【短編】王太子の婚約破棄で逆ところてん式に弾き出された令嬢は腹黒公爵様の掌の上

あまぞらりゅう

文字の大きさ
14 / 17

14

しおりを挟む




 その日の午後、アルベルトは部下たちを執務室に呼び出した。
 さっきディアナに噛み付いてきた二人だ。

 彼らを前にした途端、戦場と同じ殺気立った瞳を彼らに向けた。恐怖を帯びた沈黙がみるみる広がっていって、部下たちは縮こまった。

 少しして、公爵は底冷えするような低音で静かに言った。

「お前たちのことは、部下として信頼しているが……」

 彼は一拍置いて部下たちを見やる。
 恐ろしさを伴った静けさが心地悪くて、二人は背中にゾクリと悪寒が走った。

「今後、私の婚約者を傷付けるようなことがあれば容赦はしない。……分かったな?」

「は、はい……!」

「承知いたしました……!」

 辞去が許されると、二人は逃げるように部屋から飛び出した。
 彼らはあの目を知っている。
 あれは、戦場で敵を前にした時の、血に飢えた瞳だ。


「君たち」

 その時、不意に彼らの背後から声がした。
 冷や汗が止まらない中で、唐突のそれに二人は心臓が止まりそうになる。

 恐る恐る振り返ると、そこにはアルベルトの親友で副司令官、そして穏健派のギュンター侯爵が笑顔で二人を眺めていた。

「もしかして、アルベルトに何か言われた?」

「そ、それは……」

 二人が気まずそうに口ごもっていると、

「いやぁ、悪いねぇ~。アルベルトはとやっと結ばれたから、はしゃいでいるんだよ~。許してやってくれ」

 侯爵はケラケラと笑いながら楽しそうに去っていった。

「そんな、まさか……」

「嘘だろ……」

 取り残された二人は、いつまでも茫然自失と立ち尽くしていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚か者たちの婚約破棄

あんど もあ
ファンタジー
ライラは、父と後妻と妹だけが家族のような侯爵家で居候のように生きてきた。そして、卒業パーティーでライラの婚約者までライラでは無く妹と婚約すると宣言する。侯爵家の本当の姿に気づいているのがライラだけだと知らずに……。

夫が「未亡人を我が家で保護する」と言ってきました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
伯爵夫人カタリナの前に、夫が“行くあてのない未亡人”を連れて帰ってきた。 夫は「保護だ」と言い張り、未亡人を家に住まわせようとするが──その素性には不審な点が多すぎた。 問いただしても夫は曖昧な説明ばかり。 挙げ句の果てには「ずっと家にいればいい」「家族になればいいだろう」と、未亡人を第2夫人にする気満々。 家を守るため、カタリナは未亡人の身元を調査する。 そして判明するのは……? ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。

殿下、愛を叫ぶ前に契約書を読み直してください。

一ノ瀬和葉
恋愛
婚約破棄を告げられたクラリッサの返答は一言。 「愛は自由ですが、契約違反には請求書が付きますよ?」 論理と皮肉で殿下を追い詰める彼女の次の一手とは――。 ギャグありの痛快ざまあ短編です。 ※ご都合です。 なろうにも投稿しています。 60000PV誠に感謝です

三年分の涙を飲み込んで離婚を決めた私に、今さら愛してると言わないでください

まさき
恋愛
「別れてください」 笑顔で、声を震わせずに、澄花はそう言った。 三年間、夫の隣に立ち続けた。残業続きの夫を待ち、不満を飲み込み、完璧な妻を演じた。幼なじみの麗奈が現れるまでは、それが愛だと信じていた。 嫉妬も、怒りも、とうに泣き尽くしていた。残ったのは、静かな決意だけだった。 離婚届を差し出した翌朝、夫・誠は初めて泣いた。 ――遅すぎる。三年分、遅すぎる。 幼なじみに夫を奪われかけた妻が、すべてを手放す覚悟をしたとき、夫はようやく目を覚ます。泣き終わった女の強さと、取り戻せないものの重さを描く、夫婦の崩壊と再生の物語。

私より幼馴染を選んだ婚約者に別れを告げたら謝罪に来ましたが、契約を守れない貴族とは取引しませんので

藤原遊
恋愛
祖父が創立した大商会で、跡継ぎとして働いている私。 けれど婚約者は、私より幼馴染を選びました。 それなら構いません。 婚約という契約を守れない相手と、これ以上関係を続けるつもりはありませんから。 祖父の商会は隣国と新たな取引を始めることになりました。 ――その途端、なぜか元婚約者が謝罪に来るようになりましたが、もう遅いです。

婚約者を完全論破して黙らせてしまう令嬢

キャルキャル
恋愛
詭弁紛いを粉砕する話です 婚約者に色々言われるけど返り討ちにする話。

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しい私の話

あんど もあ
ファンタジー
王太子が真実の愛とか言って婚約破棄を宣言。廃太子と決まりました。おかげで妹の私に王太子になれと言われたのですが、不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しくて政略結婚の役にも立たないと言われていた私がですか?

処理中です...