天狐様のお袋の味

アキサクラ

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2章:初恋のおにぎり

15話:豆狸

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「君だったの?」

そう僕が聞くと、口を押えていた手が胸元に移る。
観念したように森と瓜二つの少女は口を開いた。


「…ごめん、なさい」
「君はその、もしかして、妖怪なのかな?」
「驚かせるつもりはなかったの! ただ、貴方に会いたくて…!」
「え?」


僕に会いたかった?
どういうことだ?と頭にはてなマークが浮かび上がる。
僕に会いたかった理由を聞くために口を開こうとした瞬間に後ろから「牡丹もこっちにきなせぇ!」と声がする。
後ろを振り返るとろく郎さんが後ろにたっていた。


「ろく郎おじちゃん!」
「おじちゃん? おぬし、兄弟でもおったのか?」


さっきよりもしっかりした足取りでろく郎さんは、お酒の瓶を置く。
のたっと座ると「おらんぞぉ」と答えた。


「最近妖怪になったばかりでのぉ? いきなり人間に化けれておどろいとったわい。 そっから面倒を見るようになってな? 最近じゃあワシの世話もしてくれとる。 これはいい嫁っこになるぞぉ」
「最近っていつの話じゃ?」
「五年くらい前かのぉ?」
「六年前だよ。 ろく郎おじちゃん」
「六年前か、ほな最近じゃなぁ」
「酔っ払いジジイが。 大量のお酒を運ぶときいがいのたのたしとるくせに」
「さてはおぬし、酒がないからイライラしとるんじゃなぁ? ほれ、のめのめ」


天狐様の言葉に納得する。
だからろく郎さんが来るときドタドタとぶつかる音がしなかったのか。
どこまでもお酒が中心なんだなぁ。


「ぷはぁ~! 流石にお酒に関しては一流じゃな! 美味い!」
「じゃろぉ? よぉし。 天狐の機嫌がよくなったところで改めて紹介するぞ? この子は豆狸の牡丹じゃ」
「牡丹です。 よろしくお願いします」
「豆狸?」
「タヌキの妖怪の一種じゃな。 まあいろんな逸話があるが大体どれもあっておる」
「そうなの?」
「あぁ。 豆狸は普通の狸から妖怪になったばかりの姿のことを指すことが多い。 じゃからいろんな逸話があるのじゃ」
「なるほど!」


ん?でもそんな豆狸の牡丹ちゃんがどうして僕に会いたかったんだ?


「えっと、ね。 小さいときに新汰に助けてもらって…」
「小さいとき?」
「その時はまだ普通の狸だったから…。 あの小さな神社にいたら、猫が襲ってきて、それで逃げてたら私を人間の男の子が助けてくれて」
「あ、確かにミケにいじめられてた狸を助けた気が?」


神社にいるミケはナワバリ意識が強く、急に入ってきた牡丹ちゃんに驚いて攻撃してしまったのだろう。
確かにそんな狸を助けた気がする。
そのあとうちについてきたんだけどお父さんはまだ帰ってきてなくて、でもなんかご飯をあげたくて、初めて一人でおにぎりをつくったんだっけ。
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