イラストに花束を

1章：ヒマワリとナツメの出会い

7話：見違えるほどの大変身

今回そんなに大きい仕事はない。なぜなら一枚絵を描き切る依頼が多い。その為こっちの手間はそんなに必要ないのだ。
仕事を開始する上で詳細を確認する。
俺が担当している乙女ゲームとリズムゲームを足したアプリゲーム『天空の指輪』の追加のスチルが数枚。他のアプリゲームのキャラクターカードのデザインと、有名配信者グループ『タレイア』が歌をネットに出すのでそのMV用のキャラクターイラストと背景のイラストを仕上げる事ぐらいか。
何回かやり取りをしている顧客様だからやり取りも問題ない。
よし、納期が早い奴からやるか。
そう思いながらラフ画に取り掛かる。他のイラストレーターさんがどうやっているか知らないが、俺の場合大体２～３のラフ画を作成する。その中の一つを選んでもらいそれを仕上げるという形になる。
その中には捨て案というのが存在する。本命のラフ画を通りやすくするために作成するラフ画の事だ。まぁ捨て案といっても案は案なので結局考えて描かなくちゃいけないから仕事量は変わらないんだけどな。


いつの間にか時間がたっていたのか、デジタル時計は18時18分を指していた。
俺は「ふぅ」と一息つき、リビングに飲み物を取りに行く。

確か買っといた珈琲あったよな？それを珈琲メーカーにぶち込んで飲むかっと考えながらリビングの扉を開ける。
「あ、お疲れ様です。」
そう笑顔で声をかけてくる都築さん。

完全に都築さんの事を忘れていたが、それ以前にリビングの様子に驚く。

「ここ、本当にあのリビング…？」思った以上の変化につい言葉が出てしまう。
あの物が散乱していたリビングが、めちゃくちゃ綺麗になっていたのだ。
え！？何このアットホームの家は！！どういうこと！？ここ本当に俺の家のリビングなの！？

「捨てていいものかどうかわからなかったので、明らかにゴミだと思うものはそちらに纏めておきました。これからスーパーに買い出しに行きますが、何か食べたいものとかありますか？」
「え、あ、えっと…和食とか？」
「日持ちしますね。では和食にしましょう。買いだした分は別途請求になりますが大丈夫でしょうか？」
「も、問題ない、です。」

そのまま都築さんはスーパーに買い物に行った。
それを呆然を見ていた俺は、急ぎ足で風呂場とトイレを確認する。

「…めっちゃ綺麗になってる。」
風呂場とトイレも見違えるほどに綺麗になっている。
なんだここは？天国か？

仕事をしていたのに家が綺麗になっていく、都築さんは天使なのか？
いや神様にしか見えん！珈琲メーカーも綺麗になってる！
俺は感動しながら珈琲メーカーを起動し珈琲を飲む。あぁ。こんなリビングだったら友達呼べるわ。
まぁそんな親しい友達いないんだけどさ。

そう心中で自虐しながら珈琲を机に置く。そして念の為纏められたゴミを確認する。
うん。その中は迷うことなきゴミだ。問題ないと思い、机に置いた珈琲を飲みながら久しぶりにテレビを見始めた。