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35 お茶会へ出発
アメリア様が招待された大きなお茶会とは、フローレンス・フォード侯爵令嬢の主催するお茶会だった。
侯爵令嬢は王都にいる全ての貴族の子女に招待状を出したらしい。グレースやオリヴィアや、更には連邦国貴族のセルゲイまでも誘われていた。
もちろん、フレデリック様も……。彼は本音は行きたくないけど可愛い従妹の社交界プチデビューを見守るためにも招待を受けることにしたそうだ。
私は朝からシェフィールド公爵家へ赴いて、ドレスを着飾る準備で忙しかった。
公爵閣下は今日のために新しいドレスを用意してくれた。私は付添人なので、さすがに令嬢のような華やかなデザインではないけれど、それでも凄く上質な生地だと一目で分かるものだった。平民が着てもいいのかしらと不安になるくらいだったわ。
しかも公爵家のメイドたちが着用の前に全身の手入れをしてくれたり、お化粧や髪型のセットもしっかりやってくれて、至れり尽くせりでずっと恐縮しっぱなしで既にもう疲れてしまった。皇女時代は毎日のようにこんな風に丁寧に手入れされていたけど、あのときの私はよく平気だったわね……。
「リナ、お待たせ! どうかしら?」
「アメリア様! とっても可愛らしいです!」
すっかり準備の整ったアメリア様が私の前で嬉しそうにくるりと回ってみせた。今日は水色と白を基調にしたドレスで、リボンやフリルがいっぱいで幼い彼女のピュアな可愛さを存分に引き出していた。
「ま、当然ね。リナもとっても素敵! ……だけど、ちょっと地味ねぇ」と、アメリア様はしげしげと私のドレスを見つめる。今日はモスグリーンとベージュのドレスで、露出も皆無で装飾も控えめだった。
「私は付添人ですから、これくらいで丁度いいのですよ。見てくれは地味かもしれませんが、素材は一級品で、素敵なドレスを用意してくださった公爵閣下に感謝の気持ちでいっぱいです」
「ふぅん……わたしは生地とかよく分からないけど、リナが気に入ってくれたのなら別にいいわ」
「はい。アメリア様もこれから勉強すればだんだんと分かっていきますよ」
「二人とも、準備はできた?」
そのとき、フレデリック様が部屋に入って来た。
今日は彼も一緒に馬車に乗って侯爵邸へと向かうのだ。彼は王子様らしく白を基調とした服装で、差し色にアメリア様と同じ青系を持ってきていていた。
「フレディお兄様!」と、アメリア様がピョンと跳ねながら彼に飛び付いた。
「今日はお二人で衣装を合わせていらっしゃるんですね。兄妹みたいでとっても素敵です」
「ありがとう、従妹の大事なプチデビューの日だからね。二人とも、とても綺麗だよ」
「まぁね」
「恐れ入ります、殿下」
「さ、行こうか。小さなお姫様」と、フレデリック様はアメリア様の手を取った。私は彼らの後ろを静かに歩いて行く。
馬車は恐れ多くも私も同乗させてもらった。
アメリア様の隣に座ってフレデリック様と向かい合う。こんなに近くで彼と視線が合うなんて思いもよらなかったので私はずっとドキドキしっぱなしだった。
アメリア様は大規模なお茶会は初めての経験で馬車にいる間もずっと落ち着かない様子で、終始ペラペラと喋りっぱなしだった。
一方フレデリック様はあまり気が乗らない様子で、ぼうっと窓の外を眺めていることが多かった。
今回のお茶会はフローレンス様のご自身の王太子の婚約者としての立場を確立するつもりもあるのだろう。それを承知で王太子が赴くということは無言の承諾になるのかもしれない。
時間は私たちのことなどお構いなしにどんどん前を過ぎて行く。そして嘲笑うかのように私たちの運命までも断りなくポイと置いていくのだ。
規則的に揺れる馬車の音が真夜中に聞こえる時計の秒針の音みたいに、私を不安定な気持ちにさせた。
侯爵令嬢は王都にいる全ての貴族の子女に招待状を出したらしい。グレースやオリヴィアや、更には連邦国貴族のセルゲイまでも誘われていた。
もちろん、フレデリック様も……。彼は本音は行きたくないけど可愛い従妹の社交界プチデビューを見守るためにも招待を受けることにしたそうだ。
私は朝からシェフィールド公爵家へ赴いて、ドレスを着飾る準備で忙しかった。
公爵閣下は今日のために新しいドレスを用意してくれた。私は付添人なので、さすがに令嬢のような華やかなデザインではないけれど、それでも凄く上質な生地だと一目で分かるものだった。平民が着てもいいのかしらと不安になるくらいだったわ。
しかも公爵家のメイドたちが着用の前に全身の手入れをしてくれたり、お化粧や髪型のセットもしっかりやってくれて、至れり尽くせりでずっと恐縮しっぱなしで既にもう疲れてしまった。皇女時代は毎日のようにこんな風に丁寧に手入れされていたけど、あのときの私はよく平気だったわね……。
「リナ、お待たせ! どうかしら?」
「アメリア様! とっても可愛らしいです!」
すっかり準備の整ったアメリア様が私の前で嬉しそうにくるりと回ってみせた。今日は水色と白を基調にしたドレスで、リボンやフリルがいっぱいで幼い彼女のピュアな可愛さを存分に引き出していた。
「ま、当然ね。リナもとっても素敵! ……だけど、ちょっと地味ねぇ」と、アメリア様はしげしげと私のドレスを見つめる。今日はモスグリーンとベージュのドレスで、露出も皆無で装飾も控えめだった。
「私は付添人ですから、これくらいで丁度いいのですよ。見てくれは地味かもしれませんが、素材は一級品で、素敵なドレスを用意してくださった公爵閣下に感謝の気持ちでいっぱいです」
「ふぅん……わたしは生地とかよく分からないけど、リナが気に入ってくれたのなら別にいいわ」
「はい。アメリア様もこれから勉強すればだんだんと分かっていきますよ」
「二人とも、準備はできた?」
そのとき、フレデリック様が部屋に入って来た。
今日は彼も一緒に馬車に乗って侯爵邸へと向かうのだ。彼は王子様らしく白を基調とした服装で、差し色にアメリア様と同じ青系を持ってきていていた。
「フレディお兄様!」と、アメリア様がピョンと跳ねながら彼に飛び付いた。
「今日はお二人で衣装を合わせていらっしゃるんですね。兄妹みたいでとっても素敵です」
「ありがとう、従妹の大事なプチデビューの日だからね。二人とも、とても綺麗だよ」
「まぁね」
「恐れ入ります、殿下」
「さ、行こうか。小さなお姫様」と、フレデリック様はアメリア様の手を取った。私は彼らの後ろを静かに歩いて行く。
馬車は恐れ多くも私も同乗させてもらった。
アメリア様の隣に座ってフレデリック様と向かい合う。こんなに近くで彼と視線が合うなんて思いもよらなかったので私はずっとドキドキしっぱなしだった。
アメリア様は大規模なお茶会は初めての経験で馬車にいる間もずっと落ち着かない様子で、終始ペラペラと喋りっぱなしだった。
一方フレデリック様はあまり気が乗らない様子で、ぼうっと窓の外を眺めていることが多かった。
今回のお茶会はフローレンス様のご自身の王太子の婚約者としての立場を確立するつもりもあるのだろう。それを承知で王太子が赴くということは無言の承諾になるのかもしれない。
時間は私たちのことなどお構いなしにどんどん前を過ぎて行く。そして嘲笑うかのように私たちの運命までも断りなくポイと置いていくのだ。
規則的に揺れる馬車の音が真夜中に聞こえる時計の秒針の音みたいに、私を不安定な気持ちにさせた。
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追記
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