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血に染まる白き冠
ガイエンの真実
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ガイエンがエリサ達の前に現れた頃、悲鳴が上がった方を確認しようとしていた航太とアルパスターの前に、先に逃げ始めたホワイト・ティアラ隊のメンバーが続々と合流し始めていた。
必死に走ってきたのだろう。
女性が多く体力で勝負する部隊では無い為、アルパスターの部隊まで辿り着いたホワイト・ティアラ隊の面々は、直ぐに話が出来る状態じゃなかった。
しかし息を整える時間も惜しいとばかりに、1人のホワイト・ティアラ隊の隊員がアルパスターに縋り付く。
「私達の背後からヨトゥンの部隊が…………ネイアさんやエリサさんが敵を引き付けてくれてるけど、ここに着くまでにも何人かヨトゥンに捕まって………っ!!」
最後は息が苦しいのと涙で、言葉が詰まってた。
「まぢかよ…………ホワイト・ティアラ隊の場所は隠していた筈だろ??なんで見つかったんだ??」
「おそらくガヌロン…………奴を戦場で見かけたとの報告もあった。しかし非戦闘員を襲うとは………卑怯なっ!!」
航太の問いに答えたアルパスターが、悔しさに拳を握りしめる。
ガヌロンを見たという報告を受けていたのに、この状況を予測出来なかった自分に腹が立った。
「航太!!五百の兵を持って、逃げ遅れてるホワイト・ティアラ隊の隊員を救うんだ!!急げ!!」
アルパスターは、怒りに満ちた声で航太に命令する。
「けど、バロールもいるぜ!!それに、ホワイト・ティアラ隊を襲ってる戦力だって分かってない…………」
航太も、急がなければいけない状況なのは理解していた。
しかし、敵の戦力が分からない中、少数の兵で突っ込んでいいのか??
バロールを退かせる為の戦力を割いていいのか??
どちらも中途半端になってしまっては、1番良くないと感じる。
「バロールは、オレと王子で何とかする!!戦力は不明だが、ホワイト・ティアラ隊を失う訳にはいかない!!お前は早く行け!!」
アルパスターの言葉には、焦りが混じっていた。
確かにホワイト・ティアラ隊は重要な部隊であるが、逃げきれている人数を見ればギリギリ何とかなりそうにも見える。
「ホワイト・ティアラ隊には、義弟もいるんだろ!!早くしろっ!!」
「くそっ、分かった!!全員、無理に戦わなくていい!!助けれるだけ助けたら、直ぐに本隊に合流するぞ!!」
航太は急かされるまま兵を纏めて、移動を開始する。
そう言いながらも、航太にも焦りはあった。
ホワイト・ティアラ隊に戦えるメンバーはいないし、一真は戦闘に不向きな性格である事も知っている。
(早くしないと、一真もヤバイ!!それに、ヨトゥン軍に囲まれる前に撤退しないと…………オレの部隊も全滅だ!!)
焦る気持ちとは裏腹に、立ちはだかるヨトゥン兵を倒しながら進む為、なかなか行軍スピード上は上がらない。
しかも林の中を逃げているホワイト・ティアラ隊のメンバーを救出しては本隊まで護衛を付ける為、ただでさえ少ない航太の部隊は小さくなっていく。
普段なら簡単に倒せるヨトゥン兵も、焦りからか攻撃が雑になり、なかなか倒せなくなっていた。
(どっかに、奇襲部隊の大将がいる筈だ!!そいつさえ倒せれば、隙を突いて全員救出できるかもしれねぇ!!)
しかし大将らしき兵には出会えず、航太の焦りは時間の経過と共に強くなっていく。
(智美の時みたいな思いはしたくないんだ!!一真、無事でいてくれよ!!)
航太は必死に剣を振るいながら、少しずつ前進していると遠くに人影が見え始めた。
(あそこに立ってるのは…………ガイエンか!!よりにもよって、厄介な奴を…………って、誰かを斬ろうとしてやがる!!)
血のように赤い髪と赤い鎧…………
遠目からでも、ガイエンと確信できた。
(まずい!!あれは…………エリサさんか??このままじゃ斬られちまう!!)
ガイエンであろう人影は、エリサに向けて既に剣を振り上げている。
「うおおおぉぉぉぉ!!」
距離はあるが、射程内……………航太は渾身の力を込めて、鎌鼬を放った!!
(頼む!!ガイエンの気を逸らしてくれっ!!)
懇願の思いで、鎌鼬の軌道の先を航太は見つめた………………
航太の放った鎌鼬は、ガイエンには当たらなかったが、意識をエリサから離すには充分だった。
ガイエンは徐々に近付いてくる航太を目視し、狙いを変更した………かに見えた。
しかし、実際は航太を一瞥しただけで、再び照準をエリサに向ける。
(どうなってんだ??)
ガイエンが自分を見つけたら、確実に向かってくると航太は予想していた。
ところが、ガイエンは航太の存在を忘れたかのように、エリサへの攻撃を止めようとはしない。
航太に邪魔されないように、ガイエンはエリサや一真を鎌鼬の射線上になるように位置を換えた。
(くそっ、まじかよ!!てか、このままじゃエリサさんがヤバイ!!けど、この位置だと横の鎌鼬じゃ皆巻き添えだ!!)
航太はガイエンとの距離を縮めながら、考えを纏める。
だが、航太の考える時間などお構い無しに、再び振り上げられたガイエンの神剣、ヘルギはエリサに迫っていく。
(やった事ねーケド…………一か八かだっ!!頼むぜ、エアの剣!!)
航太は、エアの剣を思い切り振り下ろした。
すると縦の鎌鼬が発生し、並んでいるエリサと一真の狭い隙間を擦り抜けて、ガイエンを強襲する!!
「ぐをっ!!」
鎌鼬の攻撃はないと予測していたガイエンは、縦の鎌鼬に反応が遅れ、躱きれずに左肩から出血した。
その隙に航太は全速力でガイエンの目の前まで走り込み、エアの剣をでエリサを守る。
ガギィィィィン!!
剣と剣が…………エアの剣とヘルギが交錯した。
ガイエンは先程のエリサの攻撃もあり、左腕は使い物にならなくなっており、右腕のみでヘルギを操っている。
その為に航太の力に押し負け、後退させられた。
「エリサさん、一真!!大丈夫か??」
ガイエンとエリサ達の間に割って入った航太は、ガイエンを睨みながら2人に聞く。
「なんとか!!航太ありがとう!!」
素早く立ち上がりながら、エリサが言った。
エリサの横には、頭の抱えたティアと、そのティアを心配そうに覗くルナの姿がある。
そんなティアに気付かずに、航太はガイエンに斬りかかった。
「ちぃぃっ!!貴様は…………毎回オレの邪魔を!!」
ガイエンは右手のみでヘルギを巧に操り、航太と互角の戦いを演じる。
「お前も騎士なら、弱い奴とばかり戦うなよ!!なんで、女の人を斬る事に拘わってんだ!!」
航太の叫びに、ガイエンは剣を止め、後ろに跳んだ。
「なんで……………だと??その女が、オレの両親を犬死にだなんだと喚いているから、まず殺してやろうと思っただけだ」
ガイエンの言葉に、航太は一真を見た。
一真は、何も言わずに頷く。
「一体…………何があったんだ??」
航太の言葉に、一真が語り始めた…………
必死に走ってきたのだろう。
女性が多く体力で勝負する部隊では無い為、アルパスターの部隊まで辿り着いたホワイト・ティアラ隊の面々は、直ぐに話が出来る状態じゃなかった。
しかし息を整える時間も惜しいとばかりに、1人のホワイト・ティアラ隊の隊員がアルパスターに縋り付く。
「私達の背後からヨトゥンの部隊が…………ネイアさんやエリサさんが敵を引き付けてくれてるけど、ここに着くまでにも何人かヨトゥンに捕まって………っ!!」
最後は息が苦しいのと涙で、言葉が詰まってた。
「まぢかよ…………ホワイト・ティアラ隊の場所は隠していた筈だろ??なんで見つかったんだ??」
「おそらくガヌロン…………奴を戦場で見かけたとの報告もあった。しかし非戦闘員を襲うとは………卑怯なっ!!」
航太の問いに答えたアルパスターが、悔しさに拳を握りしめる。
ガヌロンを見たという報告を受けていたのに、この状況を予測出来なかった自分に腹が立った。
「航太!!五百の兵を持って、逃げ遅れてるホワイト・ティアラ隊の隊員を救うんだ!!急げ!!」
アルパスターは、怒りに満ちた声で航太に命令する。
「けど、バロールもいるぜ!!それに、ホワイト・ティアラ隊を襲ってる戦力だって分かってない…………」
航太も、急がなければいけない状況なのは理解していた。
しかし、敵の戦力が分からない中、少数の兵で突っ込んでいいのか??
バロールを退かせる為の戦力を割いていいのか??
どちらも中途半端になってしまっては、1番良くないと感じる。
「バロールは、オレと王子で何とかする!!戦力は不明だが、ホワイト・ティアラ隊を失う訳にはいかない!!お前は早く行け!!」
アルパスターの言葉には、焦りが混じっていた。
確かにホワイト・ティアラ隊は重要な部隊であるが、逃げきれている人数を見ればギリギリ何とかなりそうにも見える。
「ホワイト・ティアラ隊には、義弟もいるんだろ!!早くしろっ!!」
「くそっ、分かった!!全員、無理に戦わなくていい!!助けれるだけ助けたら、直ぐに本隊に合流するぞ!!」
航太は急かされるまま兵を纏めて、移動を開始する。
そう言いながらも、航太にも焦りはあった。
ホワイト・ティアラ隊に戦えるメンバーはいないし、一真は戦闘に不向きな性格である事も知っている。
(早くしないと、一真もヤバイ!!それに、ヨトゥン軍に囲まれる前に撤退しないと…………オレの部隊も全滅だ!!)
焦る気持ちとは裏腹に、立ちはだかるヨトゥン兵を倒しながら進む為、なかなか行軍スピード上は上がらない。
しかも林の中を逃げているホワイト・ティアラ隊のメンバーを救出しては本隊まで護衛を付ける為、ただでさえ少ない航太の部隊は小さくなっていく。
普段なら簡単に倒せるヨトゥン兵も、焦りからか攻撃が雑になり、なかなか倒せなくなっていた。
(どっかに、奇襲部隊の大将がいる筈だ!!そいつさえ倒せれば、隙を突いて全員救出できるかもしれねぇ!!)
しかし大将らしき兵には出会えず、航太の焦りは時間の経過と共に強くなっていく。
(智美の時みたいな思いはしたくないんだ!!一真、無事でいてくれよ!!)
航太は必死に剣を振るいながら、少しずつ前進していると遠くに人影が見え始めた。
(あそこに立ってるのは…………ガイエンか!!よりにもよって、厄介な奴を…………って、誰かを斬ろうとしてやがる!!)
血のように赤い髪と赤い鎧…………
遠目からでも、ガイエンと確信できた。
(まずい!!あれは…………エリサさんか??このままじゃ斬られちまう!!)
ガイエンであろう人影は、エリサに向けて既に剣を振り上げている。
「うおおおぉぉぉぉ!!」
距離はあるが、射程内……………航太は渾身の力を込めて、鎌鼬を放った!!
(頼む!!ガイエンの気を逸らしてくれっ!!)
懇願の思いで、鎌鼬の軌道の先を航太は見つめた………………
航太の放った鎌鼬は、ガイエンには当たらなかったが、意識をエリサから離すには充分だった。
ガイエンは徐々に近付いてくる航太を目視し、狙いを変更した………かに見えた。
しかし、実際は航太を一瞥しただけで、再び照準をエリサに向ける。
(どうなってんだ??)
ガイエンが自分を見つけたら、確実に向かってくると航太は予想していた。
ところが、ガイエンは航太の存在を忘れたかのように、エリサへの攻撃を止めようとはしない。
航太に邪魔されないように、ガイエンはエリサや一真を鎌鼬の射線上になるように位置を換えた。
(くそっ、まじかよ!!てか、このままじゃエリサさんがヤバイ!!けど、この位置だと横の鎌鼬じゃ皆巻き添えだ!!)
航太はガイエンとの距離を縮めながら、考えを纏める。
だが、航太の考える時間などお構い無しに、再び振り上げられたガイエンの神剣、ヘルギはエリサに迫っていく。
(やった事ねーケド…………一か八かだっ!!頼むぜ、エアの剣!!)
航太は、エアの剣を思い切り振り下ろした。
すると縦の鎌鼬が発生し、並んでいるエリサと一真の狭い隙間を擦り抜けて、ガイエンを強襲する!!
「ぐをっ!!」
鎌鼬の攻撃はないと予測していたガイエンは、縦の鎌鼬に反応が遅れ、躱きれずに左肩から出血した。
その隙に航太は全速力でガイエンの目の前まで走り込み、エアの剣をでエリサを守る。
ガギィィィィン!!
剣と剣が…………エアの剣とヘルギが交錯した。
ガイエンは先程のエリサの攻撃もあり、左腕は使い物にならなくなっており、右腕のみでヘルギを操っている。
その為に航太の力に押し負け、後退させられた。
「エリサさん、一真!!大丈夫か??」
ガイエンとエリサ達の間に割って入った航太は、ガイエンを睨みながら2人に聞く。
「なんとか!!航太ありがとう!!」
素早く立ち上がりながら、エリサが言った。
エリサの横には、頭の抱えたティアと、そのティアを心配そうに覗くルナの姿がある。
そんなティアに気付かずに、航太はガイエンに斬りかかった。
「ちぃぃっ!!貴様は…………毎回オレの邪魔を!!」
ガイエンは右手のみでヘルギを巧に操り、航太と互角の戦いを演じる。
「お前も騎士なら、弱い奴とばかり戦うなよ!!なんで、女の人を斬る事に拘わってんだ!!」
航太の叫びに、ガイエンは剣を止め、後ろに跳んだ。
「なんで……………だと??その女が、オレの両親を犬死にだなんだと喚いているから、まず殺してやろうと思っただけだ」
ガイエンの言葉に、航太は一真を見た。
一真は、何も言わずに頷く。
「一体…………何があったんだ??」
航太の言葉に、一真が語り始めた…………
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