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八章
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しおりを挟む「な」
勢いよく振り上げた足は、宮田の手によって容易く封じられていた。
「ただの人気者が、俺の蹴りを素手で」
衝撃すぎて、開いた口が塞がらなくなる。
宮田の力が強いことは知っていたけど、ここまでとは思わなかった。
結局状況を変えることも逃げることも出来ずに、縮こまった猫のように宮田を見上げた。
「どんだけ……俺の心を滅茶苦茶に掻き回せば気が済むんだよ!」
「は、っ!?」
突然何を言い出すんだ、なんて思う隙間もなかった。
俺の唇は、近距離にあった宮田の唇に塞がれていて、瞠目する。
「あき、口開けて」
宮田の言葉に抗うように、触れられた直後の貝のように唇を閉ざした。
電話をブチられたり逃げられたりして、宮田が怒るのは分かる。
分かるけど、嫌がらせでキスまでするかよ。
宮田の思考が掴めなさすぎて、それ以上に自分の感情が分からなかった。
嫌悪感を抱くと思っていたのに、今までとは比べ物にならないぐらい心臓がドキドキしている。
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