雫物語~Myth of The Wind~

くろぷり

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Myth of The Wind

宿命の戦い5

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「この力……まるで、ソード・オブ・ヴィクトリーが蘇ったようだ……グラムの力が、無限に沸き上がってくる感覚……これなら、やれる!」

「どこまでも、私の前に立ち塞がると言うのなら……やはり、ここで貴様の幕を下ろしてやる!」

一真の背後から……その力を後押しするように流れてくる風から、更に不思議な力を感じる。

風の力が、そのまま握っているグラムに流れ込んでくる感覚……

その力は、ロキも感じとっていた。

高速で舞う一真から繰り出される斬撃が、グングニールと重なり合う度に凄まじい程の衝撃をロキの腕に伝えていく。

「こちらも、形振り構っていられんか……主神と戦神の合せた力で、貴様を撃つ!」

オーディンと化したロキは、その手に持つグングニールに高濃度の雷光を纏わせる。

鳳凰天身し、更に風の加護を受け、天空を縦横無尽に飛び回る一真から繰り出される斬撃は防御するのが精一杯であった。

が……電光を纏ったグングニールは、一瞬しか重なり合わないグラムから一真の身体に高濃度の稲妻を流し込む。

「ぐっ……これでも、まだ届かないのか!」

天空から大地を穿つ最強の神器グングニールから放たれる雷は、他の神器から放つ雷とは破壊力が違う。

鳳凰の翼を使って電撃を身体の外に放出しても、一撃でのダメージ量は計り知れない。

攻撃をすればする程、ダメージが蓄積していく。

「航ちゃん! このままじゃ、カズちゃんが黒焦げになっちゃうよ!」

「わーってるよ! だが……今のオレの力じゃ、高速で飛び回る一真に合わせて風を送る事ぐらいしか出来ない! それでも、かなり精一杯だっ!」

航太がエアの剣でサポートし始めてから、一真の動きは明らかに良くなっている。

効果はある……だからこそ、航太は一真に風を送り続けていた。

しかし、それだけでも航太の額からは大量の汗が流れ、肩で息をする程に疲弊している。

「航ちゃん、私に考えがある。絵美、グラムに水を纏わせて! 後は、私がコントロールする!」

「なる程、純水なら電気をあまり通さない! 智美、考えたな!」

航太の言葉に智美は首を横に振ると、2本の剣の柄と柄を合わせて横に持つと目を閉じた。

「航ちゃん、カズちゃんには時間が無いの……電撃を通さなくしたって、グラムの刃はロキさんに届かない。なら、相手の力も利用してやるわ!」

智美は、ロキに捕われていた時の生活を少し思い出し……優しく接してくれたロキの姿を忘れるように、強く首を振る。

「絵美が纏わせた水に、大量のアルカリを混ぜて……航ちゃんの風を感じて……集中……集中するんだ……」

独り言のように呟きながら、智美は航太が発する風を感じられる場所まで移動した。

その動き……そして智美の考えは、魔眼を通して一真の頭にも流れていく。

「みんな、何も知らないのに……どうして戦っているのかも知らないのに……それでもオレの為に、命を懸けて戦ってくれている……だからこそ……」

航太の放つ風に流れてグラムに纏われていく水を見ながら、一真は決意する。

この場にいる者は、全員守る……今は、それだけでいい。

何も知らない人々を盾にしようとしている神も、世界が混乱する事を恐れて神話の世界を破壊しようとしているロキも、止めなければいけない。

そして、より良い道を探さなくてはいけない……それは、自分じゃなくても出来る……

航太の姿を一瞬だけ見た一真は、水の力を纏ったグラムを握り締める。

「大丈夫……智美を信じて、ただ剣を振るうだけだ!」

一真は鳳凰の翼をはためかせ、再びグラムを振るう。

「水の力を付加したところで、私には届かんよ!」

繰り返されるシーン……グラムとグングニールが重なり合い、グラムに沿って電撃が流される。

その時、半分に割れる様にグラムから水が離れた。

高濃度の電撃が、行き場を失い水の中を暴れ回る。

その雷を纏った水は、智美の意志を持ってロキに襲いかかった。

2方向から襲いかかる高濃度の雷を纏った水の攻撃に、ロキはグングニールを回転させて防御する。

その時に生じた一瞬の隙……鳳凰天身した一真には、その一瞬の隙で充分だった。

炎を纏ったグラムが、オーディンの……ロキの脇腹を斬り裂く!

「ぐっ! なる程な……弱き者共でも、協力すれば力となるか……覚えておこう。だが、今の攻撃で終わらせられなかった貴様の負けだ!」

大きく斬り裂かれたロキの脇腹は、既に回復をし始めている。

神の身体と不死身の力……その回復スピードは、人の身である一真より明らかに早い。

そして、閃光の如きスピードで重なり合うグングニールとグラムに合わせて力を使った智美は、その1回だけで体力を消耗し、地面に膝をついていた……
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