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気付いたら異世界

勝手に召喚して力貸してくれってバカなの?

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雅臣と七緒の二人は気付いたら仄かな松明の明かりが揺らめく体育館ほどの広さの石造りの部屋の中にいた。
二人の周りでまだ淡く発光している魔法陣らしきものを囲んで喜び合っているファンタジーでよく出てくる神官のような服を着た数人と貴族のような恰好をした者達数人。

そんな者たちをしばし呆然と見ていたが雅臣と七緒は、そっと自分たちの間を窺う。
二人の間は不自然に一人分空いている。自分たちは確かに鷹臣の腕をしっかりと掴んでいたはずだった。なのに・・・どういう事なのかその手には何も掴んでおらず、誰もいない。
ぎこちなく顔を上げ視線をお互いに向ける。

「おい、七緒・・・俺確かに右手て鷹の腕を掴んでたんだが・・・?ついさっきまで確かに鷹の腕の感触あったんだけど?」
「あぁ、俺も確かに左手で鷹の右腕をしっかり掴んだ・・・落ちる時までココに出るまで確かに鷹の腕を掴んでたって言える」
「っていう事はよ。ここに出た時点で鷹だけがどこか違う場所に弾き飛ばされたって事か?」
「弾き飛ばされたかもしれないし、もしくはここじゃない場所に出たかってところだと思うが?」
「まぁアレだよな七緒さん?」
「それしかないだろ雅臣さん?」

二人は近くに寄ってきたあの中で一番偉いであろう人物の肩を片方ずつギリギリと音がしそうなほどの力で掴んだ。
そしてチンピラよろしく絡みだした。

「おい・・・俺たちを呼び出したのはてめぇらか?何の用があってこんなことしたんだ?あ”?!」
「少し落ち着けよ雅臣。こいつらプライドだけは高そうだけど打たれ弱いうえに気も小さそうだから気絶でもされたら面倒だろ?だが早く要件言え!!言葉は通じてんだろ?」

二人からの真っ黒い威圧と物理的な方の痛みに震え上がっている貴族(仮)は青ざめてガタガタ震えている。だが二人にとって大切なのは鷹臣でありここにいる人物たちがどうなろうと知ったことではない。
コイツがダメなら他の奴をと視線を巡らせればサッと目を逸らされる。そして言外に自分たちは理由など知らないという振りをする。そんな素振りを見せた所で呼び出したのは目の前にいる全員が絡んでいるのは明白なので悪足掻きにしか見えない。
呼び出しておいて理由も何も言えないのかと思うが、二人の気迫が恐ろしく口を開けないのだが二人はそれに気づいていない。
膠着状態に陥りそうになった時、意を決したように出てきたのは二人とあまり年の変わらない貴族らしい少年が口を開いた。

「す・・・す・・・すすすすみません!!あ、あああああのあああ貴方がたをよ・・・よよ呼び出したのにはわわわ訳がありああありまして!!」

だが、ガタガタ震えて噛みまくっている為分かり辛い。
だが言葉は通じるという事は分かった。だいたいにしてラノベやファンタジー物では、召喚で呼び出されたらなぜか言葉分かるというのが鉄板だからあまり心配はしてなかった。

「ふぅん?で、何の用で俺たちを呼び出したんだ?それと・・・もう一人いたはずなんだが・・・どこへ行ったのか知らないか?」

多少冷静に七緒が質問をぶつける。視線を向けられた少年は顔色が悪い。二人から放たれている威圧が酷く視線も冷たいので余計に顔色が悪くなっていく、それに気づいているのかいないのか・・・たぶん後者・・・な二人はとっとと言えと視線で訴えている。

「あ、あのわ、我々が召喚したのはお二人だけで、も、ももももうお一方たというなら別のところに出てしまったのかもしれません・・・そ、それでお、おお二人をよ・・・呼び出したり・・・理由ですが・・・き、危険な魔物を倒してほ、欲しいんです!!こ・・・ここここの国にも力ある者もいるのですが・・・な、何分この国の騎士や戦士があまり戦に向いた者じゃなくて!!そ、それで昔異界からゆ、勇者と賢者を呼び出した事がありまして・・・そそれで助けていただきたく呼びされたのがあなた方なのですっっ!!あ、あとですね・・・で、できればでいいのですがま、前の方々が創造してくださった物があるのですが何分ずいぶん昔のもので性能も少し劣るので、で、できたらでよろしいので・・・な、何かべ、便利な物か・・・ま、魔法道具などで、できたらお創りしてほしいんですが・・・い、いかがでしょう?」

「「・・・は?何だそれふざけてんの?!戦いに向かない騎士と戦士って何のために存在してんの?」」
「便利道具とか何言ってんの?自分たちで作れ!!いい大人が揃いも揃ってガキに何でも押し付けようとすんなよてめぇらで無い知恵絞って考えろよ?俺たちちょっと前まで中学生だぜ?そんなもんの作り方知ってるわけねぇだろ馬鹿なの?どうなの?それってどうなの俺がおかしいのどうなの七緒?」
「魔法道具?そんなもんの作り方知ってるわけねぇだろラノベとかでよくあるけどすぐどうとかできるとか思ってんの?知識なんてあってないようなものだぜ?創作物と現実ってのは違うんだよ?それに俺たちに何の利益もないのにホイホイ作ると思ってんの?俺たち暇じゃないんだよ?アホなのバカなの?あぁ言ってる事から推理すればバカなんだよな?だろ雅臣?」
「え?あ、ああああのすみません!!だ段々力がつ、強くなっていて我々ではも、もう抑えられなくなってきていてで、もう勇者と賢者を召喚してお二方に戦っていただくしかに方法が無くて!ま、魔法道具はあああ諦めますのでそれ以上は・・・」
「へー随分他人任せだな?つかよ・・・何のお伺いもなく突然人さらいよろしく召喚されて力か貸してやるなんてラノベだけの話だけだろ?だって俺たち関係ないし大事なものもここにいないんだぜ?それなのに戦ってください魔法道具作ってくださいって言われて良いよなんて言うと思うの?どうよ雅臣?」
「だな。俺たちにとって今てめぇらの生活なんてどうでもいいんだよ?大事なのは俺の弟の鷹臣だし・・・アイツはあまり体丈夫じゃないんだよ?何かあったら・・・どう落とし前付けてくれんの?っていうより勇者とか賢者とか本当にどうでもいいし・・・」
「ちょっと待ち雅臣。とりあえずそれは知っておいた方が良いだろう?何か魔物とか言ってたし?危険があるなら身を守る方法をすぐさま覚えて鷹を探しに行こう。後地理だな・・・あと情報と物資を手に入れてからの方が良いだろう。俺たちが怪我でもしてたら鷹が心配するだろ?それに・・・な?」
「・・・あぁそうだな。資金とか物資は必要だな・・・勝手に召喚して呼び出したんだそれくらい用意してくれんだろう?そして力の使い方か・・・よし出来るだけ早く覚えるぞ」

「「つー事ですぐさま用意しやがれよ?」」
「まぁ行く先に居るのは倒してやってもいいし?なぁ七緒?」
「だな。ただ俺たちは好き勝手させてもらう。俺たちのやるべき事はお前らの尻拭いや生活を守る事じゃねえ。鷹を探すっていうのが目的だ・・・もし鷹に何かあったら・・・なぁ雅臣?」

「「もし鷹が死んだり怪我してたりしたら・・・元凶とてめぇらを潰す!!覚えておけよ?」」

「「「「「は、はいっ!!」」」」」

二人の威圧と駄々洩れの殺気にその場にいた者達は一斉に首振り人形のように頷きつづけた。
そして思った・・・自分たちが召喚したのは勇者と賢者などではなく・・・魔物か何かの亜種じゃないのか・・・と、今更遅いのだけれど・・・。









そしてその頃の鷹臣は・・・

「あれ?ここどこだろう?お城?え?え?え?ここどこ?ファンタジー?ラノベ?何ココ?え?え?」

背後から近寄ってくる人物に気付くことなく一人別のとこころでオロオロしていた。


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