【本編完結】元皇女なのはヒミツです!

あまぞらりゅう

文字の大きさ
76 / 76
番外編

14 炎の道を行く(完)

「お母様! アリスちゃんがお母様は本当に男爵夫人なのって言っていたわ! お姫様みたいだって」

「えっ!? ……お、お母様は正真正銘の男爵夫人よ!? しかも、へ、平民上がりの!」

 ぽかぽかと温かい陽気な昼下がり、私は娘のアナスタシアとともに庭で小さなお茶会を開いていた。

 先週の伯爵令嬢のお茶会で、娘が意地悪を言ってきた王子に熱いお茶をぶっかけるという事件を起こしたので、お淑やかに過ごす訓練の一貫なのだ。


「これからは子爵夫人だけどな」

 その時、突如アレンスキー家の家長が姿を現した。

「セルゲイ!?」

「お父様っ!!」

 アナスタシアは大好きな父親に勢いよく駆け寄ってぎゅっと飛び付く。彼は嬉しそうに目を細めて愛する娘を抱き上げた。

「どういうこと?」

「あぁ、この前の魔物討伐の功績が認められて陞爵が決まった」

「凄いじゃない! おめでとう!」

「しょうしゃくって、なぁに?」

「爵位が上がるってことだよ。うちの家門は今は男爵だろう? それが一つ上がって、子爵になるってことさ」

「アナも、男爵令嬢じゃなくて、子爵令嬢になるのよ」

「すごぉい!」娘の瞳がキラキラと煌めく。「わたしも、お姫様になれる?」

「お姫様は……もっと先かしら?」と、私は困り顔で肩をすくめる。

「これからも頑張って、いずれはアナを皇女様にしないとな。……あの生意気な王子よりも上の身分だ」

「なに冗談を言ってるのよ、もう。王家に対して不敬だわ」


 セルゲイと結婚して5年がたった。
 彼はリーズ国の魔法騎士団として数々の功績を上げて、私は王立魔法研究所で魔道具の開発に勤しんでいる。

 そして、私たちには大切な宝物ができた――娘のアナスタシアだ。

 この子は、アレクサンドル皇家よりもストロガノフ家の血を濃く受け継いだみたいで、僅か4歳にして常に同年代の殿方たちの視線を独り占めするという恐ろしい子だ。
 年頃になった時のことを考えると、今から恐ろしい……。

「俺は半分本気だ。お腹の子のためにも、もっと広い屋敷に引っ越したいしな」と、セルゲイはそっと私の大きなお腹をさする。

 来月、新しい命が生まれる。
 私たち幸せな日々を過ごしていた。

「私、窮屈な宮廷生活はもうこりごりだわ」私も自身のお腹に手を当てた。「それに、この子たちには自由に恋愛して欲しいから」

「いや……アナは絶対に嫁に出さねぇ……!」

「もう! いつかは覚悟を決めなさいよ!」

「はぁ…………」と、セルゲイは深くため息をつく。

 愛娘の未来のことを今から憂いている彼がおかしくて、私はくすくすと笑った。
 彼の腕の中で、なにも知らない無垢な娘が、なにやら落ち込んでいるらしい父親の頭を撫でて慰めている。

 これが、私たちの平凡で平穏な日常。
 それは、これからもきっと続いていくはず。
 子爵夫人の私、その子供たち……時が流れても、皆がずっと幸福な生活を送れたらいいな。


 元皇女なのは、ここだけの秘密だけどね。





◇ ◇ ◇





以上でセルゲイのif編は終わりです。
長く間が空いてしまった中、最後まで読んでくださって本当にありがとうございました!!
あとは時間があれば本編終了後の登場人物たちの姿とか書きたい…!

こちらの作品は元気なキャラが多いので書いていて楽しかったです。
ちなみに作者が特にお気に入りのキャラは、グレースとアメリアでしたー!笑 ツンデレ好き(・∀・)ノ

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。