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第九話(三)
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皇都の街外れに、四ツ折夏樹の邸宅があった。
彼は当主の夏純の一回り下の弟で、皇都で軍人として働きながら妻と幼い息子と慎ましく暮らしていた。
次男の彼は、兄が家督を継ぐと同時に、問答無用で四ツ折家から追い出されてしまった。表沙汰にはなっていないが、弟のほうが高い霊力を持っていたからだ。
兄は、このまま弟が居座れば己の地位が危ぶまれると恐れて、まだ未成年の弟を生家から追放したのだ。
夏樹は持ち前の霊力を活かして、軍の陰陽部に入隊した。そこで才覚を発揮し、みるみる間に将校まで上り詰めたのだった。
「秋葉ちゃんも龍神様の花嫁になったって噂で聞いたけど、まさか黒龍様の花嫁とは……」
「あはは。私が一番びっくりしたわ。見ての通り、まだ霊力が戻っていないから」と、秋葉は肩を竦める。しかしその表情は、里にいた頃と違って明るく輝いて見えた。
「ま、そのうち霊力も戻るだろう」
憂夜が珈琲をすすりながら涼しげに言う。落ち着き払った彼の様子は、とても初めて訪れた邸宅での態度に見えず、秋葉は首を傾げた。
「もしかして、二人は知り合いなの?」
「あぁ、言ってなかったね。僕は黒龍様の神力をお借りして戦うことが多いんだ」
「そ。夏樹はよく俺を祀ってくれるんだ。黒龍を崇める人間なんざあんまいねぇからな。ま~、夜とか闇は恐怖の対象だからなぁ」
「陰と陽は表裏一体、闇がなければ光も生まれません。黒龍様も白龍様も、我々人間にとって大切な龍神様ですから」
「言ってくれるな~。じゃあ、次からは酒の量を増やしてもっと俺を崇めてくれ」
「飲み過ぎはいけませんよ、黒龍様」
「お前も言うか……」
「ふふっ、旧知の仲ってわけね」
「まぁな」
「そう」と、秋葉は目を細める。尊敬する血の繋がった叔父が、自分が花嫁になる前から夫と懇意にしていて嬉しく思った。
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