自称不良は君専用

アtorica

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二章

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「今から席替えするぞ」

担任の一言で、静かだった教室内が一瞬にして沸き立つ。
正直にいうと、俺は静かな場所だったらどこでも良い。
皆が喜びで盛り上がる中、俺はその情景を冷めた目で見つめていた。

「七番……七番、一番後ろか」

窓側の一番後ろだ。外も眺められる良い席に当たったらしい。
内心でラッキーと思いつつ、自分の机と椅子を運ぶ。
運び終えて溜息を吐いたのと同時に、隣から物音が聞こえてきて顔を上げた。

「え。俺の隣って、もしかして」
「違う」
「いや、あきの紙に七番って書いてあるじゃん。って事は、やっぱり俺の隣だよな」

俺が持っていた紙を勝手に覗き見た宮田に、ヒクリと口端を引き攣らせた。
俺の前に、机と椅子を運んできた男子の手を掴む。

「え、な……何ですか」
「ちょっと俺と席変われ」
「な、駄目にきまってんだろ!」

前の席の男子じゃなく、宮田が慌てたように止めに入ってくる。
助けられた事に安堵したのか、俺が声をかけた男子は宮田に何度も頭を下げていた。

「一個ズレるだけじゃん」

不満丸出しで舌打ちをしながらも、諦めて席に座った。
ただでさえストレスが溜まる毎日だっていうのに、これからは休み時間だけじゃなく、授業中も絡まれるのか。
気持ちが沈んでいくのを感じて、俺の気持ちを映したかのような曇り空がある窓の外へと顔を背けた。
宮田が優し気な眼差しで俺を見ていた事に、気づく事すらなく。
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