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四章
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しおりを挟む「宮田、あいつ泣くかな」
俺の死体を前に涙を流す宮田を想像して、すぐに首を左右に振った。
「ないない、絶対ない」
ないと言ったのは自分なのに、少し寂しく感じて可笑しくなった。
それだけ今の自分は弱っているのかもしれない。
明日先生に出してもらったら、女子に怒りに行く前に、まずは家に帰って寝よう。
瞼をゆっくりと閉じて、再び暗闇へと意識を落とそうとした瞬間、体育館倉庫の外が騒がしくなった。
「……何だ?」
ボンヤリとした頭で、もしかして誰かが助けに来てくれたのかもと考える。
でも、こんな夜に一体誰が助けに来たのだろう。
そんな疑問は、扉が開いた瞬間に解決した。
「あき!」
俺の事をそう呼ぶ人物は一人しか思い当たらなくて、呆然とする。
「宮田?」
正直、体が重くて返事をするのすら億劫だったけど、宮田が俺に気づかずに出ていく事を考えたら怖くなった。
それだけは嫌だ。この救いを逃したら、確実に明日の朝まで出る事は叶わない。
馬鹿な俺でも、それだけは嫌な程分かってしまって、震える唇で名前を呼んだ。
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