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2日目第1話
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「道東を棄てる覚悟ですか・・・」
北海道知事の和久井は午前1時に受けた電話にため息が出た。
和久井が電話で話す相手は陸自北部方面総監であり現在は北海道の自衛隊部隊を束ねる北部方面統合任務集団の司令官となった浅井だった。
浅井は部隊の展開や報告がまとまり予想される展開を和久井に電話で伝えた。
それが北海道東部を放棄する可能性だった。
北海道の東部では夜間を利用して第5旅団がようやく防衛線を敷いていた。
北見市に第4普通科連隊を置き、標茶町に第6普通科連隊、根室半島西部には第27普通科連隊が展開していた。
第27普通科連隊は根室から上陸したソ連軍を封鎖する意味で展開していたが残る2個連隊は襲来するソ連軍に対応する意味があった。
北見市の第4普通科連隊は網走や紋別から侵攻するソ連軍を十勝地方へ進ませない為に配置された。第6普通科連隊は国後島と北海道の間にある野付水道からや釧路からソ連軍が上陸した場合、または27普連が突破された場合の備えに置かれていた。
戦車大隊は27普連へ1個中隊送り戦力を強化させた。
一応の防衛配置は整ったが広い道東を守るには第5旅団4000人だけでは戦力不足だ。ソ連軍が根室半島にだけしか襲来していないから対処できているに過ぎない。
もしも網走など複数で上陸されていたら薄い戦力の展開は容易に破られていただろう。
だが夜が開けソ連軍が道東で新たな作戦を実行したらどうなるか分からない。
そう浅川は和久井へ伝えた。
「分かりました。知事として住民避難の時間は頂きたい」
和久井はそうとしか言えない。
道北を占領され旭川にソ連軍は迫っている。しかも日米安保で米軍が動く事が無いと聞いている。自衛隊に何とかして道東を守って欲しいと言いたいのが和久井の本音だった。
しかし道北からのソ連軍と根室半島のソ連軍の二つを相手にするのは厳しいだろうと理解していた。
「はい。ソ連軍が攻勢に出た時は住民避難の時間を稼ぐ為に最大限努力します」
浅井はそう言うと電話を辞した。
和久井は電話を終えると対策本部へ戻る。
ここ札幌市にある北海道庁の対策本部は昨日の午前8時に発足した。
対策本部は危機対策局危機管理課を中心に道庁の職員が集まりソ連軍の進行状況と住民避難の進捗具合を中心に情報を集めている。
対策本部の中央に置かれた大きな北海道の地図はその二つが描かれている。
赤線で前線が描かれ、付箋が住民の避難状況と何人の避難民が集まっているか書かれて貼られている。
壁のホワイトボードには住民避難や避難先での問題が書かれている。
一応はPCでデータ化はしているが対策本部で共有されているのはホワイトボードなどで手書きで書かれた情報だった。
「車輌・ドライバー不足」
「空爆で移動が困難」
「屋内へ収容できる避難先がない」
「避難所への食料配給」
「避難住民への医療支援」
「道外避難の準備と交渉」
そうした問題が各市町村ごとに書かれホワイトボードは黒が目立つようになっていた。
午前1時が近づく今も仮眠を取る職員も居るが何人かは問題を解決しようと電話で自治体や企業と交渉をしている。
「新しい情報はあるかね?」
深夜の対策本部を仮眠中の危機対策課長に代わってまとめている危機対策課の課長補佐へ和久井は話しかける。
「道外への避難計画は午後から安全が確認されてから行えそうです」
課長補佐は和久井が執務室に居た間に入った情報を報告する。
道内にある避難民は道外からの移動ができなかった。
空路や海路はソ連軍の脅威がある為に運行が中止された。残る青函トンネルを通る鉄道での避難は青函トンネルの守備態勢が整っていない為に列車の運行が止まっていた。
北海道は制空権と制海権が無くても鉄道による輸送路が確保できていると言って良かった。自衛隊や警察に公安はソ連軍による何らかの攻撃が青函トンネルに仕掛けると米ソ冷戦の頃から考えていた。
この受け継がれた予測から青函トンネルを通る北海道新幹線と在来線は運行を停止していた。
昨日から青森の第9師団が青函トンネルの守備に部隊を置くようになった。
トンネルの北海道口の側にもヘリにより日が暮れる直前の時間に第9師団から普通科1個中隊が派遣された。
現在は本州口と北海道口それぞれに普通科1個中隊が配備されさらには警察の機動隊も警備に就きトンネルへの特殊部隊による攻撃を防ごうと配置されている。
このトンネル守備の配置ができたので鉄道の運行再開が出来たのだ。
だがソ連軍の攻撃を受ける危険性があるとする海路と空路での避難はまだ禁じられていた。
「そうか。後は避難所の確保を進めないとな」
対策本部長の席に腰掛ける和久井
「知事どうか仮眠をしてください。朝になればまた忙しくなります」
課長補佐はまだ仕事をしようとする和久井に気遣う。時間は午前1時だ。明日の業務を考えると今の内に少しでも寝て欲しいと課長補佐は気遣った。
「分かった。何か重大な事があれば遠慮なく起こしてくれ」
和久井はまた執務室へ戻る。
執務室には秘書によってソファーに枕と掛け布団が置かれている。これは和久井が指示したものだ。仮眠中でも急変にすぐ対応できるようにする為だ。
執務室からなら電話対応ができるしすぐに対策本部へ行く事ができる。
「さて、少しでも眠ろう」
ソファーに作業着のような防災服を着たまま和久井は寝転がる。
だが頭の中で残された課題と今後の懸念が頭の中でグルグルと巡り脳が睡魔を遠ざけてしまっていた。
それで身体を休めようと寝る体勢をソファーの上で変えるがなかなか睡魔がやって来ない。
ぼんやり寝たようで起きているそんな夜を和久井はソファーの上で過ごした。
脇坂の普通科中隊は函岳の麓を歩いていた。
音威子府をソ連軍が突破してしまい続々と後続部隊で音威子府が満ちて行くようになると脇坂は音威子府から離れて本隊である第3普通科連隊へ戻る事を決めた。
基幹連隊システムを使い連隊長へ本隊への復帰を求めると連隊長はすぐに許可した。連隊長からしたら戦力が戻るのは喜ばしいからだ。
けれども空には攻撃ヘリが飛び回り音威子府には警備のソ連兵が増強された。
脇坂は陽が出ている内は音威子府の町から離れて森に隠れ潜んだ。ソ連兵は進軍や補給に使う道路の警備をしているだけで脇坂達を探す様子は無かったのが救いだった。
ソ連兵から隠れながら脇坂の中隊は負傷者の手当てや弾薬・食料の再分配や交代での休憩をする事ができた。
陽が暮れて夜の8時から本隊へ戻るべく移動を始めた。
音威子府まで乗って来た軽装甲機動車や高機動車などの車輌は放棄した。もはや道路はソ連軍の支配下だ。
南へ名寄へ向かうのだ。
普通科隊員は銃などの装備を背負い数十kmの行軍をする訓練を何度繰り返し慣れているものだが負傷者を伴い暗い山道を慎重に進んでいては速く移動するのは難しい。
「砲撃だ」
「恩根内かな」
砲声と砲弾が炸裂した明かりが木々の間から見えた。
脇坂も誰もが急がなければと焦りを感じた。また前線を突破される前に原隊に合流しなければと焦る。
だが焦る脇坂中隊の足を止める出来事が起きる。
(止まれ!)
脇坂中隊の先頭を行く二曹が止まってハンドサインで後ろの隊員を止める。
二曹は小型のハンディカメラのような暗視装置で近くに居る人影を発見したのだ。
(あそこに居る)
二曹は近くへ来た上官である第1小隊の隊長である沖田二尉の目元へ右手で気配のある方向を指す。
「敵味方不明の集団がこの先に誰か居ます」
「動かず様子を見よう」
先頭の第1小隊から小声の無線で報告が脇坂に届く。
「20人ほど居ます」
暗視装置を使い怪しい方向を確認した第1小隊から続報が届く。
「その20人が南へ向かっています」
更なる続報を聞き脇坂は悩む。
敵か味方か分からないのだ。
同じように夜になって味方と合流するために動いている部隊かもしれないし、後方への潜入をしようと進む敵かもしれない。
暗視装置だけでは見分けができない。
そこで基幹連隊システムの出番となるが車輌を放棄した時に専用のPCなどの機器を破壊していた。
負傷者を背負い担架を作って運び、武器・弾薬と食料などを隊員それぞれで運ぶのだから基幹連隊システムの機器を運ぶ余裕は無い。通信機器は背負い式の無線機しかない。
「沖田二尉、1個班を偵察に出して確認せよ」
脇坂は隊員を送り直接見て確認させる事にした。
沖田は小隊から1個班10人を人影に向かって偵察に送り出す。
(ん?まさか)
脇坂は暗視装置で見える双方の動きを見ていた。不明な20人の人影はいきなり止まると散開するように散らばる。
「いいぞ。それでいい」
偵察班も暗視装置で不明な人影の動きを見て止まり同じく横へ隊員を散開させる。
「撃った!敵か!」
不明な人影の20人は偵察班へ向けて銃撃を始めた。
「第1小隊と第2小隊で偵察班を救援する!第3小隊は周囲警戒しつつ待機」
脇坂は2個小隊を率いて偵察班の救援に向かう。
第3小隊は負傷者を運んでいる為に戦闘には参加させなかった。
「敵が後退します!」
「第1小隊は偵察班を収容しろ。収容したら全小隊は第3小隊と合流して移動を再開する」
脇坂が2個小隊を連れて来るとソ連兵らしい20人は不利を悟ったのか素早く退却した。脇坂は追撃せず3普連へと戻る本来の目的に戻らせる。
「損害は軽傷2名です」
「よし、すぐに出発しよう」
第3小隊と合流した脇坂と2個小隊は隊員の状況確認をしてから移動を再開する。
脇坂中隊が歩き出してすぐだった。
「わあ!」
「ぐお!」
いきなり脇坂中隊の隊員達は連続する爆発のただ中に置かれた。
爆風をまともに受けた隊員が次々と倒れる。
「伏せろ!伏せろ!」
脇坂は自分も伏せつつ周りの隊員達へ叫んで命じる。
(さっきの敵兵が報せたか)
脇坂がそう思った通りだった。
偵察班に銃撃をしたソ連兵が脇坂達の中隊が居る事を報せた。ソ連軍の指揮官は砲兵へ砲撃を要請した。位置は報告のあった地区であり大まかな位置で砲撃が行われた。
面制圧をするような砲撃は脇坂中隊を叩くには十分だった。
「くそ、ここでやられるとは・・・」
砲撃が止み周囲を見渡した脇坂は倒れた部下達を見て唇を噛む。
あの20人のソ連兵を見逃していたら砲撃を受けずに移動できたのでは?判断を間違えたのでは?と悔やんだ。
北海道知事の和久井は午前1時に受けた電話にため息が出た。
和久井が電話で話す相手は陸自北部方面総監であり現在は北海道の自衛隊部隊を束ねる北部方面統合任務集団の司令官となった浅井だった。
浅井は部隊の展開や報告がまとまり予想される展開を和久井に電話で伝えた。
それが北海道東部を放棄する可能性だった。
北海道の東部では夜間を利用して第5旅団がようやく防衛線を敷いていた。
北見市に第4普通科連隊を置き、標茶町に第6普通科連隊、根室半島西部には第27普通科連隊が展開していた。
第27普通科連隊は根室から上陸したソ連軍を封鎖する意味で展開していたが残る2個連隊は襲来するソ連軍に対応する意味があった。
北見市の第4普通科連隊は網走や紋別から侵攻するソ連軍を十勝地方へ進ませない為に配置された。第6普通科連隊は国後島と北海道の間にある野付水道からや釧路からソ連軍が上陸した場合、または27普連が突破された場合の備えに置かれていた。
戦車大隊は27普連へ1個中隊送り戦力を強化させた。
一応の防衛配置は整ったが広い道東を守るには第5旅団4000人だけでは戦力不足だ。ソ連軍が根室半島にだけしか襲来していないから対処できているに過ぎない。
もしも網走など複数で上陸されていたら薄い戦力の展開は容易に破られていただろう。
だが夜が開けソ連軍が道東で新たな作戦を実行したらどうなるか分からない。
そう浅川は和久井へ伝えた。
「分かりました。知事として住民避難の時間は頂きたい」
和久井はそうとしか言えない。
道北を占領され旭川にソ連軍は迫っている。しかも日米安保で米軍が動く事が無いと聞いている。自衛隊に何とかして道東を守って欲しいと言いたいのが和久井の本音だった。
しかし道北からのソ連軍と根室半島のソ連軍の二つを相手にするのは厳しいだろうと理解していた。
「はい。ソ連軍が攻勢に出た時は住民避難の時間を稼ぐ為に最大限努力します」
浅井はそう言うと電話を辞した。
和久井は電話を終えると対策本部へ戻る。
ここ札幌市にある北海道庁の対策本部は昨日の午前8時に発足した。
対策本部は危機対策局危機管理課を中心に道庁の職員が集まりソ連軍の進行状況と住民避難の進捗具合を中心に情報を集めている。
対策本部の中央に置かれた大きな北海道の地図はその二つが描かれている。
赤線で前線が描かれ、付箋が住民の避難状況と何人の避難民が集まっているか書かれて貼られている。
壁のホワイトボードには住民避難や避難先での問題が書かれている。
一応はPCでデータ化はしているが対策本部で共有されているのはホワイトボードなどで手書きで書かれた情報だった。
「車輌・ドライバー不足」
「空爆で移動が困難」
「屋内へ収容できる避難先がない」
「避難所への食料配給」
「避難住民への医療支援」
「道外避難の準備と交渉」
そうした問題が各市町村ごとに書かれホワイトボードは黒が目立つようになっていた。
午前1時が近づく今も仮眠を取る職員も居るが何人かは問題を解決しようと電話で自治体や企業と交渉をしている。
「新しい情報はあるかね?」
深夜の対策本部を仮眠中の危機対策課長に代わってまとめている危機対策課の課長補佐へ和久井は話しかける。
「道外への避難計画は午後から安全が確認されてから行えそうです」
課長補佐は和久井が執務室に居た間に入った情報を報告する。
道内にある避難民は道外からの移動ができなかった。
空路や海路はソ連軍の脅威がある為に運行が中止された。残る青函トンネルを通る鉄道での避難は青函トンネルの守備態勢が整っていない為に列車の運行が止まっていた。
北海道は制空権と制海権が無くても鉄道による輸送路が確保できていると言って良かった。自衛隊や警察に公安はソ連軍による何らかの攻撃が青函トンネルに仕掛けると米ソ冷戦の頃から考えていた。
この受け継がれた予測から青函トンネルを通る北海道新幹線と在来線は運行を停止していた。
昨日から青森の第9師団が青函トンネルの守備に部隊を置くようになった。
トンネルの北海道口の側にもヘリにより日が暮れる直前の時間に第9師団から普通科1個中隊が派遣された。
現在は本州口と北海道口それぞれに普通科1個中隊が配備されさらには警察の機動隊も警備に就きトンネルへの特殊部隊による攻撃を防ごうと配置されている。
このトンネル守備の配置ができたので鉄道の運行再開が出来たのだ。
だがソ連軍の攻撃を受ける危険性があるとする海路と空路での避難はまだ禁じられていた。
「そうか。後は避難所の確保を進めないとな」
対策本部長の席に腰掛ける和久井
「知事どうか仮眠をしてください。朝になればまた忙しくなります」
課長補佐はまだ仕事をしようとする和久井に気遣う。時間は午前1時だ。明日の業務を考えると今の内に少しでも寝て欲しいと課長補佐は気遣った。
「分かった。何か重大な事があれば遠慮なく起こしてくれ」
和久井はまた執務室へ戻る。
執務室には秘書によってソファーに枕と掛け布団が置かれている。これは和久井が指示したものだ。仮眠中でも急変にすぐ対応できるようにする為だ。
執務室からなら電話対応ができるしすぐに対策本部へ行く事ができる。
「さて、少しでも眠ろう」
ソファーに作業着のような防災服を着たまま和久井は寝転がる。
だが頭の中で残された課題と今後の懸念が頭の中でグルグルと巡り脳が睡魔を遠ざけてしまっていた。
それで身体を休めようと寝る体勢をソファーの上で変えるがなかなか睡魔がやって来ない。
ぼんやり寝たようで起きているそんな夜を和久井はソファーの上で過ごした。
脇坂の普通科中隊は函岳の麓を歩いていた。
音威子府をソ連軍が突破してしまい続々と後続部隊で音威子府が満ちて行くようになると脇坂は音威子府から離れて本隊である第3普通科連隊へ戻る事を決めた。
基幹連隊システムを使い連隊長へ本隊への復帰を求めると連隊長はすぐに許可した。連隊長からしたら戦力が戻るのは喜ばしいからだ。
けれども空には攻撃ヘリが飛び回り音威子府には警備のソ連兵が増強された。
脇坂は陽が出ている内は音威子府の町から離れて森に隠れ潜んだ。ソ連兵は進軍や補給に使う道路の警備をしているだけで脇坂達を探す様子は無かったのが救いだった。
ソ連兵から隠れながら脇坂の中隊は負傷者の手当てや弾薬・食料の再分配や交代での休憩をする事ができた。
陽が暮れて夜の8時から本隊へ戻るべく移動を始めた。
音威子府まで乗って来た軽装甲機動車や高機動車などの車輌は放棄した。もはや道路はソ連軍の支配下だ。
南へ名寄へ向かうのだ。
普通科隊員は銃などの装備を背負い数十kmの行軍をする訓練を何度繰り返し慣れているものだが負傷者を伴い暗い山道を慎重に進んでいては速く移動するのは難しい。
「砲撃だ」
「恩根内かな」
砲声と砲弾が炸裂した明かりが木々の間から見えた。
脇坂も誰もが急がなければと焦りを感じた。また前線を突破される前に原隊に合流しなければと焦る。
だが焦る脇坂中隊の足を止める出来事が起きる。
(止まれ!)
脇坂中隊の先頭を行く二曹が止まってハンドサインで後ろの隊員を止める。
二曹は小型のハンディカメラのような暗視装置で近くに居る人影を発見したのだ。
(あそこに居る)
二曹は近くへ来た上官である第1小隊の隊長である沖田二尉の目元へ右手で気配のある方向を指す。
「敵味方不明の集団がこの先に誰か居ます」
「動かず様子を見よう」
先頭の第1小隊から小声の無線で報告が脇坂に届く。
「20人ほど居ます」
暗視装置を使い怪しい方向を確認した第1小隊から続報が届く。
「その20人が南へ向かっています」
更なる続報を聞き脇坂は悩む。
敵か味方か分からないのだ。
同じように夜になって味方と合流するために動いている部隊かもしれないし、後方への潜入をしようと進む敵かもしれない。
暗視装置だけでは見分けができない。
そこで基幹連隊システムの出番となるが車輌を放棄した時に専用のPCなどの機器を破壊していた。
負傷者を背負い担架を作って運び、武器・弾薬と食料などを隊員それぞれで運ぶのだから基幹連隊システムの機器を運ぶ余裕は無い。通信機器は背負い式の無線機しかない。
「沖田二尉、1個班を偵察に出して確認せよ」
脇坂は隊員を送り直接見て確認させる事にした。
沖田は小隊から1個班10人を人影に向かって偵察に送り出す。
(ん?まさか)
脇坂は暗視装置で見える双方の動きを見ていた。不明な20人の人影はいきなり止まると散開するように散らばる。
「いいぞ。それでいい」
偵察班も暗視装置で不明な人影の動きを見て止まり同じく横へ隊員を散開させる。
「撃った!敵か!」
不明な人影の20人は偵察班へ向けて銃撃を始めた。
「第1小隊と第2小隊で偵察班を救援する!第3小隊は周囲警戒しつつ待機」
脇坂は2個小隊を率いて偵察班の救援に向かう。
第3小隊は負傷者を運んでいる為に戦闘には参加させなかった。
「敵が後退します!」
「第1小隊は偵察班を収容しろ。収容したら全小隊は第3小隊と合流して移動を再開する」
脇坂が2個小隊を連れて来るとソ連兵らしい20人は不利を悟ったのか素早く退却した。脇坂は追撃せず3普連へと戻る本来の目的に戻らせる。
「損害は軽傷2名です」
「よし、すぐに出発しよう」
第3小隊と合流した脇坂と2個小隊は隊員の状況確認をしてから移動を再開する。
脇坂中隊が歩き出してすぐだった。
「わあ!」
「ぐお!」
いきなり脇坂中隊の隊員達は連続する爆発のただ中に置かれた。
爆風をまともに受けた隊員が次々と倒れる。
「伏せろ!伏せろ!」
脇坂は自分も伏せつつ周りの隊員達へ叫んで命じる。
(さっきの敵兵が報せたか)
脇坂がそう思った通りだった。
偵察班に銃撃をしたソ連兵が脇坂達の中隊が居る事を報せた。ソ連軍の指揮官は砲兵へ砲撃を要請した。位置は報告のあった地区であり大まかな位置で砲撃が行われた。
面制圧をするような砲撃は脇坂中隊を叩くには十分だった。
「くそ、ここでやられるとは・・・」
砲撃が止み周囲を見渡した脇坂は倒れた部下達を見て唇を噛む。
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