赤い糸のさきに

アtorica

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「あれ? 扉の前にいるヤツって、最近希輝につきまとってるやつじゃね」
「え?」

 クラスメイトの言葉に顔を上げた希輝が、俺を目に留めた瞬間に嬉しそうに目元が和らいだ。
 それは一瞬のことで、すぐに何かを思い出したかのようにフイと視線を逸らしてしまったけど、そんな顔を見てしまっては怒る気力が失せていく。

「希輝」

 周りの興味津々な視線を無視して、ズカズカと希輝の元へと近寄る。
 希輝の顔が動揺を露に一歩後ずさったけど、気にせず詰め寄れば、周りのクラスメイトが立ち塞がった。

「おい、おまえ。いい加減、希輝のことは諦めろよ」
「……は?」
「フられたくせに、いつまでもつきまとってるのは格好悪いぞ」

 見当違いなことを言い出す希輝のクラスメイトに苛ついて、無視するように目の前を通り過ぎる。
 そんな俺の態度が気に食わなかったのか、俺に見当違いなことを言い放った男子に手首を掴まれて、勢いよく引き寄せられた。

「なっ」

 怒ったような表情をした吊り目気味の男子の顔が迫り、間近ににらみ合う。

「おい、お前。無視するんじゃ……ぐえっ」

 文句を言おうとした瞬間、俺の手首を掴んでいた男子は、カエルのような鳴き声をあげて目の前から消えていった。
 視線を横にずらせば、希輝に横から頬を押された吊り目男子の顔があって戸惑う。
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