イラストに花束を

序章：運命を変える出来事

3話：撫子のお見舞い

ナースさんが連絡して数時間、我が姉、楠撫子くすのきなでしこが病室に現れた。
姉は所謂完璧人間というやつだ。運動神経抜群、頭脳明晰、ルックスは儚げ美人、おまけに稼ぎのいい旦那が入れば誰もが完璧だと言うだろう。だが怒らすと怖いのもこの姉なのだ。
姉はその目立ち具合からいじめにあったことがある。姉に嫉妬した女子たちが姉をいじめたのだ。当時俺はもっと幼かったから何が起きているのか理解していなかった。そんなある日姉と両親は学校に呼び出しをうけた。なんでも、全校集会の校長の挨拶の際に、校長からマイクを奪い自分がいじめられていて証拠がある事を全校生徒の前で演説したのだ。
その証拠というのも素晴らしく、学校についている監視カメラから拝借したものらしい。
だから学校側に消される前に行動を移したとか…。その演説のせいでいじめていた女子生徒はもれなく指導室行きになり、いじめを受けていた姉もカウンセリングに通うことになった。

姉の武勇伝はこれだけじゃないが、兎に角俺が言いたいのは怒った姉がどれだけ怖いかって事。

俺の職業を理解してくれている姉は、よく俺に規則正しい生活をするように言ってきた。家事全般が苦手な俺にはたまに家事をしに来てくれる姉は神様仏様のような存在。
そんな姉から言わせると人間の生活をしていない俺が心配だったらしい。だからこそかなり口酸っぱく言われてきたが、俺は無視し続けて仕事をしてしまった…。
勇者が訪れる最初の村に魔王が来るぐらい勝ち目がないんだ。

後は察して欲しい…。
こちらを静かに見る姉の後ろに魔王が見える。俺、まだ疲れてんのかな？

「葵。体調は大丈夫？」
「は、はい。体が重いけどなんとか…。」

この状態の姉にウソはつかない方が安全。幼少期の経験から俺にとっては周知の事実。

「そう。お医者さん曰くね？日々の生活が問題なんですって。」
「は、はい。」
「私結構注意してたつもりだったのだけれど…。ダメだったみたいね…。」
「この度は、本当に申し訳ありません。」
「謝るだけで改善するならいいけど、きっとしないわよね。」

いつ食えなくなるかわからない俺の職業は稼げる時に稼ぐのが一番。
だから正直倒れたけど今の生活を変える気は毛頭ない。それを姉も分かっている。
だから俺は小さく「…ごめん。」と言うしかなかった。

「はぁ…。そうよね。誰に似たのか頑固よね。」
「姉さん…。」
「でもね。私も馬鹿じゃないの。葵にその気がなければ外部に頼めばいいのよ。」
「へ？」
「葵、ハウスキーパーを雇いなさい。それも頻繁に来てくれるやつね。」
「えええええええええええええええええ」