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プログラマー、魔法技術者に転職する
5.幸運
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目が覚めた途端、私は激痛で呻いた。けれどその痛みが、生きていると実感させてくれた。
「お母さん!お姉ちゃん目覚めたよー!!」
子供の声はバタバタと忙しない足音と共に遠くに消えていった。
二回バタンと音がしたから、外に出て行ったんだろう。
私は意識を失う直前の声を思い出した。
『間に合って良かった。』
あれはイザナミ様の声だった。
きっと、私が変なところに召喚されたことに気付いて助けに来てくれたんだ。
私は目を閉じて、心の中でイザナミ様に感謝したと同時に願った。
イザナミ様、あの男性神をボコボコにしてください。虫の息になるまで。
あの男性神、無茶苦茶だ。本当に世界を救わせる気があるの?
ダメだ。考えていたら体が熱くなってきた。
考えても答えの出ないことだ。落ち着かないと。
目を開いて、ゆっくりと深呼吸をする。
怒りで火照った体に冷たい空気が巡って気持ちがいい。
危うく死にかけたけど、イザナミ様が守ってくれて、親切な人が助けてくれた。
正に不幸中の幸い。今はその事実だけ頭に置いていれば十分だ。
ドアがノックされて、私はドアを見た。
入ってきたのは、中世ヨーロッパの農民さながらのワンピースを着た中年の女性だった。
「気が付いたんだね。良かった。あんた、一週間も寝てたんだよ。」
驚いた。言葉が理解出来る。そういえばさっきも、子供の言葉が理解出来ていた。
驚きすぎて口をぱくぱくさせた私に、女性は優しく、どうしたの、と聞いてくれた。
「あ、あの、助けて下さりありがとうございます。」
「当たり前のことだよ。礼は後で村の狩人達にも言ってやってね。あんたをここまで運んできたのは狩人達だから。」
「わかりました。」
「動けるかい?」
「いえ...」
「うちの旦那が治癒の魔術カードを買ってもうすぐ帰ってくるから、それまでの辛抱だよ。」
「魔術カード...?」
「あんたもしかして、記憶喪失かい?」
この世界のことは全く知らないから、私は頷いた。
魔術カードってなんだろう。魔法カードならカードゲームで聞いた事があるけど。
「そうかい...とりあえずご飯を食べなきゃね。用意するから少し待ってな。」
本当に親切な人に助けてもらえたんだ。
この感じだと、本当に善意しかないんだろう。
女性が部屋を出てからしばらくして、良い匂いが鼻に届いた。
女性が用意したてくれたのは、お粥のようにトロトロのスープだった。
体を起こしてくれただけじゃなく、女性は私の口にスープを運んでくれた。
私はその優しさが暖かくて、気付けば涙を流していた。
押し込めていた感情が溢れて涙が止まらない私を、女性は優しく抱き締めてくれた。
優しさに暖かく包まれて、私は声を上げて泣きじゃくった。
「お母さん!お姉ちゃん目覚めたよー!!」
子供の声はバタバタと忙しない足音と共に遠くに消えていった。
二回バタンと音がしたから、外に出て行ったんだろう。
私は意識を失う直前の声を思い出した。
『間に合って良かった。』
あれはイザナミ様の声だった。
きっと、私が変なところに召喚されたことに気付いて助けに来てくれたんだ。
私は目を閉じて、心の中でイザナミ様に感謝したと同時に願った。
イザナミ様、あの男性神をボコボコにしてください。虫の息になるまで。
あの男性神、無茶苦茶だ。本当に世界を救わせる気があるの?
ダメだ。考えていたら体が熱くなってきた。
考えても答えの出ないことだ。落ち着かないと。
目を開いて、ゆっくりと深呼吸をする。
怒りで火照った体に冷たい空気が巡って気持ちがいい。
危うく死にかけたけど、イザナミ様が守ってくれて、親切な人が助けてくれた。
正に不幸中の幸い。今はその事実だけ頭に置いていれば十分だ。
ドアがノックされて、私はドアを見た。
入ってきたのは、中世ヨーロッパの農民さながらのワンピースを着た中年の女性だった。
「気が付いたんだね。良かった。あんた、一週間も寝てたんだよ。」
驚いた。言葉が理解出来る。そういえばさっきも、子供の言葉が理解出来ていた。
驚きすぎて口をぱくぱくさせた私に、女性は優しく、どうしたの、と聞いてくれた。
「あ、あの、助けて下さりありがとうございます。」
「当たり前のことだよ。礼は後で村の狩人達にも言ってやってね。あんたをここまで運んできたのは狩人達だから。」
「わかりました。」
「動けるかい?」
「いえ...」
「うちの旦那が治癒の魔術カードを買ってもうすぐ帰ってくるから、それまでの辛抱だよ。」
「魔術カード...?」
「あんたもしかして、記憶喪失かい?」
この世界のことは全く知らないから、私は頷いた。
魔術カードってなんだろう。魔法カードならカードゲームで聞いた事があるけど。
「そうかい...とりあえずご飯を食べなきゃね。用意するから少し待ってな。」
本当に親切な人に助けてもらえたんだ。
この感じだと、本当に善意しかないんだろう。
女性が部屋を出てからしばらくして、良い匂いが鼻に届いた。
女性が用意したてくれたのは、お粥のようにトロトロのスープだった。
体を起こしてくれただけじゃなく、女性は私の口にスープを運んでくれた。
私はその優しさが暖かくて、気付けば涙を流していた。
押し込めていた感情が溢れて涙が止まらない私を、女性は優しく抱き締めてくれた。
優しさに暖かく包まれて、私は声を上げて泣きじゃくった。
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