。
でも……そんな話、聞きたくない。
「そうなの。このままエカチェリーナ様が見つからなかったらフォード侯爵令嬢で決まりなんだって。でも、そんなの絶対に嫌。侯爵令嬢はなんだかとっても冷たい感じがするの……。だからあんな人がわたしのお姉さまになるなんてあり得ないわ!」
アメリア様は今にも泣きそうな顔で上目遣いで私を見た。私は困惑して、ただおろおろとするだけだった。
そんなことを言われても平民の自分にはどうすることもできないわ。
「他に有力な候補がいないのであれば、どうすることも……」
私は悲しく首を横に振る。
「あんな女、フレディお兄様に相応しくないわ……あっ、そうだわっ!」
アメリア様は今度はキラキラと瞳を輝かせて私を見た。
「ねぇ、もしエカチェリーナ様がこのまま現れなかったらリナが代わりにお兄様の婚約者になって!」
「えぇええっ!?」と、私は素っ頓狂な声を上げた。
アメリア様は私の反応など意に介さずに一人で盛り上がって話を進める。
「そうだわっ! リナがわたしのお姉さまになってくれたら嬉しいわ! 侯爵令嬢なんかより断然いい!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 私は平民ですよ? 絶対に不可能です!」
「でも元貴族なんでしょ? だったらシェフィールド家の養子になったらいいじゃない。そうしたら二人の婚約になんの問題もないわ。それで行きましょう! ねっ、いいでしょう?」
私はアメリア様を……そして自分自身をも落ち着かせるようにコホンと大きく咳払いをして、
「……アメリア様、そんな単純な話ではないのです。国王陛下はなぜ侯爵令嬢を王太子殿下の婚約者候補に推したと思いますか?」
「えっ? 身分が高いからじゃないの? だから――」
「それもありますが、現在リーズ国内ではフォード侯爵家の派閥はとても影響力があります。陛下はそれを見越しての判断かと思われます」
「そうなの?」と、アメリア様は目をぱちくりさせる。
「そうです。フローレンス様の後ろ盾は大きい。その規模は王家の求心力にも影響するでしょう。仮に私がシェフィールド家の養子になって王太子殿下と婚約しても、それを上回るメリットがまるでない。もともとのシェフィールド家の影響力になんのプラスにもならないのです。むしろ、王太子と婚約したいがために平民を養子にしたことでマイナスになるかもしれません」
もし私がエカチェリーナだと暴露すればストロガノフ家とその派閥の家門は後ろ盾になってくれるかもしれないけど、皇女のことは絶対に言えない。皇女でない平民の私には利用価値なんて1ミリもない。
「婚約って難しいのね……」
「そうですね。貴族の関係性はややこしいですね」
「わたしもそうやってメリットとかで知らない人と婚約させられるのかな……」
アメリア様はしょんぼりとして呟いた。
「そんな……。きっと公爵閣下はアメリア様の幸せを一番に考えて婚約相手を決めますよ」と、私が答えるとアメリア様はパッと花が咲いたような明るい顔になる。
「そうよね! お父様ならきっとそうだわ! ――ねぇ、リナは貴族の頃は婚約者はいたの? メリットとかでご両親に決められた?」
「私は……」
フレデリック様と婚約解消になりました、と言いそうになったが純真な少女の夢を壊したくなかったのでおくびにも出さない。……もしかしたら自分でもまだ認めたくないからなのかもしれないけど。
「私はまだ婚約の話なんて全然出ていませんでした。下位貴族は気楽なものですよ」
私はまたぞろ嘘をついた。
「そうなのね。じゃあ、リナは好きな人と結婚できるのね。いいなぁ~」
「そうかもしれませんね……」と、私は苦笑いする。
お慕いする方とはもう結婚できない。
私はこの先フレデリック様のことを忘れて、他に好きな人ができるのだろうか。
……全く想像がつかないわ。
「リナが駄目だったら、やっぱり早くエカチェリーナ様を見つけないといけないわね」
「えぇっ!?」
「だって、そうでしょう? 侯爵令嬢がフレディお兄様の婚約者なんて嫌だもん」
「そうですけど……」
「ねっ、わたしたちもエカチェリーナ様を探しましょうよ! リナも手伝ってくれる?」
「えぇっと……」
私は返答に窮した。真剣な気持ちの彼女を応援したいけど、自身を探す協力だなんて馬鹿げている。
「お兄様は連邦国内を中心に捜索しているみたいだけど、わたしはエカチェリーナ様はリーズにいると思うの」
「ええぇぇえええっ!!」
思わず大音声で叫ぶ。
アメリア様は怪訝な顔をして、
「だって普通は好きな人の側にいたいものじゃない? わたしだったらお父様やお兄様と一緒にいたいわ。だからきっとエカチェリーナ様もフレディお兄様の近くにいらっしゃると思うわ!」
「…………」
じわりと額に冷や汗が浮き上がる。
す、鋭い……。いや、私の思考が幼い子にもなぞられるくらいに単純なのかしら?
いずれにせよ、困った……。
「じゃあ、次のお休みは早速エカチェリーナ様を探しに行きましょう! ねっ?」と、アメリア様は私にぎゅっと抱きついて期待のこもったキラキラした瞳で見上げてきた。
「……わ、分かりました」
私は頷くより他なかった。
あとでセルゲイに相談しよう……。
その名前に胸がチクリと痛んだ。やっぱり、婚約の話は進んでいたのね。まぁ普通はそうなるわよね。
でも……そんな話、聞きたくない。
「そうなの。このままエカチェリーナ様が見つからなかったらフォード侯爵令嬢で決まりなんだって。でも、そんなの絶対に嫌。侯爵令嬢はなんだかとっても冷たい感じがするの……。だからあんな人がわたしのお姉さまになるなんてあり得ないわ!」
アメリア様は今にも泣きそうな顔で上目遣いで私を見た。私は困惑して、ただおろおろとするだけだった。
そんなことを言われても平民の自分にはどうすることもできないわ。
「他に有力な候補がいないのであれば、どうすることも……」
私は悲しく首を横に振る。
「あんな女、フレディお兄様に相応しくないわ……あっ、そうだわっ!」
アメリア様は今度はキラキラと瞳を輝かせて私を見た。
「ねぇ、もしエカチェリーナ様がこのまま現れなかったらリナが代わりにお兄様の婚約者になって!」
「えぇええっ!?」と、私は素っ頓狂な声を上げた。
アメリア様は私の反応など意に介さずに一人で盛り上がって話を進める。
「そうだわっ! リナがわたしのお姉さまになってくれたら嬉しいわ! 侯爵令嬢なんかより断然いい!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 私は平民ですよ? 絶対に不可能です!」
「でも元貴族なんでしょ? だったらシェフィールド家の養子になったらいいじゃない。そうしたら二人の婚約になんの問題もないわ。それで行きましょう! ねっ、いいでしょう?」
私はアメリア様を……そして自分自身をも落ち着かせるようにコホンと大きく咳払いをして、
「……アメリア様、そんな単純な話ではないのです。国王陛下はなぜ侯爵令嬢を王太子殿下の婚約者候補に推したと思いますか?」
「えっ? 身分が高いからじゃないの? だから――」
「それもありますが、現在リーズ国内ではフォード侯爵家の派閥はとても影響力があります。陛下はそれを見越しての判断かと思われます」
「そうなの?」と、アメリア様は目をぱちくりさせる。
「そうです。フローレンス様の後ろ盾は大きい。その規模は王家の求心力にも影響するでしょう。仮に私がシェフィールド家の養子になって王太子殿下と婚約しても、それを上回るメリットがまるでない。もともとのシェフィールド家の影響力になんのプラスにもならないのです。むしろ、王太子と婚約したいがために平民を養子にしたことでマイナスになるかもしれません」
もし私がエカチェリーナだと暴露すればストロガノフ家とその派閥の家門は後ろ盾になってくれるかもしれないけど、皇女のことは絶対に言えない。皇女でない平民の私には利用価値なんて1ミリもない。
「婚約って難しいのね……」
「そうですね。貴族の関係性はややこしいですね」
「わたしもそうやってメリットとかで知らない人と婚約させられるのかな……」
アメリア様はしょんぼりとして呟いた。
「そんな……。きっと公爵閣下はアメリア様の幸せを一番に考えて婚約相手を決めますよ」と、私が答えるとアメリア様はパッと花が咲いたような明るい顔になる。
「そうよね! お父様ならきっとそうだわ! ――ねぇ、リナは貴族の頃は婚約者はいたの? メリットとかでご両親に決められた?」
「私は……」
フレデリック様と婚約解消になりました、と言いそうになったが純真な少女の夢を壊したくなかったのでおくびにも出さない。……もしかしたら自分でもまだ認めたくないからなのかもしれないけど。
「私はまだ婚約の話なんて全然出ていませんでした。下位貴族は気楽なものですよ」
私はまたぞろ嘘をついた。
「そうなのね。じゃあ、リナは好きな人と結婚できるのね。いいなぁ~」
「そうかもしれませんね……」と、私は苦笑いする。
お慕いする方とはもう結婚できない。
私はこの先フレデリック様のことを忘れて、他に好きな人ができるのだろうか。
……全く想像がつかないわ。
「リナが駄目だったら、やっぱり早くエカチェリーナ様を見つけないといけないわね」
「えぇっ!?」
「だって、そうでしょう? 侯爵令嬢がフレディお兄様の婚約者なんて嫌だもん」
「そうですけど……」
「ねっ、わたしたちもエカチェリーナ様を探しましょうよ! リナも手伝ってくれる?」
「えぇっと……」
私は返答に窮した。真剣な気持ちの彼女を応援したいけど、自身を探す協力だなんて馬鹿げている。
「お兄様は連邦国内を中心に捜索しているみたいだけど、わたしはエカチェリーナ様はリーズにいると思うの」
「ええぇぇえええっ!!」
思わず大音声で叫ぶ。
アメリア様は怪訝な顔をして、
「だって普通は好きな人の側にいたいものじゃない? わたしだったらお父様やお兄様と一緒にいたいわ。だからきっとエカチェリーナ様もフレディお兄様の近くにいらっしゃると思うわ!」
「…………」
じわりと額に冷や汗が浮き上がる。
す、鋭い……。いや、私の思考が幼い子にもなぞられるくらいに単純なのかしら?
いずれにせよ、困った……。
「じゃあ、次のお休みは早速エカチェリーナ様を探しに行きましょう! ねっ?」と、アメリア様は私にぎゅっと抱きついて期待のこもったキラキラした瞳で見上げてきた。
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私は頷くより他なかった。
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追記
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